DINKsに向けた老後資金計画の情報は、まだ十分ではありません(写真:kou / PIXTA)

DINKs、つまり「共働きで子どもがいない夫婦」は増加の一途をたどっています。しかし、彼ら向けにマネープランをアドバイスしている書籍や情報はあまりありません。DINKsがまだ多数派ではないことや、経済的に余裕がある世帯が多いことがその理由なのでしょう。

世帯年収1000万円はザラ

夫婦ともに正社員として働いている場合、世帯年収の合計は額面で1000万円を超えることは珍しくありません。どちらかが大企業にいたり順調に昇格昇給を重ねると、世帯年収が1200万〜1400万円に達することもあるでしょう。

さらに、子育てに要する出費がないため、子ども1人当たり2000万円以上ともいわれる支出が生じません。よって、飲食費等の日々の生活水準の向上や、被服費の予算、ぜいたくな余暇予算(ゴージャスな旅行など)、高めの不動産所有などに資産を振り向けられます。

子どもがいない理由は家庭ごとにさまざまですが、その結果について納得が得られている場合、夫婦関係も良好であることが多いようで、仲良し夫婦がリッチな生活をエンジョイしている姿はしばしばみられます。

ところが、ここには落とし穴があります。あまりよそでは書かれていないDINKsのマネープランをまとめてみたいと思います。

DINKsは、現役時代の収入水準が総じて高いと述べましたが、実は老後の年金水準も子持ち世帯と比べて高水準が期待できます。

共働きの正社員同士であれば、これは老齢基礎年金(国民年金分)と老齢厚生年金を2人分受給することになります。女性も産休や育休による離職期間がないため、男性の年金水準にかなり近い金額になることもあります。

国の示すモデル年金額水準でみると、会社員と専業主婦といった典型的な夫婦においては月額22万円程度の年金額になるところ(厚生労働省「平成29年度の年金額改定について」)、共働きの会社員夫婦であったとすれば、月額30万円程度が期待できます(厚生労働省「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 」等から推計)。

一見すると大きな違いではないように思われますが、月額8万円の差は年約100万円の収入差になります。そして、年金生活が20年以上続くことを考えれば、総受給額で考えると約2000万〜2500万円くらいの違いになることもあるわけです。

年金は多いが、生活水準も高い

しかし、年金額が多くてもDINKsの老後は苦労することになるでしょう。なぜなら、生活水準が年金水準以上に高いからです。

夫婦の合計所得が1000万円レベルであったとき、毎月の家計に回す生活費が月40万〜50万円を超えることもおかしくありません。しかもそれがふたりだけの生活に回しているわけですから公的年金が多めにもらえたとしても、月額30万円の年金では不足、というわけです。

子育て世帯でも月40万〜50万円かかっていることはありますが、子どもの食費やおこづかい・交通費・塾や予備校などの学費に回っている分もあるので、夫婦の生活費はそれほどかかっていないことがよくあります。この場合、子どもが社会人になったあと年金生活に入っても、ある程度家計のムダを省けば同じ生活水準を維持できることが多いものです。

このようにDINKsは、何もしなければ現役時代と定年後の生活水準の落差が大きくなります。老後の「下流化」を防ぐために、DINKsはどんな対策を取っておくべきなのでしょうか。

対策は大きく分けて2つあります。

1. 現役時代の生活水準を抑え、年金生活との落差を縮める
2. 年金生活での生活費を補填するために、貯金を増やす

それぞれについて説明していきます。

まずDINKsが踏み出さなければいけないステップは、「家計の切り詰め」です。そのために必要なのは「これから先、30年先、40年先もふたりで楽しく生きていくために、共同して老後資産形成に臨む」という意識の共有です。

老後計画は45歳で立て始めよ

DINKsは45歳を1つの目安として、ふたりだけで生きていくこれからの人生について話し合ってみてほしいと思います。今の生活のエンジョイについてはコンセンサスがとれていて、また住宅購入とローンの返済については夫婦で納得のいく分担が設定されていることが多いのですが、老後資産形成についてはなかなか意識が共有されていないものです。

「老後に住みたい場所」「定年後に行きたい場所」など最初は漠然としたイメージ共有でもかまいません。とりあえず60代も70代も一緒に楽しく暮らしていこう、というイメージは共有できるはずです。

それができると、そのためにおカネをどう貯めていこうかというステップにつなげやすくなります。しばしば「夫婦の片方だけが老後への危機意識があって貯めているが、パートナーは認識しておらずまったく貯金ゼロ」ということがあります。これを回避するためにも価値観を共有してみてください。

45歳からスタートさせるなら、老後に向けた最低目標は夫婦それぞれ「月5万円」の貯金です(どの口座に入金するかは後述)。そのためには家計を月10万円下げる必要があります。無制限に服を買ったり、予算をまったく気にせずお酒を買ったりするのは一度やめてみてください。利用していない月会費のようなものも退会してその分を老後の貯金原資にします。少し気をつければ夫婦それぞれ数万円は切り詰められるはずで、本気を出せばもう少し削れるはずです。

毎月で5万円を削るのが難しい場合は、ボーナスからの散財を減らしてボーナスから割り振ってもいいでしょう。ボーナスごとに散財を6万円減らせば、月1万円の貯金になるからです。DINKsはボーナスもダブルでもらっているため、ボーナスを貯蓄ペースを上げるエンジンとしても活用したいものです。

次のステップは、貯蓄です。今どきのセカンドライフは20年より長くなっており、30年以上を見据えて資金計画を立てたほうが良いでしょう。仮に年金生活が30年あるとすれば、老後の「月1万円」を確保するためには360万円の貯金が必要となる計算です(インフレと預貯金金利がイーブンと仮定し、利息はここでは考慮しない)。

つまり、老後資金として3600万円確保できれば、将来「月10万円の取り崩し」が可能になり、公的年金と加えて月40万円ライフが可能になります。セカンドライフの所得税・住民税負担は現役時代ほどではありませんし、厚生年金保険料は引かれませんので(もらう側になるので!)、これなら現役時代に近い感覚で老後を楽しむこともできるはずです。

DINKsで一生過ごすことを自覚した45歳からスタートしても大丈夫です。たとえば、老後資金を作る制度として代表的なiDeCo(個人型確定拠出年金)に夫婦がそれぞれ加入し、月1万2000円を積み立てるとします(企業年金のある会社員と公務員の上限額)。元本ベースで216万円が貯まります。年4%で運用益が得られるとすれば、295万円になります。夫婦ともに口座開設をしておけば約600万円が貯まることになります。

iDeCoの掛け金は全額、課税所得から差し引くことが認められています。つまり、月1万2000円積み立てるとすると、年間14万4000円分が課税所得から差し引かれます。所得税と住民税の税率があわせて30%の人なら年間4万3200円も税金が安くなり、15年間の累計では1人当たり約65万円にのぼります。

高所得者ほど税率は高くなり、iDeCoの節税効果はさらに高まります。共働きでどちらも高所得であるケースも多いDINKsはぜひ夫婦ふたりとも口座開設したいものです。

iDeCoとNISAと退職金の3本柱で悠々自適

これに加え、つみたてNISA(年40万円)を夫婦ともに15年積み上げれば元本ベースで600万円ずつの資産になります。iDeCoの蓄えと合わせれば、老後の資産が1800万円になります(NISAの運用益を加えればもっと多くなる)。

さらに、会社からもらえる退職金も夫婦それぞれが満額に近い水準で受けられます(産休や育休に伴う休職期間がないため)。これが夫婦合計で1500万〜2000万円くらいになれば「老後に3600万円確保」も決して夢ではないのです。

夫婦それぞれiDeCoに月1万2000円、つみたてNISAに月3万3000円払うということは、月4万5000円、年54万円ずつの貯金ですから夫婦で年100万円くらいのペースで貯められれば、45歳スタートでも老後の豊かさ維持には間に合うことになります。

子育て世帯に「老後のために年100万円貯金」はなかなか実現困難です。子ども1人当たり年100万円くらいの支出は家計に生じているからです。しかしDINKsであれば家計の見直しにより貯蓄は可能であるはずです。

なお、頑張れるならば、もっと目標は上方修正していきましょう。介護のリスクに備えたり、施設の充実した老人ホームの入居予算確保になったり、さらに老後の選択肢が豊かになっていきます。

まずは「老後もふたりで仲良く」を実現するために、45歳から50歳にかけて、老後のための準備を夫婦で話し合ってみてください。きっとそれは実現可能な目標ですし、DINKsのセカンドライフもきっと楽しいものになるはずです。