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●モダンソフトウェアファクトリとDevOpsはスピードとインテリジェンスが異なる

CA Technologiesは11月中旬、米ラスベガスで年次カンファレンス「CA World 2017」を開催した。今年のテーマは「No boundaries」――これは、境界を設けずに挑戦をという意味で、キーワードは変革をもたらすソフトウェアを高速に作り出す「モダンソフトウェアファクトリー」だ。

カンファレンスでは、自著『Digitally Remastered』でこの言葉を提唱したCTOのOtto Berkes氏がアジア・太平洋地区の記者の質問に答えた。以下、その模様をお届けしよう。

--CAは"モダンソフトウェアファクトリー"をプッシュしているが、どんなものなのか。DevOpsとは違うのか?--

Berkes氏: モダンソフトウェアファクトリーとは、顧客に向けてバリューを迅速かつ効率よく、安全に提供することを指す。至ってシンプルな成功の青写真とも言える。われわれはそれを実現する技術を提供する。DevOpsはその一部となり、DevOpsとはスピードとインテリジェンスが異なる。

顧客と話をして感じることは、顧客そして業界全体の最大のチャレンジは、何を構築して届けるかを見出すことであり、理解することではないということだ。それを実現するための時間と作業量が課題になっている。加えてどの業界の企業も競争によるプレッシャーの下にある。それは、競合が自社よりも早く新しい機能を提供したら、不利になるというプレッシャーだ。これに加え、新規参入が完全に業界のルールを変えてしまうのではという恐怖や懸念も抱いている。

このような状況に対応する唯一の方法は「スピード」だ。新しく出てきた脅威にできるだけ高速に対応することが大切だ。対応にもたついていると、不利になる。

また、モダンソフトウェアファクトリーとは、脅威とチャンスに対し、迅速かつ効率よく、安全に対応するうえで必要なvelocityを作り、実現するメカニズムとなる。加えて、プロセスへのフィードバックループを作るための機能もある。古典的なウォーターフォール型のソフトウェアデリバリーには初まりと終わりがある。だが、モダンソフトウェアファクトリーには終わりがない。常に顧客、インフラなどさまざまなところからフィードバックを得て、次に何をするのか、何を修正するのか、どんな機能が必要なのかを見出す。その結果、顧客のニーズに沿うことを可能にする。これがインテリジェンスであり、顧客と市場で何が起こっているのかをリアルタイムで理解する仕組みを持つ点も大きな特徴だ。

--一方で、CAの売上の多くがメインフレーム関連と実情がある。DevOps、そしてモダンソフトウェアファクトリーへの移行をどうやって進めるのか?--

Berkes氏: 再び一から作り直すことは好きではない。メインフレームは今でも大きな価値を持っている。メインフレーム上で動くワークロードは、信頼性と安全性の2点において優れており、これらのワークロードを分散アーキテクチャ上にシフトするコストは高い。ビジネス上のメリットがない限り、動いているものを移動することはないだろう。投資は新たなソフトウェア開発に向かっている。ビジネスにおいてインパクトがあり、顧客にバリューがある分野だ。

私の見解では、メインフレームはコンピュータの種類にすぎず、切り離して考えていない。つまり、モダンソフトウェアファクトリーの一部だ。モダンソフトウェアファクトリーの"モダン"は、"メインフレームではない"という意味ではなく、"新たなアプローチ"を意味する。顧客に新たなバリューを提供するためのソフトウェア開発の手法であり、超高速な開発プロセスだ。これはメインフレームでも実現できる。例えば、トランザクション処理などのワークロードをもっと効率化するといったことが考えられる。

CA Worldではメインフレーム関連の新製品も発表した。この製品では、機械学習を使って運用上の効率化を図り、機能を改善できるとともに、新たな価値をもたらす。例えば、ブロックチェーン分野でメインフレームベースのイノベーションを見ることも可能になる。このように、メインフレームは"モダンではない"ということはない。

--製品へのAI技術の取り込みを進めているが、AIは開発チーム、運用チームをどう変えるのか?--

Berkes氏: 機械学習、AIは過去のデータをベースとしたパターン認識が土台にある。つまり、新しいことを生み出すことはできない。AIを利用した自動化が進むことで、スキルのシフトはあるだろう。だが、ロボットのCEOやCTOが誕生するとは思えない。競争優位につながるような仕事は、今後も人間が行う。AIを利用して退屈で繰り返しが多い作業を自動化することで、人間の才能をよりクリエイティブなことに解放できる。労働全体においてシフトが始まりつつあり、これからの仕事はもっとrewardingでvaluableなものになる。

もう1つの要素として、AIは人の仕事を置き換えるのではなく、仕事を増強する。CTOとしては、AIを効果的に活用することで、自分の仕事がより良いものになると期待している。

TeslaのElon Musk氏が「AIは倫理的フレームワーク」と主張しているが、人間がAIの進化をリードして、ちゃんとした目的の下で利用されるようにしなければならない。AIを人間の敵にするのではなく、友達にするのだ。技術は良いことにも、悪いことにも利用されうるというのは、今さらではない。だが、機械学習によりコンピュータが意思決定を行えるようになるということは、人類がこれまで体験したことがないことであり、どのように利用するか、進化させるかを注意深く考える必要がある。

●開発現場の変化に合わせ、価格と採用モデルを拡張性のある形に

--CTOとして、どうやって持続性のあるイノベーションを生み出すカルチャーを奨励しているのか?--

Berkes氏: 複雑な問題だが、当社にはイノベーションの創出について正しい社風、サポートがある。

例えば、イノベーション、インキュベーションの取り組みにおけるCA Acceleratorプログラムが良い例だ。CTO組織でスタートしたプログラムだが、今では全社の取り組みとして進めている。CAの社員なら誰でも新しいアイデアを出し、評価してもらうことができる。そのアイデアにビジネスとして価値があると評価されれば、インキュベーションプロジェクトとなる。成功すれば、製品組織が支援してスケールアップする。

インキュベーションが成功しなくても、得るものは大きい。プログラムの目的は新たなビジネスを構築すること、文化を変えることなので、すべてが成功する必要はない。実際、スタートアップと同じで成功するものはわずかで、製品組織まで行くのは10に1つだ。しかし、CA Acceleratorに参加した人は、新たなスキルを獲得している。顧客とどうやってエンゲージするか、バリューを提供するか、アイデアをどうやって迅速に進めるか、などだ。インキュベーションプロセスが終わる頃には、経験はさらにリッチになり、新しいスキルを獲得して、社内に還元されていく。

CA Acceleratorはスタートして1年半だが、社内でも高い支持を得ている。顧客との会話という点でも良い効果をもたらしている。

--顧客の開発現場が変わり、技術の購入パターンも変わっている。CAはこの変化にどう対応しているのか?--

Berkes氏: これまではトップが購入して組織全体が利用するという流れだったが、これからは個人や小さなチームでスタートすることが増えるだろう。われわれも異なるアプローチをとって、小さく初めて長期的に関係を進化させる必要がある。

CA Worldの基調講演では、技術の採用がボトムアップになっていると話した。私が担当するエンタープライズテクノロジーの組織で、私はCTOだが購入の決定は行っていない。開発者とオペレーション担当が「正しいツールとは何か」を試しながら決めている。最終承認は私だが、意思決定はチームに任せている。

アプローチだけでなく、価格体系も変化が必要だろう。ユーザー単位のライセンスなど、利用しやすい価格である必要がある。CAの中でも一部の新製品は、低コストのライセンス体系を取っており、一人が使い始め、チームに広がり、企業全体で採用するというケースが見られる。

今後、CA製品の価格と採用モデルはもっと拡張性のある形にしていく。

--組み込みソフトウェアでは、どのような取り組みが行われているのか?--

Berkes氏: 組み込みソフトウェアには大きなチャンスがあると見ている。例えば「API Management」を利用して、複雑な組み込みシステムがAPIを介してやりとりできる。API管理に関して当社は豊富な専門知識を持っている。IoT、エッジコンピューティングを取り込んだIoTでもCAのAPI Managementは利用できるだろう。

組み込みシステム分野で、われわれが何を提供できるのかについても継続的に考えている。CA Acceleratorのインキュベーションには、IoTにフォーカスしたものもある。ここで、われわれができることは、IoTアプリとIoTインタフェースの開発とテストになる。たくさんのセンサーがある自動車などに対し、これらとやりとりし、活用するアプリやコードをどうやって書くか。開発者やテスターが物理的なデバイスがなくても、IoTアプリの作成とテストができるように仮想化することなどを進めていく。