リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、ベイスターズファン歴21年目の石井がイチオシ作品をプッシュします。

参考:『ビジランテ』は入江悠の次の10年を予感させるーー逃れられない地方都市の“郷愁”と“断絶”

 大学3年生、就職活動もほとんどせずに映画館に入り浸り、自分の将来がどうなるかも分からなかった頃に観た入江悠監督作『SR サイタマノラッパー』。ラッパーとして、何者かになれると志だけは高い主人公たちの姿が眩しく、苦しく、まるで自分自身を観ているかのような、強烈な映画体験だったのを今でも覚えています。

 『サイタマノラッパー』以降も入江監督は順調過ぎるほどにキャリアを重ねていきました。今年は『22年目の告白-私が殺人犯です-』が大ヒットを記録し、名実共に日本映画界を代表する監督の一人になったと言って良いでしょう。そんな入江監督が完全オリジナル脚本で、ふたたび地元・深谷市を舞台に、大森南朋×鈴木浩介×桐谷健太を主演に据える……この情報だけでも、間違いない映画になるだろうと思っていました。が、その予想以上に今の時代に、今の年齢の自分に、ガツンと突き刺さる衝撃作となっていました。

 高校時代に失踪した長男・一郎(大森)、市議会議員で町の自警団団長でもある次男・二郎(鈴木)、デリヘル業雇われ店長の三男・三郎(桐谷)の三兄弟が、憎んでいた父・武雄(菅田俊)の死をきっかけに再会する姿を通して、地方都市の暗部が浮き彫りになっていきます。

 『サイタマノラッパー』シリーズから『22年目の告白』まで、入江監督は「閉塞された街から、ここではないどこかへ」というテーマを、ときに直接的に、ときに形を変えてずっと描いてきました。本作はさらに一歩踏み込み、出ていった者、残された者に待ち受ける“責任”を大きなテーマとして加えています。

 三兄弟が自身の責任を取るためにとったそれぞれの選択。特に次男・二郎の選択には、いろんなしがらみを受けて生きているほど、胸に来るものがあると思います。二郎を演じた鈴木浩介さんのスピーチシーンは、『SR サイタマノラッパー』の焼肉屋で対峙するIKKUとTOMの対話に匹敵する感情ダダ漏れの名演でした。ぜひ映画館で彼らの生き様を見届けてほしいです。(リアルサウンド編集部)