秋元康のアイドルドラマに変化? けやき坂46『Re:Mind』の“演技合戦”を読む

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 洋館の一室に閉じ込められた11人の女子高生。彼女たちは全員頭に袋を被せられ、足を拘束されたまま椅子に座らされ、眠っていた。1人の少女が目を覚まし、袋を外したのを契機に、次々と他の少女たちも目覚め、袋を外していく。「いったい誰がこんなことをしたのか?」、そして、「どうすればこの部屋を抜け出せるのか?」。一室に飾られた道具や様々な小道具から何かを思い出し、数珠つなぎで核心に触れようとする。しかし、1話ごとに、少女たちは1人ずつ消され、その恐怖から、愛憎の念や疑心暗鬼で極限状態へと追い込まれていく……。

参考:けやき坂46主演ドラマ『Re:Mind』撮影現場に潜入 シリアスなミステリーの裏は意外に和やか!?

 欅坂ではなく、けやき坂初主演の密室サスペンスドラマ。それが、本作『Re:Mind』である。欅坂46内には2グループある。シングル表題曲を歌う欅坂46、妹分のグループとしてカップリング曲を歌うけやき坂46(ひらがなけやき)。以降、本稿では、欅坂と、けやき坂とで表記を分け、その2グループ全体を指す場合のみ、欅坂46とする。

 秋元康企画・原作のドラマでも、各々のグループ初主演作、AKB48の『マジすか学園』、乃木坂46の『初森ベマーズ』、欅坂の『徳山大五郎を誰が殺したか?』、けやき坂の『Re:Mind』、いずれも、視聴者へのメンバー認知が目的だったとも考えられる。そのため、主要登場人物を演じるメンバーのパーソナリティーや、各グループにおけるメンバー同士の関係性などが反映されていた。

 ヤンキーを題材にした『マジすか学園』でいえば、AKB48選抜総選挙の順位を元に、敵対関係が組まれ、また、Sっ気のあるメンバーにはサドという役名がつけられた。

 ソフトボールのスポ根ドラマ『初森ベマーズ』でいえば、乃木坂46シングル表題曲を歌う選抜メンバー常連組を、主要登場人物に設定。また、実際にピアノが特技のメンバーであれば、その才能をソフトボールに生かすなどのぶっ飛んだキャラ設定もあった。

 学園密室サスペンスの『徳山大五郎を誰が殺したか?』は趣が異なってくる。まず、現在まで連続でセンターを務める平手友梨奈以外、ほとんど序列が同じであるため、平手の探偵的な役回りを除き、他のメンバーには均等に演技の機会が配されていた。また、キャラづけも、『欅って、書けない?』(テレビ東京)などで垣間見られた個性や特技を元に、上記2作とは異なり、過度にならない程度のフィクショナルな設定が1人1人につけられた。

 『Re:Mind』も、密室サスペンスかつ役名=実名という点は同じである。さらに、『徳山大五郎を誰が殺したか?』の平手友梨奈以外と同じく、実際各々のメンバーに序列がほとんどないため、ストーリーの要請上1話ごとに消えていくメンバーがいるものの、1人1人に見せ場を作っていた。そこに着目することで、世界観をミニマムに設定する必然性が生まれ、密室サスペンスとなるのであろう。

 しかし、『Re:Mind』が決定的に異なるのは、実際の活動で垣間見られるパーソナリティーをほとんど参考にせず、1から組み立てたキャラ設定にしている点である。また、キャラのバックグラウンドを描くシーンが挿入されるものの、足枷をはめられた状態で物語が進むため、極度に行動を制限される。そういった状況の中、素の演技だけではなく、上半身を主とした演技らしい演技によっても、キャラを伝えていく。そのため、演者のセリフや撮影の1カットがそれまでの作品と比べ、格段に長い。この場合、「画が持つ」ということが必要条件となってくるが、驚いたことに、第1話冒頭から、「画が持つ」というレベルに止まらない緊迫した演技合戦が繰り広げられる。

 第7話冒頭までに残ったのは、佐々木美玲、柿崎芽実、高瀬愛奈、高本彩花、齊藤京子、加藤史帆、佐々木久美の7人。状況に合わせ、的確に、役の感情を顔のパーツや台詞回しで表現できる佐々木美玲。低音ボイスを生かし、常に吠えるように話す齊藤。この2人を除けば、今回のキーとなる高瀬の演技が特に印象的だった。それまで会話に入ることが比較的少なく、一定のトーン、抑揚、表情の変化で演技していた彼女。また、若干台詞の聞き取りづらさも感じていた。しかし、今回は、ストーリーの根幹に関わっていることが発覚。その状況下で精神的に追い詰められた役の心情を見事にとらえ、長台詞もはきはきと発していた。

 第7話以降も残り、今回は名前を挙げなかったメンバーも、みな初回と比較し、著しく演技を向上させている。特に、第8話では、キーとなる加藤に注目すべし。彼女は、あることが原因で声を失った設定だが、第7話で声が出せると判明。「なぜ声を出せなくなったのか?」、ストーリーの根幹に大きく関わる出来事が原因だが、その独白では、恐らくファンでも見たことがないような加藤の一面を見られるはずだ。(梅澤亮介)