加速する「インハウス・マーケティング」の潮流 マーケターが生き残るために必要な5つのスキルとは?

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デジタルマーケター人材の転職支援に特化した人材紹介会社グロウスギアは2017年11月30日、同社セミナールームにおいてマーケター向けの限定イベント「デジタルマーケターのキャリア形成塾」を開催しました。今回はその中から、代表取締役社長の細井康平氏が登壇した「マーケターが生き残るために必要な5つのスキル」の内容をご紹介します。

日本でも増加傾向にある「インハウス・マーケティング」

企業の広告運用といえば、これまでは広告代理店に依頼するのが一般的な流れでした。しかし近年では、広告運用を内製化する「インハウス・マーケティング」の採用例が増えてきています。インハウス・マーケティングのメリットとしては、まず自社内にマーケティングの知見やノウハウを蓄積できる点が挙げられるでしょう。これにより、自社のビジネスに最適化された広告運用が可能になります。

また、すべてのプロセスが社内で完結するため、マーケティングPDCAの効率化・高速化、さらには関連部署を含む企業全体のレスポンス向上も期待できるわけです。実際にマーケティング先進国の米国では、多くの企業が社内にインハウス・マーケティングの専門部署を設置しています。

一方で、日本においても大手企業を中心として、ここ数年でインハウス・マーケティングに取り組むケースが目立つようになりました。ただし、米国と大きく異なっているのが、企業のインハウス・マーケティングを担える人材が圧倒的に不足していることです。日本は世界でも有数の広告大国でありながら、マーケティングについては後進国といわれています。

さらにはマーケティングのデジタル化も、人材不足に拍車をかけている要因のひとつです。

現在では、消費者がWebやソーシャルなど複数のデジタルチャネルを利用することが当たり前になりました。こうした背景から、従来はWeb広告やコンテンツなどを展開する“手法”のひとつだった「デジタルマーケティング」も、デジタルの存在を前提にマーケティングプロセス全体の構築・最適化を図る「デジタルトランスフォーメーション」が求められる時代へと遷移しています。つまり、マーケティングには従来の広告運用だけでなく、デジタルを含むより多角的なスキルが必要になっているのです。

インハウス・マーケティングに取り組む企業においては、このような新しい時代に対応できるスキルを持つ人材を求めていますが、自社で育成するには膨大な時間とコストがかかってしまいます。また、スキル保有者を雇用するにしても、その競争率はかなり高いといえるでしょう。

マーケターが活躍する各ステージのメリット・デメリット


それでは、マーケターの視点からこうした市場の変化はどのように捉えられるでしょうか。マーケターが活躍する場は、広告代理店と大手事業会社、そして中小企業という、大きく3つのステージに分けられます。ここで、マーケターとしてそれぞれのステージが持つメリット・デメリットを見ていきましょう。


まず、代理店のメリットは皆さんもご存知の通り、マーケティングに関するさまざまな知識やノウハウに触れられることです。代理店にはさまざまな業界のクライアントがいるため、業界ごとに異なるノウハウを学べるのもポイントといえます。また、大手代理店では各分野の専門部署が設けられていることも多く、最新の技術に接する機会が増加。数多くのクライアントから得たデータを用いて大規模な分析が行える、といったメリットもあります。一方でデメリットとしては、自分の担当領域が決まっているため、複数領域を同時に担当できない点が挙げられるでしょう。

大手事業会社については、その企業1社に限定されるものの、マーケティングに関するさまざまな領域を同時に担当し、なおかつ深掘りできるというメリットがあります。先ほど紹介した通り、日本企業はいまインハウス・マーケティングのスキル保有者を欲している状況ですから、企業側でもかなりの期待を持って受け入れるはずです。そんな中で「これまで業績が低迷していた事業会社をV字回復させ、過去最高益まで記録」といった実績が残せれば、その企業のプラスになるだけでなく、自分の能力に対する自信にもつながります。しかし一方で、こうした実績を上げるには、複数領域で活躍できるだけの十分なスキルを身に付けている、というのが条件となるでしょう。

中小企業に関しては、基本的な部分において大手事業会社と同様ですが、個人に与えられる裁量の幅がより広く、活動の自由度も高いという特徴があります。また、大手事業会社が事業全体のスケールを目指しているのに対し、中小企業では製品・サービスの認知度向上を最優先とするなど、マーケティング自体の主目的も若干異なってきます。現在、日本には400万社を超える中小企業がありますが、積極的なマーケティング活動を行えているのはごくわずかです。そうしたシチュエーションに身を置くことは、マーケターとして最高の力試しといえるでしょう。企業の成長をダイレクトに感じられるだけでなく、中小企業は地域に根差しているケースが多いことから、成功が社会貢献にもつながっていきます。一方で、裁量の幅が広い分だけ責任が重い、大手企業と比べて予算的な制約が厳しい、といった側面もあります。

事業会社への転職で重要視される5つのスキル

今回セミナーにご参加いただいた皆さんは、事前アンケートによると広告代理店に勤務されている方が多いようですね。確かにマーケティング業界では、従来と比べて広告代理店から事業会社へと転職する動きが活発化しています。転職先としては、新規事業の立ち上げや海外展開、IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)などを考えている事業会社が人気のようです。実際、私の知人も約1年前に「個人としての意見が通りづらい広告代理店よりも、裁量の幅が広い事業会社で自分の実力を試してみたい」と事業会社に転職し、その手腕で年間売上を5倍にまで伸ばしました。

それでは、こうした事業会社へ転職する上で、具体的にどのようなスキルが必要なのでしょうか。

担当領域が分かれている広告代理店と違い、事業会社では企業経営と密接に連携したマーケティングが求められます。そこでまず重要になるのが、経営者と同じ目線で状況の分析や判断ができる経営視点の「判断力」です。具体例として、PL(Profit and Loss statement:損益計算書)を読み解く能力はあった方が良いですね。また、「企画力」も重要なスキルのひとつです。これは単純に企画立案の力というだけでなく、企業が有する人材や組織を最大限に活用しながら、企画を実現するための力といえます。さらに同様の視点から、部署間の連携に欠かせない「調整力」、目標達成に向けて進行管理を行う「ディレクション力」も求められます。

そしてもうひとつ経営視点の「マーケティング力 」を持っているとベストです。近年では、経営者にとってもマーケティングセンスが大切な要素といわれていますが、逆もまた然り。マーケターにとっても、「マーケティング力」を磨くことは大きなプラスとなります。時には社長に対して「ノー」といえるくらいの自信とセンスを身に付ければ、各種施策も進めやすくなるでしょう。もちろん「大口をたたいた割には……」といわれないよう、実績を残すことも忘れてはいけませんよ(笑)。

ちなみに、ここで挙げた5つのスキルは転職時にすべて持っているのが理想的ですが、いくつか欠けていても問題ありません。なぜなら、これらのスキルを身に着けるはそう簡単では無いからです。また、事業会社へ転職後でも経営者層と話す機会が多くなります。そうした経験の中で身に付けていっても良いのです。

重要なのは“転職をリスクと考えない”こと


デジタルの普及によって、インターネット上には情報があふれ、消費者のニーズも多様化している現在。特に今後はデジタルマーケティングの潮流が勢いを増してくることから、マーケターにとっても従来と比べて幅広いキャリアパスが考えられます。こうした状況下においては、“転職をリスクと考えない”ことが重要です。確かに、環境が大きく変わることへの不安はあるかもしれませんが、それをリスクと捉えるのではなく、マーケターとして将来的な成長に向けた一歩と考えれば、自然に踏み出せると思います。

「転職のタイミングがつかめない」という話をよく聞きますが、たとえば「昨年とまったく同じ業務をしている」「給与額がしばらく変わっていない」「最近仕事へのモチベーションが下がり気味」といった方はいないでしょうか?

実はこうした事柄も、転職を目指すきっかけとしては十分といえます。重要なのは、皆さんが常に“自分のスキルをより活かせるステージはどこなのか”を考え続けていくことです。もちろん、自分だけでは判断が難しい状況に陥るようなケースも出てくるでしょう。そんな時には、転職支援サービスなどを利用し、ぜひ定期的に第三者の視点から判断してもらってみてください。きっと今まで自分自身が知りえなかった“新しい気付き”に出会えるはずです。転職支援サービスに相談した結果、「やっぱり転職はやめます」でもまったく構いません。その前向きに動こうとする意識・意欲こそ、企業の将来を担うマーケターに必要な武器なのです。

提供:株式会社グロウスギア
https://www.growth-gear.co.jp/lp_kimura/

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