ご飯にオリーブオイル!?個性豊かな小豆島オリーブが食卓に広がりをもたらす

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オリーブやオリーブオイルは今でこそ日本人の身近な存在となっているが、いったいどうして広まったのかご存じだろうか? その知られざるルーツとともに、まだまだ広がり続けるオリーブの美味しい食べ方をご紹介しよう。

【小豆島の美味しいところ丸かじり!】Vol.1 オリーブ編


香川県・小豆島に初めてオリーブが運ばれてきたのは、明治41年(1908年)。当時の農商務省が三重、鹿児島、香川の三県で、輸入した苗木を使って試作したところ、小豆島に植栽したオリーブだけが順調に育ったことが、現在のオリーブ大国・香川県を作り上げた原点となっている。

オリーブの栽培面積、収穫量ともに日本一を誇る香川県は、県花、県木がオリーブであることからも分かるように、“うどん県”だけの魅力にとどまらない、実は“オリーブ県”という側面も持つ。しかし、多彩なオリーブグルメを展開しているにもかかわらず、その驚きの美味しさはあまり知られていない。

そこで今回は、小豆島にある“オリーブ栽培面積日本一”を誇る農園・東洋オリーブのオリーブ作り、そして小豆島屈指の人気宿「真里」の絶品オリーブ料理の数々を紹介し、“オリーブ県”の魅力をお伝えしたいと思う。

まずはオリーブがどのように実り、どう加工されるのか知ろう


空の青さと瀬戸内海の紺碧、そしてオリーブの輝かしい緑。この風景こそ、小豆島を象徴する景色であり、旅行者を再訪させる大きな要因の一つだろう。

世界の名だたる品評会で数々受賞し、その品質は世界が認めるところとなっている「香川県産オリーブオイル」だが、とりわけ小豆島でも指折りのオリーブ企業が「東洋オリーブ」である。昭和30年(1955年)の創業以来、栽培、収穫、加工、販売まで一貫して行い、栽培面積は日本最大規模。約25,000本(うち成木12,000本)のオリーブの木を保有する小豆島を代表するオリーブ会社だ。

オリーブは、5月下旬〜6月上旬に花が咲き、実がふくらみはじめるのは7月(しかし、花が咲いても実になるのは10分の1程度)。秋が深まるにつれ、実は大きくなり収穫の時期を迎える。オリーブの実は熟すと緑から紫へと変色し、パンチの効いた味からまろやかな風味になっていく。

なお、オリーブの実はすべて手摘み(!!)で収穫する。オリーブは傷ついた箇所から急激に劣化していくため、優しく丁寧に手で摘み取らなければいけないのだ。風の強い日などは、果実同士が当たり傷ついてしまい、そこから急速に劣化が進んでしまうのだそう。

広大な敷地に数多とあるオリーブの木を、すべて手摘みで採取する……なんとも人間的な光景が広がっていることも、収穫時期ならではの小豆島の特別な風景と言える。

香川県産のオリーブは主に、オイルと新漬けに加工されている。新漬けは、熟しきる前の緑色の状態の実を渋抜きし、あっさり塩漬けにして完成となる。取れたての緑色状の新漬けのオリーブはフレッシュな香りと、パンチのある味が印象的。お土産としても◎だ。

一方、オイルの方はというと、洗浄を経た果実がペースト状になるまで練られ、遠心分離の工程へと移り、最後に採油=オリーブオイルとして完成に至る。東洋オリーブは日本唯一のオリーブ専用精製設備を持つため、フレッシュなオリーブオイルも作ることができるそうだ。ちなみにこれらの工程は、要予約となるが「工場見学」を申し込めば、誰でも楽しむことが可能。

オリーブオイルと一概に言ってもさまざまで、11月発売の緑色の実だけで搾った辛口の「(早摘み)小豆島産エキストラバージンオリーブ油」、12月発売の完熟した実で搾ったまろやかで癖の弱い「小豆島産エキストラバージンオリーブ油(手摘み)」というように、それぞれに個性がある。

東洋オリーブは直営ショップを併設しているので、個性豊かな色とりどりのオリーブオイルを楽しんでほしい。

 

小豆島産オリーブオイルと小豆島産醤油の最強コラボ


さて、オリーブといっても、食べ方や味わい方、味の違いなどがあることが、お分かりいただけたかと思う。オリーブの基礎情報を得たであろうオリーブ初心者から、オリーブを使いこなす黒帯有段者まで、すべてのオリーブ好きに足を運んでほしい場所が「島宿 真里」だ。

こちらのお宿、1日7組限定という今現在、小豆島で最も人気のある宿の一つとして人気を博している。しかも、文化財の古民家をリノベーションした母屋は食事処としても解放されており、宿泊は叶わなくても食事だけ楽しむこともできてしまう万能っぷりだ(食事のみも要予約)。

中でも、ぜひ堪能してほしいメニューが、「醤油会席」(7,500円〜/税別・サービス料5%)。季節の小豆島の食材だけでなく、“文化”まで味わい尽くすことができる絶品が揃う。

「秋の造り盛 畑野菜」では、諸味たれ、二段熟成、生あげ、淡口生揚、といった異なる4種類の醤油が用意される。特に生あげは、バラエティに富んだ醤油比べを楽しんでほしいと真里が特別に手配している一品。

実はここ小豆島は、四百年の歴史を持つ醤油造りの場でもあり、厳選された原料を素に、昔ながらの木桶仕込みで熟成させた醤油が集う。熟成されるまでの工程によって、醤油の味も変わり、その変化を楽しむ文化が小豆島にはあるというわけだ。

この4種の食べ比べが非常に面白く、例えば、味噌のような味わいがある諸味たれは、旬の野菜との共演が抜群に美味しい。きりっとした味の生あげは、白身魚との相性がよく、「どの食材がどの醤油に合うか」と、あれこれ考えながら料理と向き合えるのは、大人の贅沢な時間の使い方と言えるはずだ。

そして、「醤油会席」でオリーブ収穫期に味わえる極めつけは、なんと言っても「土鍋のオリーブご飯(※提供時期は要問合せ)」だろう。「ご飯にオリーブオイルをかけてお召し上がりください」と言われたときは、さすがに我が耳を疑った。「嘘だろ?」と疑心暗鬼のなか、恐る恐るかけてみると、上質なリゾットのようなまろやかな味に変わる……これはもう“イリュージョンめし”と呼んでいいのではないだろうか。

さらにご飯だけではなく、自分自身で、様々な料理とオリーブオイルを合せてみるのもおもしろい。例えば、佃煮が北インドのスパイスのような複雑な味に変わり、日本では食べることができない多国籍なテイストに早変わりするのは摩訶不思議体験だ。オリーブオイルがもたらすトリップ感は感動的ですらあり、既成概念を何万マイルも吹っ飛ばす。

季節やその年の収穫によって異なるが、オリーブご飯とともに登場する個性豊かなオリーブオイルからご飯にかけるスペシャルワン(種類は時期によって異なる)を、その時期の真里おすすめの中から、1つセレクト。辛味やまろやかさ、パンチの強弱など好みの味を楽しめる。仲間と味の違いを楽しむのも一興だろう。

「丸はぎの塩焼き」など、醤油会席に登場する四季折々の料理はどれも美味。オリーブオイルだけに頼らない、確かな味わいを楽しんでほしい。

そもそも、小豆島でオリーブオイルを愛する“オリーブオイラー”の皆さんは、基本的に何にでもオリーブオイルをかける習慣があるという。

「意味が分からない」という方もいるかもしれない。味が出来上がっているものはそのままに、素材の味を楽しみたいから何もつけない、という人も多いはずだ。それこそ、「醤油とオリーブオイルが合うのか?」なんて思う人もいるに違いない。

しかし、ここ小豆島が有する超一級のオリーブオイルと醤油を組み合わせると、とてつもない化学反応が起こる。スタン・ハンセンとブルーザー・ブロディが組んだときのような、ルイ・ヴィトンとシュプリームのコラボのような、ワクワクが止まらない夢の共演、最強コンビが誕生するのである。

オリーブ牛の炙り焼き(7,500円コースに一人前2,000円で追加可能)

讃岐が誇る地酒の飲み比べセット。「春の光」は小豆島唯一の酒蔵(森國酒造)で醸造された銘柄。シンプルな極上の素材を、超一級の調味料で味わう小豆島の料理だからこそ、キリリとした切れのある日本酒との相性が◎。

丁寧に作っていただいた和食にオリーブオイルをかけることで味をぶち壊してしまうのではないか? 未体験ゾーンに闖入していいのだろうか? 心配するなかれ。結果的に食への探究心をかきたててくる「醤油会席」は、知らない文化に触れたときのような衝撃を味わわせてくれるから面白いのだ。

「本当にオリーブオイルをかけて美味しくなるの?」と疑う人もいるに違いない。信じるか信じないかはあなた次第です!と言いたいところだが、超一級のエクストラバージンオリーブオイルだからこそ可能にする美味さがあることを忘れてはいけない。日本のオリーブ発祥の地であり、今もひとつひとつ丁寧に手摘みで収穫する愛おしさを内包しているがゆえに、一粒一粒が輝いている。

そのきらめきがオイルとなって、食材に新たな楽しみをもたらしてくれる。どの食材にどのオリーブオイルをかけようか……無限の可能性を体験しに、ぜひ小豆島、そして「真里」を訪れてほしい。


 

取材・文・写真:我妻弘崇(アジョンス・ドゥ・原生林)