患者の話を聞くだけでアトピー性皮膚炎が治ってしまうことも(depositphotos.com)

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 アトピー性皮膚炎は非常に厄介な病気である――。

 世界アレルギー機構(WAO)によれば、この数十年の間に、全世界の都市部でアトピー性皮膚炎の患者数が増え続けている。また、世界各国でアトピー性皮膚炎の研究は行われてきたが、いまだに原因不明。

 アメリカの国立衛生研究所と慶應大学の研究グループは「アトピー性皮膚炎はアレルギー性の病気ではない」と2015年に発表して私たちを驚かせたが、遺伝、食物、ダニ、細菌感染などさまざまな要素が関係すると考えられている。

 この不可解なアトピー性皮膚炎の原因として、患者やその家族の心の問題にいち早く着目し、治療に取り入れているのが須階富士雄医師(芝皮フ科クリニック院長)である。

 須階医師の専門は皮膚科だが、アトピー性皮膚炎の治療のために心理療法も学び、患者にカウンセリングを行っている。皮膚の症状と心の問題はどのように関係するのか? 普段の生活でどのような注意をしたらいいのか? 須階医師に話を聞いた。

「じっくりとお話を聞くだけで治ってしまう」

 須階医師が開業したのは21年前――。当時のアトピー性皮膚炎の治療では、小児科医・内科医の多くがアレルギーを引き起こす食品やダニなどの除去を患者に指導していた。一方、皮膚科医は厳しい食事制限による栄養不良を指摘し、スキンケアの重要性を強調。

 そんな中、心と体の結びつきを最重視した須階医師は、日本では少数派だっただろう。

 「患者さんの心の状態が症状に大きく関係していると気づいたのは、大学病院の外来に勤務しているときでした。教授が診断すると、それだけで症状が急激に改善する患者さんがいたのです。権威がある人だと、こんなに違うんだなと(笑)。私たちのような若い医師でも、じっくりと時間をかけて患者さんのお話を聞くだけで治ってしまうことがありました」

 須階医師は勤務医の頃に心理療法などを学び、開業時にカウンセリングも取り入れた。一般にカウンセリングには、患者の心配や悩みを聞き取って、気持ちに共感しながら理解を示すというイメージがある。しかし、須階医師の話では異なる。

 「人間には変化を嫌って、現状を変えたくないという心理があります。患者さんの中には、『アトピーを治したい』『治らなくて苦しい』と口では言っていても、心の奥底では『これまでどおりアトピーでいたい』と願っている人もいるのです」

 子どもの場合はアトピー性皮膚炎によって両親からの関心が得られる。大人なら「アトピーで大変だね」と周囲にいたわられ、仕事量などを軽減してもらえる......。こうしたアトピー性皮膚炎であることのメリットから、治ろうとしない患者がいるそうだ。

 「カウンセリングで患者さんの話にただ耳を傾けるのではなく、見方を変えてあげる。また、患者さんがご自分の感情に気づく方向に話を進めていくこともあるのです」

日記を書いて「自分」を知ることが改善につながる

 須階医師がセルフケアとして勧めている方法が「日記を書く」こと。1日を振り返って、次の項目を書き留めるとよい。

○何をした後で、どの部分のかゆみが強くなったか
○何を食べた後で、どの部分のかゆみが強くなったか
○どんな天候で、どの部分のかゆみが強くなったか
○どんなときに、どの部分をかきむしっていたか

 「患者さんの中には、これまでどんな治療法で治らなかったのか、大量にレポートを作成しているケースがあります。こうしたレポートはアトピーの改善にほとんど役立ちません。それよりも、普段の生活を見直して自分の弱点を知る、言い換えれば自分で自分に気づくことが有効なのです」
(取材・文=森真希)

須階富士雄(すがい・ふじお)
芝皮フ科クリニック院長。 1962年、東京都生まれ。89年、聖マリアンナ医科大学を卒業後、東京慈恵会医科大学皮膚科に入局。東京慈恵会医科大学附属柏病院・町田市民病院での勤務を経て、96年に芝皮フ科クリニックを開院。


森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。