西新宿に実在する理容店を舞台に、経営コンサルタントと理容師が「行列ができる理容室」を作り上げるまでの実話に基づいたビジネス小説。「小さな組織に必要なのは、お金やなくて考え方なんや!」の掛け声の下、スモールビジネスを成功させ、ビジネスパーソンが逆転する「10の理論戦略」「15のサービス戦略」が動き出す。
理容室「ザンギリ」二代目のオレは、理容業界全体の斜陽化もあって閑古鳥が鳴いている店をなんとか繁盛させたいものの、どうすればいいのかわからない。そこでオレは、客として現れた元経営コンサルタントの役仁立三にアドバイスを頼んだ。ところが、立三の指示は、業界の常識を覆す非常識なものばかりで……。
12/6配本の新刊『小さくても勝てます』の中身を、試読版として公開します。

経営コンサルタントの仕事は「おもちゃ箱の整理」

営業マンの顔剃りをしながらも、隣の太朗さんと男の会話は聞こえていた。

「経営コンサルタントって、どんなことやるんですか?」

「一口には難しいなあ」

男はそう言って一瞬、顔をしかめて、鏡の中の自分を覗き込んだ。

「なあ。鼻毛、頼むで」

「はい?」

「団子っ鼻やからな、鼻毛目立つんや」

オレは吹き出しそうになったが、なんとか堪えた。

しかめた顔の開いた鼻の穴から空気を二度ほど吸い込んでから、男は「いろんな言い方、あるなあ」と空気を吐き出すようにボソリと言った。

「鼻毛ですか?」

太朗さんはいい人なのだが、たまにお客さんの話を聞いていないことがある。

「ちゃうちゃう、経営コンサルタントの話や」

「ああ、そうでした、そうでした。どんな仕事です?」

太朗さんは臆面もなくフォローに出た。

「『おもちゃ箱の整理』って言う人もいるな」

「おもちゃ箱ですか?」

「そうや。経営者って、考えなアカンことが山のようにあるやろ。あれやらな、これやらなと、頭の中一杯や。箱の中に人形やら積み木やら、形も大きさも違うおもちゃがゴチャゴチャに入ってるようなもんや。それを整理してあげるんが経営コンサルタントや」

「へー」

「他人ごとやとできるけど、自分のことやと案外でけへんこと多いやろ」

「はい」

「そういう感じかな」

「整理するだけならできそうですね。アドバイスなんかしてないで自分で商売やったらいいのにと、いま思ってました」

「結構、難しんやで」と男はムッとしたように言った。

太朗さんは天然だから、ついこういうことを言ってしまう。

見ていて、たまにヒヤッとすることがある。

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