「みなとみらい4号橋」上から横浜駅方面を望む(筆者撮影)

渋谷と横浜を結ぶ大動脈、東急東横線には3つの廃線跡がある。1つは、東京メトロ副都心線との相互乗り入れに伴い地下化された渋谷―代官山間の地上線跡。2つ目は、みなとみらい線との直通運転開始により地下化された、東白楽―横浜間の地上線跡。そして、3つ目が、同じくみなとみらい線との直通運転開始に伴い廃止された横浜―桜木町間だ。

このうち、渋谷―代官山間は、線路跡地を利用した整備事業として、2015年に商業施設「ログロード代官山」が代官山駅付近にオープンするとともに、2018年秋開業を目指し、保育所やホテルなどを整備する「渋谷代官山Rプロジェクト」が進行するなどしている。これらの渋谷―代官山間の整備事業は東急電鉄が行っている。また、東白楽―横浜間の整備は横浜市により進められ、反町駅付近の架道橋や高島山トンネルを残す形で、「東横フラワー緑道」という遊歩道が、すでに完成している。

完工時期は5年も先送りに

他方、横浜―桜木町間は、高架を活用した遊歩道として整備される計画は発表されているものの、2004年の廃止から13年が経過する現在も、整備が終わるようには感じられない。当初は市民の声などを受け、「自転車も通れる遊歩道や駐輪場」として整備する計画が持ち上がったが、2015年に「歩行者専用の遊歩道」に計画変更。また、当初は、2016年度完工予定だったが、現在は、2021年度完工予定に変更されている。

これまでの工事の経過について整理すると、下記のとおりとなる。

2008〜2009年度:構造物の補修・補強工事(耐震工事含む)
2010年度:みなとみらい4号橋 橋梁(紅葉坂交差点付近)架け替え
2012〜2013年度:桜木町駅駅舎・高架構造物解体
2013〜2014年度:桜木町駅西口広場整備(一部供用開始)
2015〜2016年度:桜木町駅西口広場整備(一部拡張)
2017年度:桜木町から紅葉坂交差点付近遊歩道整備中

以上を踏まえ、横浜―桜木町間の遊歩道工事が遅延している理由や、今後の予定等について、工事を担当する横浜市に取材した。今回、話を聞いたのは、事業の基本計画を取りまとめる都市整備局と実際の工事を担当する道路局だ。

まず、公共事業において、一般に分かりづらいのが予算であろう。本プロジェクトの予算について尋ねてみた。横浜市都市整備局の回答は以下のとおりだ。

「総事業費は約85億円。途中、計画変更等ありましたが、この金額は、当初の見込みから変更はありません。予算の内訳として、用地取得費と工事費があり、ともに国からの補助金を50〜55%程度活用しています。予算は年度ごとに必要分を要求する仕組みですが、昨今、横浜市の財政状況が厳しく、十分に予算確保できていない状況です」


「みなとみらい4号橋」は、桁下の高さが不十分だったため、かさ上げして架け替えを行ったので、段差が生じている(筆者撮影)

国の補助金は、自治体負担分(市予算)とセットなので、なかなか基本計画どおりに工事が進められないのが現実だという。

なお、現時点での用地取得と工事費用を含めての全体予算ベースの事業の進捗率は、およそ60%だという。ただし、総事業費約85億円のうち、用地取得費が35億円。工事費ベースで換算すると実質進捗率は3割程度といったところだろうか。工事自体はあまりはかどっていないというのが、数字から見て取れる。

市の財政事情も足かせに

ほかにも工事が遅延している理由がある。横浜―桜木町間の旧東横線高架がJR根岸線の高架と国道に挟まれた狭い部分に敷設されているため、工事実施にあたっての制約が多いのだ。

「桜木町駅側から、順次、工事を進めており、資材の搬入は桜木町駅西口広場に隣接する搬入口から行っています。搬入口が、駅入り口の直近にあることから、事故がないよう車両を出入りさせなければならないという制約があります。また、近くで店舗が営業していることから、営業に支障がない時間に作業を進めるなどの段取りも必要です。さらに、安全に作業を進めるため、近接するJRや国道を管理する横浜国道事務所との協議に時間を要したことも、工事に時間がかかっている理由です」(道路局)

ちなみに、横浜―桜木町間と同じ年に廃線になった東白楽―横浜地上線跡の東横フラワー緑道は順調に整備が完了したが、その理由について尋ねたところ、以下のような回答があった。

「東横フラワー緑道は、東横線の地下化事業とあわせ基本的な整備計画が確定でき、先に整備着手しました。当時はまだ十分な予算を確保できていたので、工事もスムーズに進みました。一方、現在は財政状況が好転しない中、局内を見渡すと、”エキサイトよこはま22”をはじめとする街づくりや鉄道の新線計画(東部方面線)等さまざまな事業を進めなくてはいけないので、優先順位をつけて対応せざるをえない状況です」(都市整備局)

現在、工事が進められている桜木町駅―紅葉坂交差点付近の現場の様子も見学することができたので、その様子を含め、今後どのような遊歩道として整備が進められるのかについて、以下、リポートしよう。


レンガが敷き詰められた桜木町駅西口広場(筆者撮影)

まず、桜木町駅改札を出て西口側(みなとみらいと反対側)に出ると、一面レンガ敷きの広場として整備されている。これはレンガ造りの昔の横浜駅の駅舎をイメージしており、「鉄道の記憶を残す」施策によるという。ちなみに、東横線旧高島町駅付近には、1915(大正4)年に開業し、1923(大正12)年の関東大震災で焼失した「二代目横浜駅」のレンガ遺構が残っており、見学することも可能だ。


桜木町駅西口広場に隣接する遊歩道入り口付近に設置済みの階段とスロープ。未舗装の状態だ(筆者撮影)

レンガ敷き広場の北端に、工事用の安全鋼板により仕切られた資材搬入口があり、その向こうで遊歩道の工事が進められている。中に入ると、遊歩道に上る階段とスロープが造られており、街路灯や植栽スペースも一部設置されていた。さらに、その先には、紅葉坂交差点付近に架かっている、みなとみらい4号橋橋梁が見えてくる。

さらに、今回は足を延ばさなかったが、ここから1kmほど先には旧高島町駅のプラットホームがほぼ当時のまま残されており、「ホーム等については、残置する方向で検討している」(都市整備局)という。さらにその先は、横浜駅のすぐ手前まで高架が続いている。

遊歩道の路面は「線路」をイメージ

ちなみに、この遊歩道は工事が完了した区間から順次、一般供用を開始する計画となっている。今年度中の供用開始は難しそうだが、工事完了次第、桜木町駅―紅葉坂交差点付近をまずは開放する予定だ。その際、桜木町側から見てみなとみらい4号橋を渡った先に国道への昇降場所を設ける。同地点のほか、昇降場所は、横浜駅までの間の主要交差点や接続する駅付近など、複数の場所に設ける予定だが、具体的な数や、階段・エレベーターの双方を設置するかどうかなど、施設の詳細については検討段階だという。

なお、遊歩道の路面は未舗装の状態だが、今後、線路のバラスト(砂利)をイメージした舗装にするという。

ところで、この遊歩道は、当初、市民の意見を聞いた結果、「自転車も通れる遊歩道や駐輪場」として整備する計画だった。しかし、2015年、横浜市は計画を大きく変更し、「歩行者専用の遊歩道」とした。この理由について、都市整備局の担当者は次のように説明する。

「歩行者と自転車の接触事故が社会問題化し、国から自転車走行空間を車道に設置する方向性が示されたことなどから、現在は歩行者専用の遊歩道を整備する計画としています。この計画変更に関して、市民からの強い反対意見等はとくにありませんでした」(都市整備局)

たしかに、現地を見ると、遊歩道の幅は場所によって7〜10mであり、植栽スペースや階段等の設置スペースなども考慮すれば、自転車と歩行者を安全に共存させるのは難しいのかもしれない。また、当初の計画には駐輪場としてのスペースの活用も含まれていたが、2013年に桜木町駅に新たな駐輪場が整備されたことも、反対意見が聞かれない理由として考えられる。

最後に、横浜駅周辺地区で進められている街づくり計画「エキサイトよこはま22」との関係性などについても話をうかがった。

「横浜―桜木町間遊歩道は、エキサイトよこはま22の歩行者導線計画の一部として位置づけられています。現在、旧東横線の高架は横浜駅手前で終わっていますが、これを帷子(かたびら)川と横浜駅との間の高架構造物を活用し、階段等で地下1階の”みなみ通路”に接続させる計画です」(都市整備局)


「横浜市市街地環境設計制度」に基づいて誰でも自由に出入り可能な公開空地に、二代目横浜駅のレンガ造りの遺構が保存されている(筆者撮影)

なお、一般に鉄道廃線跡を活用した遊歩道整備においては、”地域間の分断の解消と回遊性の向上”というビジョンが掲げられることが多いが、今回の遊歩道整備は、周辺エリアの活性化へのインパクトは期待されるものの、「この事業に、旧市街地とみなとみらい地区を結ぶ廃線跡地と直行する施設の整備等、具体的な計画は盛り込まれていません。両地域間の分断の解消策については、別途考えることとしています」(都市整備局)とする。

このほか、近年の社会情勢からすれば、遊歩道の都市防災機能としての活用や、完成後の維持管理等における、民間の活力の導入なども検討課題となろう。

今後は、予定どおり進むのか

「市民の皆様からは、一日も早く供用をという声はいただきますが、整備の内容について見直しを求めるようなご要望をいただくことはありません」(都市整備局)ということが示すように、横浜―桜木町間は、廃線からおよそ13年間、半ば”放置”されてきたこともあり、地域住民の関心もかなり薄れてきていることが想像される。

また、桜木町駅側から完成部分につき、順次、遊歩道として供用が開始されれば、桜木町駅に隣接した資材搬入口が、原則として使えなくなり、今後の工事に際しては、国道側からの資材搬入等が必要になるが、それには、さらなる協議や調整が必要になる。予算の問題等も考えると、2021年度に本当に完成するのかも未知数といえよう。