「イ」に2020ペリカ!

2020年東京五輪・パラリンピックのマスコット最終候補が発表されました。さまざまな検討をしまして、僕は「イ」案を推すことにしました。決めるのは僕ではありませんが、何故「イ」なのかということについてダラダラとご説明しまして、「イ」案派の増殖に貢献できればと思います。



「文句は受け付けない。黙って選べ」がみんなのお約束だよ!

まず、実際のマスコット選びに入る前に、今回の選考過程についてご説明します。今回の選考で何よりも重要視されたのは「透明性」でした。それは言いかえれば「絶対にあとから引っくり返されない」ことです。これはメインスタジアムとエンブレムにて「決定後にやり直し」という二度手間を喰らった運営サイドにすれば、至極当然の反応です。

より素晴らしいものよりも、絶対に引っくり返されないものを選ぶ。その方向性について、僕は否定することはできません。大々的な発表会、さまざまな検討、手間、すべてを「何かイヤだなぁ」で引っくり返されるのはもう二度とゴメンなのです。

そのために運営サイドは慎重にことを運んできました。2017年年頭に動き出したマスコット選考検討会議では、まず「応募要項と審査ステップ」を考えることから始めたのです。マスコットを考える会議ではなく、「マスコットの決め方を決める会議」を出発点としたのです。

タレントの中川翔子さん、妖怪ウォッチを手掛けた日野晃博さん、オリンピアン、パラリンピアンなどを交えた選考検討会議は、「参加資格を設けず、誰にでもチャンスがある方式」「ただし、応募作品には一定のデザイン要件、すなわちクオリティを最初から要求する」ことを決めました。全員にチャンスはありますがゴミは送らないでください、ということです。

さらに選考方法についても議論を重ね、「まず要件を満たしているかで絞り込む」「専門家によってさらに絞り込む」「審査委員会がさらに絞り込む」「最終決定は全国小学生の投票に委ねる」ことを決めました。これらの検討は逐一情報発信され、告知されてきました。そして2017年5月22日に応募要項が発表されました。
<マスコットの応募にあたっての提出物>
・基本デザイン案
・基本デザイン案の6面図
・表情デザイン案2種
・競技別デザイン案2種(何かの競技をしている絵)
・マスコットのプロフィール(制作意図、特徴、2種の関係性)

<マスコットが満たすべき条件>

・エンブレムの完全図を身体の正面に入れること(衣服など取り外せる部位に入れるのは不可)
・全競技のポーズが描写できること
・言葉を出さずに広範な感情を表現できること
・性別は持たない
・2種は、世界観を共通にしつつ、類似しないこと

※応募資格者は18歳以上とされたがグループ応募が可能なので、「子どもたちの案を先生が取りまとめる」などの形で誰でも参加できる

https://tokyo2020.jp/jp/games/mascot/data/mascot-guideline_JP.pdf

出た案に対して「似たりよったり」という意見が見受けられますが、多彩な感情が表現できて、すべての競技ポーズができることが条件ですので、その時点で奇想天外なものは出ないのです。両手両足があって、目が2つ、クチが1つつくようなものになるのは当たり前。形と色がちょっと違う程度のものが並ぶのは当然のことです。

また、「エンブレムがとってつけた感じ」などの脊髄反射も散見されますが、あとからとってつけたのではなく、最初からとってつけろというのが組織委員会のご指示です。しかも身体の正面に完全形で入れろと言われているのです。ならば9割9分まで「おなか」に入れるしかないことはご理解いただきたいものです。

なお、エンブレムのときに見られた「俺のほうがいい案を出せる!」勢もいるかもしれませんが、このオープンな募集に対してリアクションしなかった時点で、文句を言う資格はありません。もはや「アイディア」そのものをどうこうする段階は過ぎているのです。

<ちなみに、こういうキテレツなのは応募要件を満たしません>



応募要項の発表後は、「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」の仕掛け人として知られる鳥嶋和彦氏、なんでもブリキ鑑定団・北原照久氏を加え、会議体が「マスコット審査会」にアップデートされました。そして、この会議においては、審査過程の詳細を詰め、「若い世代の意見を取り入れる」ことが決められました。

具体的には選考過程における「専門家による絞り込み」のフェーズにおいて、国内でキャラクタービジネスを展開する主要な企業から40歳未満のクリエイターを集め、応募作品から一定の水準を持った作品を絞り込むことにしたのです。

バンダイ(男子おもちゃ)、タカラトミー(女子おもちゃ)、少年ジャンプ(男子コミック)、コロコロコミック(男子コミック)、ちゃお(女子コミック)、ポプラ社(児童書)、バンダイナムコ(ゲーム)、スクウェア・エニックス(ゲーム)、東映アニメ(アニメ)、セガ(ぬいぐるみ)というジャンルごとに集められた、国内を代表する企業からの精鋭集団。

「ワンピース」の担当編集や、「魔法つかいプリキュア!」のプロデューサーなど、そのいずれもがヒット作品に現場で携わった面々です。「任天堂がいないじゃないか!」などの声は多少あるかもしれませんが、少なくとも素人が「俺のほうが見る目がある!」とはとても言えないだけの顔ぶれです。彼らは商売でそれを手掛け、生き残ってきた人たちです。

こうした顔ぶれが、形式要件審査・弁護士らによる法的観点での審査を通過した1753作品から、98作品まで候補を絞り込みました。その模様は、インターネットでライブ配信され、密室談合などを防ぎ、開かれた検討を行なっていました。会議室に閉じ込められ、次々に出てくる応募作品を「アリ」「ナシ」と手元のボタンでジャッジしていく作業。それは苦行のようでもありました。

そして、絞り込まれた98作品がマスコット審査会にあげられ、最終候補3作品に絞り込まれたのです。もちろんその模様もライブ中継されました。選考過程の透明性はバツグンです。すごく妖怪ウォッチに似ている案もありますが、妖怪ウォッチの権利者が審査員に入っているのでまったく問題ありません!

<審査過程のダイジェストムービー>


このようにして選ばれた最終候補3作品。全国から参加を表明した市区町村の子どもたちの投票によって、最終決定を行ないます。大人の意見、大人の都合、経験・知見すべてを通過したうえで、最後の最後の「感性」を子どもたちに託した。どうですか、非の打ちどころのない選考方法でしょう。なので、どれに決まっても文句ナシです。文句を受け付けるターンは、もうありません!

↓最終候補作品はこうなりました!左からア・イ・ウ案です!

厳しくふるいにかけたら、ふるいの穴を通過した作品が全部ソックリだったとしても仕方ない!

東京は「白い身体で耳がとんがってるヤツ」を求めていたのだ!

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僕が「イ」案を推す理由、その検討過程

決めるのは全国の小学生ですので、僕はあくまで個人的な意見としてマスコットを検討していきます。僕が重視するポイントは「東京らしさ、日本らしさがあるか(物語)」「2種の関係性および区別(同一であり、非なるもの)」「実際の運用のしやすさ(着ぐるみ関連)」「説明ナシに理解できるかどうか」の4点です。

「ア」案は五輪エンブレムをモチーフとし、五輪マスコットは市松模様をメインに、パラリンピックマスコットは桜をメインにしているようです。エンブレムをモチーフとする発想は、率直に言って物足りない。これは「東京だからTの字」並みの、何の「らしさ」も「物語」もないアイディアです。

2種の関係性に関しても「桜」が完全に浮いています。「菊と桜」でも「花鳥風月」でもなく、同一の世界観や共通性が感じられません。まさに区別するためだけの「とってつけ」。額のエンブレムがなかったら、どっちが五輪でどっちがパラリンピックかもわからないでしょう。

着ぐるみを運用することを考えても、顔のまわりでビラビラしているパーツがわずらわしく、頭と身体のバランスの悪さにより、イメージを保ったまま「アクティブな動き」ができる着ぐるみに仕上げる難度は高そうです。

<ア案は性別を感じさせるのも気になる>


つづいてウ案について。妖怪ウォッチとバファローズポンタと言われる、どこかで見たようなマスコット。あるいはコレは、どちらかの作者が応募したものかもしれません。モチーフはキツネとタヌキ。同一の世界観で対になるものを選んできたことは、説明がなくても伝わります。紅白の色、左右が対称的になるポーズなど、ペアとしては十分に成立したものと言えるでしょう。

しかし、「キツネとタヌキ」であることの妥当性には疑問符がつきます。中国には「狐狸妖怪」という世の不可思議なるものを表現した言葉がありますが、ここで言う「狐狸」はキツネのことです。九尾狐狸が、九尾のキツネのことです。この「狸」にタヌキをあてるのは、日本でのローカライズなのです。「化け物」的つながりによる。

おそらく作者はキツネを先に思いついたのでしょう。日本を象徴するモチーフ、動物は何かないかと考えたときに、お稲荷さんのキツネが浮かんだ。それ自体はあり得る発想だと思います。しかし、対になるのは何だと考えたとき、タヌキがすぐに思い浮かび「昔話の化け仲間ペア」を作ってしまった。それは片方だけ考えて満足した拙速ではなかったか。

「何故、キツネとタヌキなのだ?」と問われたときに、「何となくペアなので」「日本では化け物仲間として有名で」「RED FOX and GREEN RACCOON」と答えるしかないですよね。コッチもよくわからないし、ましてや世界の人にはまったくわからないですよね。それはこのマスコットが背負う物語が不足しているからにほかなりません。

そもそも、キツネとタヌキは決して「良い」イメージのものではないでしょう。不可思議なチカラを備えたものではありますが、九尾のキツネ・団三郎狸などいわゆる「妖怪」にあたる悪役ですよね。鬼太郎とかがぶち殺しに行く相手です。それが本当に五輪、パラリンピックにふさわしいのか、もう一考の余地があったでしょう。

ちなみに「ポンタ」がタヌキなのは、提携会社それぞれで独自のアレンジを施すことをコンセプトとして生まれたマスコットだからです。ローソン風ポンタがあり、引っ越しのサカイ風ポンタがあり、バファローズポンタがあり、ちょっと着替えたりする。だから「変身能力」を持つタヌキが選ばれているのです。その納得感、せっかく選ぶマスコットなら求めたいですよね。

<着ぐるみウケは一番よさそう>


そしてイ案。こちらもウ案とドンかぶりですが、五輪マスコットはキツネのモチーフです。キツネはもちろんお稲荷さんのキツネです。稲荷神は五穀豊穣を司る神で、時代とともに商売繁盛・家内安全など繁栄全般を司るようになったもの。

この神は「黄金色の稲穂」をもたらすものであり、キツネはそれを脅かすネズミを駆逐するものであり、ゆえにネズミの揚げ物を好み、殺生を避けた代替物的供え物として「油揚げ」を捧げる。金色の油揚げ、それはすなわち五輪という舞台を象徴する金色のメダルです。日本の神社において広くまつられている稲荷神の神使である白狐というのは、金色の祭祀を見守るにふさわしい存在でしょう。

神使としての稲荷狐が五輪マスコットならば、パラリンピックマスコットも神使であるべきでしょう。そうです、日本において稲荷狐と双璧を成すメジャー神使と言えば「狛犬」ですよね。イ案はキツネである意味合いを考えてセレクトしたからこそ、対になるものとして狛犬を持ってこられたのです。赤いキツネと緑のタヌキではなく。

「稲荷狐と狛犬」ならば、日本の神道における代表的な神使という同一の世界観を持ち、祭祀を見守る存在として提示できますよね。実際に、その辺の神社の入り口にズラズラ立っているわけですから。「ははぁ、なるほど」と外国人観光客も思うでしょう。タヌキだと、「何でタヌキやねん」「タヌキどこにもおらんやんけ」「何の神様なの?」となりますけど。

そして、デザイン面でもア・ウ案よりも練り込まれています。ア・ウ案は身体全体のイメージは非常に似通っており、同じ形のアレンジ版といったところ。区別のために模様や装飾品を変えてはいますが、それはザックリ言えば「反転」させるようなことです。

その点、イ案は手足のバランス(キツネは細く長く、狛犬は太く短い)、シルエット(キツネは面長、狛犬は丸顔)など、色や装飾に頼らずに2種を区別することを意識しています。「目が見えない人でも、触ったらわかる」デザインです。もちろん色に関しても炎の赤と、風の青とでハッキリと区別をしていますが。

そして、何よりもイ案だけがエンブレムがなくとも「どちらが五輪でどちらがパラリンピックか」がわかるように意識しているのです。瞳をごらんください。キツネには赤・緑・黒・黄・青の五色が、狛犬には赤・青・緑の三色が据えられていますよね。これはとりもなおさず、五輪マーク、パラリンピックマークの色です。

「なんとなーくキャラクター」を作ってきたア・ウ案に対して、何故このモチーフなのか、どこで使われるものなのかを考えて作られたイ案は、「物語」の部分で圧倒的に上回っていると僕は思います。で、そういった理屈に加えて、見た目も好みだったので、僕はイ案を推すことにしたわけです。「神様関連」というところが、宗教的プロパガンダとして刺されそうなのが気になりますが、審査会を通過したのですから大丈夫ということなのでしょう。着ぐるみも動きやすく、グッズ映えもしそうですし、よいのではないでしょうか。

<神様ではなく精霊ということでお願いします>


神道関連って言い過ぎるとダメなヤツです!

対外的には「人気の精霊」くらいにしておきましょう!

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最終的に「デジモン・ポケモン・妖怪ウォッチ」と呼ばれるような既視感強みであることは残念なものの、それはキテレツ発想力よりも選考過程重視であったことを思えば、仕方ないところ。キテレツな人を指名して作ってもらっても、どうせ引っくり返されるのであれば、ある程度無難なものが出てくるのです。

言いたいことは言いましたし、あとは子どもたちの感性に託します。僕はマスコット選考を1年間注視してきたウォッチャーとして、この検討過程は十二分なものであったと支持し、推しはあっても決定には文句を言わないことを誓う者なのです…!

「文句が出ないモノ」とは「ある程度無難なモノ」なのです!