質疑応答で、想定外の質問にしどろもどろしないためには?(写真:xiangtao / PIXTA)

プレゼン資料はしっかりと時間をかけて準備するけれど、質疑応答は出たとこ勝負で……そんな方は意外に多いものです。自分のペースで進められるプレゼンは完璧でも、質疑応答でしどろもどろになったり、思わぬ失言をしてしまうと、うまくいったプレゼンテーションよりも、そちらの印象が強く残りがちです。思わぬ方向から飛んでくる質問を鮮やかに切り返せたら、きっと一目置かれるはず。今回はそんな質疑応答のテクニックをご紹介します。

質疑応答を恐れる日本人


この連載の記事一覧はこちら

私はプレゼンテーション研修の講師をしているため、多くの方のプレゼンテーションを間近で聞く機会が多いのですが、あるとき、日本人と外国人では質疑応答の対応に大きな違いあることに気がつきました。

プレゼンが終了し質疑応答の時間が来たときに、海外のスピーカーは「Any question?(質問はありますか?)」と熱心に何度も聞き、何も質問が出ないとがっかりとした表情をするのに対し、日本人のスピーカーは質問が出ないと、「あ〜、よかった……」とほっとした表情をするのです。

これは、(苦手な)プレゼンを早く終わらせたいという気持ちに加え、質問のとらえ方によるところも大きいのでしょう。質問を「ツッコミ、あらさがし」ととらえるのか、「聞き手の興味関心の表れ」ととらえるのかです。

本来、質疑応答はお互いの理解を深め、信頼性を高める機会なのですが、プレゼンにあまり慣れていない人は、自分の説明に不足があるから質問が出るものと認識してしまい、できれば避けたいと思いがちです。議論を通じて理解を深めていくことに慣れている欧米のスピーカーに比べると、どうしても質疑応答はハードルが高いように思えてしまうようです。

質疑応答がよい機会と思ったとしても、いきなりの想定外の質問にはひるむ……もっともです。では、どう準備して、対応していけばいいでしょうか。

まずは「備えあれば憂いなし」です。質問されそうなことを徹底的に洗い出してみましょう。できれば質問されたら嫌だな……と思うようなものまで考えておくと、いざ聞かれたときも動揺せずにすみます。想定外の質問はないに越したことはありません。

私はコンサルタント現役時代、クライアントへの報告会の前に、メンバーから「これだけはお客様から質問されたくないこと」を1人10個考えてもらい、全員で回答を考えました。こうすることによって、誰が聞かれても動揺せずに同じ回答ができるので、信頼感が高まったという経験があります。

想定外の質問は動揺につながり、失言を生みます。もしその時点では相手が満足するような回答ができない状態であったとしても、「当然、そのような疑問を抱かれると思っております」「ご懸念のとおりです」と余裕を持って対応するのと、アタフタしてしまうのは大きな違いです。

また、想定される質問を洗い出していくと、聞かれて困る嫌な質問ばかりではないことに気がつくと思います。「むしろ積極的に言いたい!」という質問もあるでしょう。とはいえ、誰かがそのようなラッキーな質問をしてくれるとは限りません。その場合には、自分からその質問を口にしてしまえばよいのです。「よくこういうことを聞かれるのですが……」「もしかしたらこういう疑問をお持ちかもしれませんので、お話ししておきます」などと切り出すのです。

こうすれば、自分の言いたいことを伝えられるとともに、プレゼンするテーマに詳しく、慣れているという印象を与えることもできて一石二鳥です。「ご質問はありますか?」(……シーン)という気まずい状態になったときにはぜひ、自分で質問して、自分で答えてみてください。質問したくても躊躇していた方が、「そうそう、それが聞きたかった!」とうなずいてくれることがよくあります。

質問を確認、検証、反論に仕分ける

次は質問の答え方ですが、やみくもに答える前に質問を3つのタイプに仕分けてみると、ぐっとラクになります。

1つ目は、「確認」のための質問。メッセージの意味を相手が確認したい場合にする質問です。

2つ目は、「検証」のための質問。確からしさや真偽、具体性、詳細などを知ろうとする質問です。

3つ目は、「反論」のための質問。一見質問に見せかけて、実は異議を唱えている問いかけです。

それぞれの例と答え方をご紹介していきます。

3つのタイプの例と答え方

●「確認」の質問

「このような理解でよいですか?」
「つまりこういうことでしょうか?」

上記のようなキーワードが出てきたときにはプレゼンで伝えたい基本メッセージの意味を確認する質問です。「おっしゃるとおりです」「言い換えればこういうことです」「基本はそのとおりです。異なる点があるとすれば……」と回答をしていきます。基本を理解いただく貴重な質問ですので、しっかりと自信を持って回答しましょう。

●「検証」の質問

「XXの場合はどうなりますか?」
「具体的な例を教えてください」

これらは詳細部分を検証するための質問です。こういった質問にはつい詳細な情報をどんどんと伝えてしまいがちですが、それだけで終わらせずプレゼンで伝えたい基本方針に立ち戻って回答をするようにしましょう。「おっしゃっているケースでは○◯です。△△という基本がここでも適用されるからです。△△適用の応用編と考えてください」という具合に、「個別ケースへの回答+基本方針」形式で回答しましょう。詳細な情報が続くとそのディテールに目がいってしまい、メインで伝えたいことが薄れてしまうからです。

また、非常に細かい自分の興味関心があることや、レアケースの質問をする人がいますが、その話に興味のないほかの聞き手を置き去りにしてしまう可能性があるので、注意が必要です。細かすぎる内容になってきた場合には、「お時間も限られているので、その質問には終了後にしっかりと回答させてください」と別の場で回答したほうが、質問者もほかの聞き手も満足する結果になります。

●「反論」の質問

「それはうちの会社でもうまくいくのでしょうか?」
「根拠をもっと具体的に説明してもらえますか?」

3つ目の反論のための質問ですが、このような質問を受けるとつい感情的になってしまったり、固まってしまったり、否定的な言葉で返したくなってしまうこともありますね。しかし、これも実は信頼関係を築くチャンスです。このような質問の背景には聞き手が何らかの不安を抱えていると考え、聞き手に寄り添うような回答にしましょう。たとえば「ご懸念はもっともです」「このようなことを心配されているのではないですか?」と相手を気遣ったり、質問の真意を問いかけていきます。

ほかの聞き手もこのやりとりを通じて、話し手の信頼性を値踏みしています。ここで言葉に詰まったり、語気を荒らげて反論したりせずに、誠意のある対応や余裕が見せられれば、話し手や内容に信頼性があると判断されるのです。

私は若い頃はこの質問に見せかけた反論に対して、「そう思うのは、そちらに問題があるからではないでしょうか?」といった失言をしてしまい、深く後悔した経験があります。もちろん、本意ではなかったのですが、大勢の前で言われると自分を見失いがちです。想定質問、想定反論をあらかじめ考えておけば、相手が本当は何を心配しているのかにも気づけて、相手を安心させる回答ができるようになるでしょう。

回答する際に特に注意したほうがいいことは、質問に対して「YesかNoか」を最初に回答することです。質疑応答の場に居合わせると、質問の詳細部分に反応して、いきなり細かい回答をはじめてしまう人が多いと感じます。聞き手はYesかNoかをまずは知りたいのです。先に言っておかないとずっと「どっちなんだろう?」ともやもやしたまま回答を聞くことになってしまい、せっかくいい回答をしているにもかかわらず理解されないことがあります。

「さらに詳細が知りたい」と話を催促する質問であれば別ですが、「◯○ですか?」と聞かれた場合には、「おっしゃるとおりです。なぜなら……」、もしくは「残念ながら違います。理由は……」など、まずYesかNoかで答えたうえで詳細な話を付け加えていきましょう。YesかNoかを明言するのは勇気がいる場合もありますが、聞き手は白黒はっきりつけたいので質問しているのです。「ケース・バイ・ケースです」と言いたくなるのをぐっとこらえて、まずはそのもやもやをすっきりさせたうえで、話を展開しましょう。

質疑応答は一問一答ではない

もう1つ、質疑応答でやりがちなのは、一問一答のテストや面接のように答えてしまうことです。そうではなく、聞き手と話し手がお互いを理解する場なのです。単に回答したらOKと思わずに、相手の問いかけに感謝し、相手が納得したかどうかをきちんと確認しましょう。

流れとしては、「ヾ脅妁回答→3稜Бい泙箸瓠廚箸い順にしてみるとよいでしょう。

感謝を忘れない

回答に先立って相手に感謝の意を表します。内心は困ったことを聞かれた……と焦っていても、「ご質問ありがとうございます」、鋭い質問が出た場合も狼狽を見せずに、「いい視点のご質問をいただきました。ありがとうございます」というふうに、質問を受け止め、感謝の意を表します。質問をした方も気分がよくなり尖った気持ちが和らぐとともに、余裕のある自分を印象づける効果もあります。

質問をする人も「これを聞いていいのかな?」とどきどきしながらも勇気を出して質問する人も多いのです。絶好の理解浸透の機会を与えてくれたことにまずは感謝しましょう。

⊆遡笋鮖妬けて回答する

前述の確認、検証、反論に仕分けて回答をしていきます。

A蠎蠅納得しているか確認する

回答し終わったら、聞き手が答えに納得しているかどうかを確認してください。「ご質問の答えになっていますか?」と確認するとよいでしょう。納得していない場合、またさらなる詳細な質問が出てきて非常に話が長くなりそうな場合には、終了後に個別に話すと伝えてもよいでしょう。

ぜ遡笋伐鹽を要約する

「XXさんがしてくださった質問は別方向の視点で見たものです。それも、今日お話ししてきたことの◯◯ということに立ち戻ると考えやすくなるでしょう」「XXさんから重要な視点をご提供いただきました。こちらも基本方針とあわせて検討していきます」というふうに重要なキーワードやメッセージに立ち戻ってまとめていってください。回答だけで終わるとプレゼンテーションの印象として、伝えたいメッセージよりも回答のほうが強くなってしまうからです。

答えられない場合、困った質問はどうするか?

感謝はするものの、実際にはその場で答えられない質問もあります。即答できない質問が出てきたときの対処法をご紹介しましょう。

ー遡笋琉嫂泙魍稜Г靴燭蝓言い換える

「今のご質問はこういう意味でしょうか?」など質問を再度繰り返したり、「それはつまり、こういうことをお聞きになりたいということでしょうか?」など質問の意図を確認して時間かせぎをしつつ、その間に回答を考えます。

ほかの人にふってみる

,亮蠱覆撚鹽が思い浮かばない場合には、ほかの参加者に「皆さんもそう思われますか?」などと聞いて反応をみます。また、提案プレゼンなどで、自社のほかのメンバーがいる場合には「◯○さん、どうですか?」とふってみて、うまく答えてくれればよしとし、答えが的はずれだった場合には、それを修正したり補足していきます。私はコンサルタントの駆け出しの頃はよく、「これどうなってるの?」と困った質問をふられて必死に回答しているうちに、上司が状況を読んでうまい回答を考えるための時間をかせぐという、ありがたくない役回りをさせられたことがあります。

宿題にする

,任皚△任眦えられない場合には、無理やり回答しても失言や今後困るような言質をとられることになってしまい、逆効果になります。この質問には今は回答できないと判断したら、正直に「この質問は宿題とさせてください。◯日までに回答いたします」と持ち帰りましょう。そして、期日より前に回答することで誠意を見せるとよいでしょう。

当然、すべての質問に満足いく回答ができるとは限りません。その場合には、それも自分にとっては成長機会ととらえましょう。相手には終了後に個別にしっかりとフォローし、誠意を見せる機会だととらえましょう。すべて完璧なプレゼンなど滅多にありません。革新的であればあるほど、疑問や反論も出てきて当然です。質問が出ることに怯えたり、答えられないことに落ち込むよりも、これはさらによくするための機会だととらえたほうが精神的にもダメージを受けずに前に進めます。 


私は講演や研修講師として質問を受ける機会が数多くありますが、それでも質問を受けるときには「何を聞かれるんだろう? 答えられるかな?」と身構える自分がいますし、相手が満足する回答ができないこともあれば、回答にとても満足した顔を見てうれしくなることもあります。

満足してくださればもちろんうれしいですが、相手の聞きたいことそのものに答えられない場合でも、答え方や姿勢次第で信頼を深める経験を数多くしてきました。相手の質問の真意をしっかりととらえて、答える姿勢を見せることは、プレゼンの一部です。本当に伝えたいことがあれば、質疑応答はできれば避けたい時間ではなく、自分から積極的に求める時間になるのではないでしょうか。