コブクロにとって“今”は常に通過点だーー2人の歌の力が発揮されたツアー最終公演

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 最新シングル『心』を携え、約5カ月間で全国14都市30公演25万人を動員した『KOBUKURO LIVE TOUR 2017“心”』が、いよいよファイナルの地・埼玉へ到着した。2017年11月26日、さいたまスーパーアリーナ。円形に4本の花道が突き出した巨大なセンターステージと、2階席のてっぺんまで埋まった2万1130人の観客が作り出す光景が壮観だ。このツアーはシングルを中心に置きつつ、かなり自由なセットリストが組まれていると事前に聞いていたが、百聞は一見に如かず。場内が暗転すると同時に、新しいツアーグッズ、リストバンド型LEDライトの白い光が星の海のように客席を美しく染め上げる。黒田俊介と小渕健太郎の二人が歩いてステージに向かうのが、近くにいる観客の歓声でわかる。午後4時、開演の時は来た。

 1曲目はいきなり新曲の「君になれ」だ。小渕が弾くゴールドのレスポールがうなりを上げ、黒田がパワフルにシャウトする、緊張感みなぎるロックチューン。今はまだできなくていい、迷えばいい、でも“いつの日か本物の君になれ”と、反骨心を秘めた希望のメッセージが小渕らしい。続けてお馴染みのヒットチューン「虹」「君という名の翼」、さらに最新アルバム『TIMELESS WORLD』収録の「tOKi meki」へ、ビートの効いたミドル/アップテンポの曲を畳みかける。「tOKi meki」にはちょっとした振り付けがあるが、ふと見ると、弦カルテットの可愛らしい女性たちが楽し気に観客を煽っている。ドラムの河村“カースケ”智康、キーボードのヨッシーこと松浦基悦の、コミカルな動きがカメラに抜かれて笑いを誘う。ステージから発するぬくもりと笑顔が、広い空間にじんわりと広がってゆくのが見える。

「今回のツアーは何にもとらわれないツアーです。新しい曲も懐かしい曲もやります。一番上の人まで届くように歌うので、その手拍子と笑顔で僕らを指揮してください」(小渕)

 「紙飛行機」は、オールディーズポップスの香りがするハッピーな歌で、音に乗ってどこからともなく無数の紙飛行機が舞い降りる美しいシーンが見られた。『TIMELESS WORLD』の中でも指折りのドラマチックミドルバラード「SUNRISE」では、LEDライトで真っ赤に染まった客席に、朝日の如く輝きを増してゆく照明が映えた。最新シングル『心』のカップリング「HELLO, NEW DAY」では、珍しくクールな打ち込みのビートから、ラウドなロックギターが炸裂するサビの広がりへ、そして「スマーーーイル!」と、小渕の渾身の超ロングトーンに度肝を抜かれた。深い余韻の残る最高の歌唱……だったはずが、小渕の最後の決めポーズ「ストップ!」に黒田がツッコミを入れたところから、いつのまにか掛け合い漫才になってしまう、これもまたコブクロらしいライブの魅力。それにしても、今日の黒田のツッコミは冴えている。調子は良さそうだ。

 同じく『心』のカップリング「LIFE」では、小渕が丁寧に歌詞の解説をしてくれた。誰のための人生じゃない。自分のための人生を生きよう。ゆったりと弾むビートに乗せたシンプルなメッセージに、小渕の吹くハーモニカの柔らかい音色が良く似合う。続いて本日2曲目となるCD未収録の新曲「夏の雫」は、パーカッションのラムジーこと坂井秀彰の奏でる涼やかな風鈴の音色に導かれた、センチメンタルな夏のバラード。小渕の爪弾くガットギターの物悲しい旋律が、心の琴線とシンクロする。その次に熱唱型の冬のバラード「流星」を置き、同じバラードでも季節や感情の振り幅を見せながら、ライブはいよいよ最深部へと突入してゆく。

 最初のワンマンライブのお客さんは67人だった――。小渕が懐かし気に“はじまり”のエピソードを語り、「夢をテーマにした歌です」と言って歌った「Starting Line」の、胸を打つ説得力は素晴らしかった。が、何と言ってもこの日の感動の頂点を極めたのは、そのあとの2曲「蒼く 優しく」と「心」だったと言い切りたい。「蒼く 優しく」はもう10年前のヒット曲だが、弦カルテットを加えたエモーショナルなサウンド、バンドのテンションの高さ、加えて黒田の鬼気迫る激唱に聴き惚れるのみ。そして「心」は新曲にも関わらず、すでに「蒼く 優しく」に伍するほどのパワーを持ち、ラスト一節<誰も一人じゃない>を、小渕と黒田がノーマイクのアカペラで歌い切った時の、さいたまスーパーアリーナいっぱいに響き渡った生々しい声の波紋は忘れられない。観客によるスタンディングオベーション。1分以上も鳴りやまない拍手。黒田と小渕の、会心のハイタッチ。“心”を擬人化し、“自分”と対比させるという手法で、たった一つの揺るがないものを見つけ出す。作家としての小渕の才能を凝縮した、紛れもない名曲の誕生だ。

「30公演歌ってきて、今日で『心』という歌が完成したと思います。一生歌っていきたいと思います」(小渕)

「“誰も一人じゃない”で、僕の2017年は終わりました(笑)。黒田俊介、完。」(黒田)

 小渕の生真面目なセリフを、黒田がユーモラスに混ぜっ返す。負けじと小渕がツッコミを返し、ここからは思い付きのゆるいダベ……いや、当意即妙の爆笑トークが続くのだが、面白すぎるので割愛。詳しく知りたい方は、次のコブクロのライブに参加してぜひ体感してもらいたい。

 「話、長いわ!」という黒田のツッコミを受け、ようやく歌う気になった小渕が「ここから盛り上がって行こう!」と観客を煽る。曲は、本日3曲目となるCD未収録の新曲「白雪」(しらゆき)だ。スピード感あるポップなロックチューンで、観客が腕にはめたLEDライトが一斉に白に染まる中、空から雪の如く銀紙が舞い降りる。ライブは一気にクライマックスへ、ここからはお馴染みのアップチューンを連ねてラストまで全力疾走だ。「memory」ではド派手な銀テープが宙を舞い、小渕がレスポールを弾きながら花道を駆け抜ける。「神風」では、バンドマスターでギターのフクチャンこと福原将宣と小渕のツインギターと、ベース山口寛雄のバトル中に黒田が突撃し、何やら笑いながら歌ってる。そして最後はやはりこの曲、「ストリートのテーマ」だ。「朝まで僕らと一緒に、歌ってくれませんか?」と、二人と2万1130人との幸福なコール&レスポンスがいつ果てるともなく続く。アコースティックギターを黒田に任せ、小渕は4本の花道をくまなく駆け巡る。何というパワー、その姿はもはや歌うアスリートだ。最後まで軽快な足取りも力強い歌もまったく衰えないまま、本編が終了したのは午後7時前。約3時間、17曲。もう満腹? いや、まだ入る。拍手は鳴りやまない。

 アンコール。LEDライトの白色が無数のキャンドルライトのように輝く中、「未来」を歌い終えた小渕が「この景色を見せてくれてありがとう」と言った。そしてツアーが終わったらすぐにレコーディングに入ること、来春からは二人だけで回るツアーを行うこと、来年9月の結成20周年に向けて「これからもチャレンジし続けます」と宣言すると、観客からのあたたかい拍手が湧き上がった。コブクロは長距離ランナー、今は常に通過点だ。アンコール2曲目、そして本日のラスト、つまり全30公演の最後を飾る曲は、2001年にリリースした2ndシングル「轍‐わだち‐」だった。中盤にアコースティックギター1本で観客と大合唱するパートをはさみ、この人生をたゆまず前進してゆく強いメッセージを込めたロックチューンを歌い上げた小渕が、顔をくしゃくしゃにして「心ツアー、完結!」と誇らしげに叫ぶ。最後は明るく朗らかに、ステージの上にも客席にも笑顔しかない。

 コブクロのライブは誰一人をも置き去りにしない。世代も音の好みもなく、ロックもポップもない。ただひたすらに本物の歌のうまさと、そこに込めた心の強さを教えてくれる場だ。すべての人の心に明るい花を咲かす、そのライブに祝福を。来年は結成20周年、どんな景色を見せてくれるのか今からもう楽しみだ。(取材・文=宮本英夫)