住民に愛されている「都市」は、どこなのでしょうか?(写真:まちゃー / PIXTA)

市民がプライドを持っているまちはどこか? まちに対する「愛着」や「誇り」、住む、働く、子育てする等々のさまざまな場面における「お勧め度合い」について、日本を代表するシンクタンクである三菱UFJリサーチ&コンサルティングが独自調査を行い、「市民のプライド・ランキング」としてまとめている。
最新刊『2018年 日本はこうなる』で解説している、今知るべき86のテーマのひとつを紹介する。

まちづくりの好循環を生み出す「市民のプライド」


自分が暮らすまちや生まれ育ったまちに愛着や誇りを持つこと――いま、こうした「市民のプライド」や各都市のイメージに対する注目が集まっている。

それは、市民のプライドが高まることによる効果として、自治体関係者にとって地方創生の文脈で語られるような定住の促進が期待されるからである。また、市民がプライドを持つことで、他市への人口の流出を防ぐとともに、生まれ育ったまちへの人のUターンも期待されている。

愛着、誇りに加え、市民が友人や知人に「お勧め」できることがまちのブランド形成にもつながる。SNSなどの発達で、個人からの口コミや発信内容が重視されていることを受け、市民に対してまちの魅力を情報発信し、まずは市民にまちの魅力に気づいてもらい、楽しんでもらうための取り組みを行うことで、愛着や誇り、友人や知人にお勧めしたいという気持ちを育もうとする自治体も増えている。

「愛着」「誇り」「お勧め」のどれもが揃う都市は、市民のプライドが大変高く、人口が流出しない。そればかりか、まちへ人を呼び込むなどの好循環を生み出す可能性があり、このような市民を育てることが、今後のまちづくりにおいて大変重要となっている。

そのような中、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、政令指定都市と、東京都区部の21団体の住民を対象に独自調査を実施し、「市民のプライド・ランキング」をまとめた。自ら暮らしているまちに対する住民の思いを数値化し、自治体間で比較した結果をランキングにした。

まちに対する愛着や誇り、お勧め度合い(まち全体のお勧め度とともに、働く、子育てする、デートするなど、生活のさまざまな10の場面別でも把握)、にぎわい、美しさなど、そのまちの魅力を表すキーワードに対する共感度合いをランキングしている。各自治体のブランド形成のための参考資料として、街の魅力やポジションの把握に活用してほしいと考えている。

なお、調査の概要は最終ページに記載している。

まずは、「愛着」に関するランキングについて、見ていこう。

「愛着」はあるがお勧めできない北九州市、名古屋市


ここでは、5位に入っている「北九州市」に注目したい。北九州市は、次ページ以降の「誇り」、「お勧め度合い」のランキングで次々と順位を落とし、「お勧め度合い」で16位。市民にとって愛着はあるけれど、友人や知人に積極的にお勧めはしない都市となっている。

北九州市(愛着5位⇒誇り11位⇒お勧め度合い16位)と同様に、お勧めの度合いで順位を落としていく都市として、名古屋市(愛着10位⇒誇り12位⇒お勧め度合い15位)がある。

北九州市と名古屋市に共通する事項として、「住むこと」「子育てすること」には満足しているが、「買い物・遊びで訪れる」「アフターファイブを楽しむ」「いろいろな人と交友を深める」「多様性がある」の観点で、市民としてお勧めできないことが、同調査の他の調査項目から分析できる。

市民レベルでの多様な交流が少ない印象で、友人・知人に勧める機会も少なくなり、同時に褒められる等の反応を得ることも少ないことから、「お勧めするほどでも……」といった姿勢になっていることが考えられる。

勧め上手ではないので、都市として他の地域の人を歓迎する雰囲気も作れず、閉鎖的な雰囲気になり、人も来ず、という負の循環が進んでしまうことが考えられる。

市民の都市への愛着を活かして、自分の好きなまちの魅力をお勧めできるような仕掛けづくりが必要である。最近では、志向の多様性も相まって観光・レジャーにおいても、大型の集客施設ではなく、地元の人がこよなく愛するグルメや体験などに注目が集まっている。

少しずつでも褒めてもらうことで、「この資源でもいいんだ」と思えることが重要である。愛着パワーを武器に、褒められ上手・勧め上手になることが、市民プライド向上のカギとなる。

次に、市民がどの程度自分のまちに「誇り」を持っているかを見ていこう。

「誇り」の上位、京都市・神戸市、横浜市、仙台市


「誇り」に関するランキングについて、福岡市、札幌市を除いた上位、「京都市」「神戸市」「横浜市」「仙台市」に注目する。福岡市、札幌市ほどの地域ダントツトップではないか、関西、関東、東北の各エリアに競合都市がいるなかで、市民のプライドが高い都市である。

各エリアでトップのプライドを持つこれらの都市で共通している事項としては、「住むこと」に加え、「買い物・遊びで訪れる」「アフターファイブを楽しむ」「いろいろな人と交友を深める」の観点でお勧めできることが、同調査の他の調査項目から分析できる。

住むだけではなく、まちを楽しみ、交友を深めるなど、その都市を楽しんでいる印象もうかがえる。エリア内からの買い物やレジャーも含め遊びに来る人がいることで、褒めてもらえることが、エリアトップクラスの市民プライドにつながっているものと考える。

また、同調査では、市民が共感する各都市のイメージのキーワードを聞いているが、これらの都市では、「美しい」「おしゃれ」のどちらかのキーワードが上位5位項目に入っている。逆にいうと、福岡、札幌を含む市民のプライドの高い都市以外においては、これらのキーワードは5位以内に入っていない。併せて「国際的」のキーワードも共通して出てくる特徴もある。

市民がプライドを持つには、美しい・おしゃれな都市イメージの形成、国際感が重要となるかもしれない。

最後は、他人にお勧めできるかどうかのランキングを見ていこう。

愛着はないけど「お勧め」できる東京都区部


「お勧め度合い」に関するランキングについて、先に述べた「愛着」のランキングは低いものの、「誇り」、「お勧め度合い」のランキングで順位を上げている「東京都区部」「川崎市」「さいたま市」に注目する。区民、市民が愛着は持っていないけれど、友人や知人にお勧めできるという都市である。

東京都区部(愛着12位⇒誇り9位⇒お勧め度8位)、川崎市(愛着16位⇒誇り14位⇒お勧め度11位)、さいたま市(愛着20位⇒誇り18位⇒お勧め度14位)に共通している事項としては、都市のイメージとして共感できるキーワードでのランキングで、「便利」の順位が大変高くなっている。

また、「アフターファイブを楽しむ」「いろいろな人と交友を深める」「デートをする」の観点では、市民としてお勧めできていないことが、同調査の他の項目から分析できる。

住んでいるまちでの交流や、住んでいるまちを楽しむことよりも、その利便性を生かして、他のまちへ移動して楽しんでいる印象が調査からみてとれる。まちへの帰属意識が低く、愛着が育まれにくいこととも考えられる。

東京都区部の区民については、まちを楽しんでいないと言われると違和感があるかもしれないが、同調査においては、あくまで暮らしているまちに関して聞いていることから、まちを区単位で認識している可能性も考えられる。たとえば、葛飾区に住み、渋谷区で働いたり遊んだりしている人については、暮らしているまちを葛飾区の範囲で考え、回答している可能性が高い。

お勧め度合いが高い一方で、愛着が低いことから、お勧めを受けて入ってくる人が多い半面、まちに根付いた生活をしていないため、簡単に流出してしまう可能性もある。このような都市においては、まちでの交流機会を増やす仕掛けをつくり、地元意識を高め、愛着を育むことが重要である。愛着が育まれることで、お勧め度合いのランキングがもっと上がる可能性がある。

調査によると、政令指定都市のなかで、福岡市が「愛着」、「誇り」、「お勧め度合い」のすべてにおいて第1位となった。札幌市が「愛着」、「お勧め度合い」で第2位である。

「お勧め」で、ぶっちぎり1位の福岡市、2位の札幌市

「お勧め度合い」では、全部で10項目について調査しているが、福岡市はそのうちの実に9項目で1位となっている。

「全般的によいまちであること」「住むこと」「働くこと」「子育てすること、アフターファイブを楽しむこと」「いろいろな人と交友を深めること」「趣味や教養を深めること」「デートすること」「多様性があること」の9項目である。「買い物・遊びで訪れること」のみ、1位が札幌市、2位が福岡市となっている。札幌市は、8項目で2位につけ、「趣味や教養を深めること」での2位が京都市、3位が札幌市となっている。

本調査は、各都市に暮らしている人が、自らのまちに対して回答する絶対評価であるが、無意識に近隣市と比較され、九州、北海道のエリアにおいて圧倒的なポジションにある福岡市、札幌市が上位になった。逆にそれ以外の都市においては、近隣都市を魅力に感じることにより、愛着・誇り・お勧め度合いに対する評価に影響しているのではないか。

また、福岡市、札幌市は、観光客やビジネス客、転勤者も多く、そうした人との交流やおもてなしが市民によるお勧めにつながり、お勧めしたことが、おもてなしを受けた人から褒められることで誇りにつながるという、市民のプライド醸成の好循環が生まれていると考えられる。

【調査概要】
対象都市:政令指定都市(20市)及び東京都区部の計21団体(札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、東京都区部、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市)
調査対象:各都市200サンプル(男女別・年齢10歳階級別<20代〜60代>の10カテゴリで各20サンプル)
調査方法:マクロミルのネットリサーチシステムを活用
調査期間:2017年2月24日〜2月28日
評価方法:NPS(ネットプロモータースコア)により得点化(「感じる」「薦められる」を10点、「全く感じない」「全く薦められない」を0点としたときの点数を選択。10〜8点を同意、5〜7点を中立、0〜4点を非同意とし、同意の割合から非同意の割合の差を算出して指数化した。本来NPSでは10〜9点を同意、7〜8点を中立、0〜6点を非同意とするが、ほとんどの都市において得点がマイナスになることから、本調査では、スコア算出基準を変えている)