─選手同士のコミュニケーションはどうですか。
 眞鍋「選手の中ではセッターの竹下佳江(現ヴィクトリーナ姫路監督)、リベロの佐野優子のベテランが若い選手のいい手本になってくれました。竹下は自分にもストイックですが、若手たちを指導してチームをまとめてくれました。佐野は職人タイプで人一倍練習に励みます。その姿を若手が見て目標にしていました」

 ─選手を支えるスタッフたちとのコミュニケーション面での工夫は。
 眞鍋「コーチ陣とは毎日、1日の練習と作業が終わった後にスタッフミーティングを行いました。ビールを飲みながら、その日あった出来事を話し合います。すると、調子の良い選手、悪い選手の情報をみんなで共有できて、その情報をもとに翌日の練習メニューに反映することができます。また注目選手に取材がいきがちですが、コーチへの取材も積極的に働きかけました。スタッフのモチベーションを高める作戦です。監督はモチベーター的存在なのです」

ポジティブ思考が勝利を引き寄せる
 ─銅メダル獲得後は注目もプレッシャーもより強くなったと思います。
 眞鍋「私は“プレッシャー”という言葉が大好き。プレッシャーのない試合に勝っても楽しくありません。緊張感があればあるほど、勝ったときの達成感は大きい。しかし、新しいことに挑戦するときはリスクを負います。すぐに成功しません。失敗は付き物で、「これで本当にいいのか」と悩むこともあります。ネガティブになる気持ちを、自分やチームを信じてポジティブな思考に変えられるか、感情のコントロールが重要になってきます。そのときに『五輪でメダルをとる』という目標を達成するために挑戦しているのだと、改めて原点に立ち返るのです」

 ─ポジティブ思考を持つためには。
 眞鍋「考え方次第です。バレーや野球、ゴルフ、テニスなどの競技はプレーが終わると集まる時間があり、“間がある”スポーツと言われます。つまり、自分で考える時間がある。このときに何を考えるか。マイナス思考になると絶対勝てません。私はプラスに考えます。もし前半戦で失敗してしまったら、『よかった!まだ試合の前半だ。ラッキー!』、試合に負けてしまったら『よかった!まだ五輪前だ。反省しよう』と。気持ちの切り替えが大切。しかし、女性は特にネガティブな思考になってしまいがち。メンタルトレーニングにも取り組みましたがなかなか難しいですね」

一致団結したときの女性パワーは無限大
 ─長年、女子チームを指揮されてきましたが、女性の能力を引き出す秘訣とは。
 眞鍋「男性と女性で異なることは、団結したときの力。たとえば、男性は嫌いな上司に言われても従って動きますが、女性は嫌いな上司の下では「はい」と笑顔で答えながらも気持ちのどこかで100%の力を発揮しない傾向があります。逆に、「この上司のためなら」とか「この職場のために」という思いで1つにまとまったとき、男性よりはるかに大きく、計り知れない力を発揮します。企業で女性活躍の推進を目指すなら、この女性のパワーに着目することをお勧めします。女性をうまく活用することが会社のためになるのです」

 「やはりコミュニケーションが大事。こまめに気配ること、小さなことにも気づいてあげることです。特に人間関係を良好に保つことに心がけています。人間関係のストレスは試合にも影響します」森永乳業と共同開催したバレー教室 子供たちを真鍋GMやオリンピアンたちが直接指導する Victorina Co.,Ltd Photo by ism

人と人がつながり、助け合う
 ─ヴィクトリーナ姫路のGMに就任されてから1年になります。現在の目標とは。
 眞鍋「ヴィクトリーナ姫路は国内初のプロチームで前例がないので、どこもやっていないことを試行錯誤しながら自分たちでつくっていかなければなりません。私はチャレンジが大好きなので、今は楽しいです。日本一になることが目標。そして、姫路から日本代表を輩出し、世界に挑戦していきたい。われわれが頑張ることでバレー界を活性していきたいです」