焼肉道第二回「実は怖い焼肉屋」

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グルメ界を代表するマッキー牧元氏が若者へ、外食力の鍛え方を伝授する連載。今回は侮りがちな焼肉編。肉を焼く前に知っておくべきこととは?

タベアルキスト・マッキー牧元さんの連載。一人飲みの攻略法を教えていただいた「一人飲み」なんて怖くないの次のテーマは、意外と怖い?焼肉屋です。第一回では、いい焼肉屋の見分け方を伝授してもらいました。今回は、焼き方実践編「基本編・肉を焼く前に知っておくこと」をお届けします。

外食力の鍛え方〜客上手になろう〜


『鶯谷園』出典:毎日外食グルメ豚さん

焼肉屋さんにとって一番苦手なお客さんは、どんな人達だろうか? 焼肉屋さんに聞いてみた。すると一番は、「上司と部下」だそうである。

上司が話やら説教やらをしていて、なかなか焼いている肉に手をつけない。そのため部下も食べることができないという状況が続いていると、苦しい気持ちになるという。上司が焼肉に詳しく、食いしん坊ならいい。しかしたいていの場合、「肉でも食いに行くか」と連れてってくれる上司は、傍若無人、イケイケどんどんタイプと決まっている。

「さあたくさん食えよ」と、皿に盛った肉を全部焼き台にのせてしまう。脂が落ちて炎が上がると、「いいねえ。これだよこれ。この炎。これを見ないと焼肉食っている感じがしない」と喜ぶ。

焼き台にのせた肉をやたら押していじる。焦げても「炭のいい香りだね」と気にしない。肉を取らずに話をやめないので、部下は先に取るわけにもいかず、肉は次第に硬くなっていく。焼きたてを食べたいのに、「どんどん食えよ」と、取り皿に何枚も置くので、ぬるくなってしまう。

こんな経験はないだろうか? 上司でなくとも大学の先輩にこんな人はいないだろうか? 焼肉屋が苦手だと思うのは、いい肉を仕入れ、うまく焼けるように整えて出したのに、最後の「焼き」で、台無しにしてしまうからである。つまり先にあげた行為は、「焼肉をまずく焼く方法」なのである。

『三幸園』出典:ゆっきょしさん

初めて焼肉屋で焼肉を食べた日のことは忘れない。大学一年生の時である。その頃は、都内にあった焼肉屋は、現在の十分の一くらいであろう。先輩が連れてってくれたのは、麻布十番の『三幸園』だった。その時初めて食べたカルビの味は忘れない。一口食べた瞬間に圧倒され、すぐに駆け出したくなるくらい、の味だった。

その頃はきちんと焼肉を焼くということも考えず、ただひたすらたくさん肉を焼き台にのせて焼くということしか考えていなかった。考え始めたのは、社会人になってからである。

こうして大人になってから焼肉屋を知った僕らの世代とは違い、小さい頃から焼肉屋に行けるようになった方たちは、もっと焼肉をよく知っていると思う。だが、少しの工夫でもっともっとおいしく、良い肉を無駄にせず食べることができるんだな。

僕も20代の頃は、焼き台にいっぱい肉をのせて焼く、「ひたすら無神経焼き派」だったが、焼肉名人や、料理人と行くようになり、焼肉屋の主人とも仲良くなって、次第にその秘技を習得していったのである。

『冨味屋』出典:YlangYlangさん

まず彼らに共通することが4つあることに気づいた。これこそが「焼肉を焼く心構え」である。

その4つが、1. Love(愛情)、2. Observation(観察力)、3. Imagination(想像力)、4. Concentration(集中力)である。

つまり、肉に愛情を持って臨み、焼かれている肉がどんな状態か、火はどこが強いか、視覚と嗅覚と触覚などを使って正確に観察する。その後、肉の状態が今どうなっているのか肉の気分になって想像する。肉を焼き始めてから終わるまで、終始集中力を保って焼いていくということ。

焼肉なんて気軽に焼けばいいじゃないか。と思う人もいるだろう。確かにそうであるし、そういうところが楽しい。ただし肉を上手に焼き、肉のポテンシャルを最大限に引き出すためには、それだけの心構えが必要だということだけは覚えていてほしい。

さて次にこれも基本、「焼肉屋でやってはいけない3原則、炎、押す、放置プレイである。それぞれ説明しよう。

『スタミナ苑』出典:やっぱりモツが好きさん

炎について

肉から脂が落ちて、特に炭の場合は炎が出る。しかしその場所に置いておくと、炭臭くなるだけで中までよく焼けない。また炭の場合は、脂が炭に落ちると火力が落ちるので、そのまま置いておくと蒸れたような状態となって、肉の旨みが出ない。炎が出たら肉を別の場所に移動する。あまりに激しい時は、氷をもらって網台の上に置き、鎮火する。また七輪などは網をずらして、火のないところに一旦避難させてやったり、ガス台の鉄板の時は火がおよばない(それでも熱くはなっている)脇に置く。

特に気をつかうのは、以下の部位。カルビなど脂が多い肉。内臓類では、ギアラ、丸腸、シマ腸と言った、これも脂が多い部位である。

押すについて

よく焼いている肉を上から箸やトングで押して触っている人がいるが、なんの意味もない。肉に余計なダメージを与えないで、触るのは肉を返す時や、下の焼けている面の具合を覗く時だけにしよう。ただし、反ってくるような肉は、両脇を軽く押さえるなどの処置が必要である。

放置プレイについて

焼く時に、よく見るようにしているとは思うが、数秒の差で肉は硬くなってしまう。せっかく頼んだ肉が、焦げ、水分を失って硬くなり、炭化していくのを見逃している人は、実はケッコウいる。でも、タイミングを見極めるのは難しいかもしれない。ということで、次回は、さらに突っ込んだ焼き方を指南する。

マッキー牧元オススメの焼肉屋

「焼肉初心者はここへ行け」難易度★『鶯谷園』

「焼肉上級者はここへ行け」難易度★★★『冨味屋』

「焼肉上級者はここへ行け」難易度★★★★『スタミナ苑』