東急田園都市線の新型車両2020系は白を基調とした外観デザインが特徴。前面にあるオレンジ色の棒はメーカーから輸送する際に取り付けられたもの(撮影:山内信也)

10月、11月と朝の通勤時間帯に2度の大きなトラブルが発生し、施設の老朽化などの問題が顕在化した東急電鉄田園都市線。信頼の回復が急務となる中、同社は近年トラブルが相次いでいる地下区間を中心に緊急点検を実施している。

その田園都市線に2018年春、16年ぶりとなる新型車両「2020系」が登場する。製造から30〜40年を経過した古い車両が多くを占める同線の快適性向上や、運行の安定性向上などを目的に導入される新型は、これまでの東急の電車とは違い「白」を基調とした外観が特徴。まず10両編成3本を投入し、その後も順次導入する予定だ。

新型車は「白」推し

「銀色の車体に赤いライン」というイメージが強い東急の電車。だが、2020系は楕円形の東急マークを除けば車体に「赤」が見当たらない。代わりに目立つのは「インキュベーションホワイト」と名付けられ、「美しい時代へ(卵から)ふ化していく色」であるという白と、田園都市線のラインカラーである緑色だ。

デザインの監修は、東急の商業施設などのデザインを手掛ける丹青社が担当。「東急の新しい色として、今回押し出していきたいのは『白』。沿線の街や駅との調和を考えたデザインで、これまでにない車両になっていると思う」と東急の車両担当者はいう。

外観だけでなく、内装も従来の車両からは大きく変わった。車内に入ると、目立つのは芝生のような模様の入った緑色のシートと、木目をあしらった座席横の仕切りやフローリング調の床面。「沿線の風景をイメージしてカラーコーディネートにこだわった」(車両担当者)といい、通勤電車といえば無機質なオフィス風の内装が多い中、温かみのあるデザインが特徴だ。


フローリング風の床や緑色のシートが目立つ車内(撮影:山内信也)

座席は、すでに一部の車両で採用し、好評を得ているという背もたれの高いハイバック仕様。ドアや座席部分の窓上などには1両当たり計36台(中間車両の場合)のデジタルサイネージを搭載して多言語案内などを行うほか、防犯カメラも1両に2台設置した。手すりや吊り手は抗菌仕様で、空気清浄機も搭載。車いすやベビーカー利用者向けの「フリースペース」も各車両に設けている。

座れれば快適な通勤が実現しそうな新型車両だが、田園都市線といえばラッシュ時の激しい混雑で知られる路線。車両の快適性アップもいいが、少しでも混雑を緩和してほしい……という利用者は多いに違いない。

実は多少ではあるものの、2020系は従来車両に比べて定員も増えた。東急によると、2020系の定員は10両編成で1526人で、旧型の8500系より55人分多い。フリースペースの設置だけが理由ではなく「全体の座席配置などを工夫して少しずつスペースを確保した」(車両担当者)という。

最も混み合う区間では、ピーク時1時間の輸送人員が約7万4000人にものぼる同線だけに「焼け石に水」の感もあるが、「路線バス1台分増えると考えれば……」と関係者。列車の増発が困難な中、東急は電車の定期券で東急バスにも乗れるキャンペーンによって並行する路線バスの利用を促したり、オフピーク通勤を呼び掛けたりと、各種施策の積み重ねで混雑緩和を図ろうとしている。そんな中にあっては「たかが55人分、されど55人分」の貴重なスペースかもしれない。

ドアにも密かにトラブル対策


車いすやベビーカー利用者向けのフリースペースを各車両に設置。ドア(右側)は荷物引き込みなどを防ぐため表面を滑りやすくしたという(撮影:山内信也)

混雑とともに、田園都市線ユーザーを悩ませるもう1つの問題は「列車の遅れ」だ。

遅延を生む原因の1つである車両故障の対策として、新型車両は機器類の動作状況を監視し、地上に送信できるシステムを採用。「故障などが発生した場合でも初動対応を早くできる」(車両担当者)ほか、これらの情報を蓄積したビッグデータによって故障を未然に防ぐ取り組みも進めていくという。

また、地味な点ながらドアの内壁を滑りやすい仕上げとすることで、荷物などが引き込まれるトラブルを防ぐ工夫も施した。

首都圏でも有数の人気路線である田園都市線だが、この秋に相次いだ停電をはじめ、近年はトラブルが多発している。東急によると、東急各線で列車の運行に30分以上支障を及ぼした輸送障害のうち、同社の責任によるものは2016年度以降、今年11月中旬の停電トラブルを含め13件。このうち田園都市線は10件と圧倒的に多く、このうち6件は二子玉川―渋谷間の地下区間で発生している。


田園都市線の主力車両8500系。古い車両は製造から40年以上が経過している(写真:Daisuke Shibuya / PIXTA)

その一因として挙げられるのは施設の老朽化だ。11月に発生した停電の際、同社の担当者は「ほかの路線は輸送力増強工事などで施設のリニューアルを行っているが、田園都市線の地下区間は手がついていなかったのは事実」と述べた。

更新が進まなかったのは車両も同じだ。現在、田園都市線を走る東急の車両は4種類あるが、総勢24編成と最多数を占めるのは1975〜1991年に製造された8500系で、もっとも古い車両は登場から40年以上が経過している。2002年からは後継車両の5000系が導入されて8500系の一部を置き換えたものの、その後車両の世代交代はストップしていた。

後手に回った車両更新


5000系(右)と並んだ新型の2020系(撮影:山内信也)

実は、過去には5000系を大量に投入して車両の更新を進める計画もあった。2007年1月15日付のニュースリリースでは「老朽化を主な原因とする車両故障」への対策として、2007〜2009年度の3年間で5000系を計250両導入し、旧型車の更新を積極的に進めるとの計画を示していた。

だが、田園都市線の5000系は現時点でも総勢180両にとどまっている。東急によると、計画が変わった理由などの正確な記録は残っていないというものの、東横線の副都心線直通(2013年開始)に向けた準備などを踏まえ、車両増備計画の変更があったとみられる。インフラと同様、結果的に車両についても手がつかない状態が続いてしまったといえそうだ。

しかしながら、新型車両の投入や今年度から本格的に始まったホームドアの設置などで、田園都市線にもやっと「順番が回ってきた」感がある。12月中には、トラブルの続発を受けて実施した緊急安全総点検の結果も報告される予定だ。

「2020」という形式は、2020年の東京オリンピックはもちろん、2022年の東急創業100周年に向けた車両としての命名だという。大きな節目に向け期待を背負った白い新型車両は、田園都市線のイメージを変える存在になるだろうか。今後の東急の取り組みが問われる。