清武弘嗣が9ヶ月ぶりに日本代表に戻ってきた。合流後の初練習ではチームの先頭を走った【写真:Getty Images】

写真拡大

先頭を走った清武弘嗣。ケガを乗り越え9ヶ月ぶり代表復帰

 日本代表は4日、都内に集合して初練習を行った。9日から開幕するEAFF E-1サッカー選手権(E-1)に臨むのは全員が国内組の選手たち。その中でも随一の経験を持つ清武弘嗣は9ヶ月ぶりの招集だが、リーダーシップを発揮し、再びロシアW杯への道を切り開くため復活した姿を証明しなければならない。(取材・文:元川悦子)

---

 12月9日の北朝鮮戦から開幕するEAFF E-1サッカー選手権2017 決勝大会(E-1)。東京・味の素スタジアムでのホーム開催とあって、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表にとっては絶対に負けられない大会だ。

 ところが、11月29日に発表された23人のメンバーのうち、西大伍(鹿島)が右ひざ負傷でいち早く離脱。左肋骨骨折が判明した杉本健勇(C大阪)も離脱濃厚となってしまった。新たに初代表の室屋成(FC東京)と2年ぶりの復帰となる川又堅碁(磐田)を追加招集したものの、戦力的に厳しいのは間違いない。

 そんな苦しい状況だからこそ、12月4日に都内で行われた事前合宿初日の冒頭ミーティングで、指揮官は「新しい選手も、これまで選ばれていた選手も関係なく、(2018年)ロシアW杯のメンバーに入るチャンスだ。一切遠慮はいらない」と選手たちを力強く鼓舞したのだろう。

 その後、選手たちは25分間のランニング、ボールコントロール練習、狭いエリアでの5対2、体幹トレーニングを1時間半に渡って消化したが、今年3月のロシアW杯アジア最終予選・UAE(アル・アイン)&タイ(埼玉)2連戦以来の復帰となった清武弘嗣(C大阪)が昌子源(鹿島)と談笑しながら先頭を走った。

 長谷部誠(フランクフルト)、吉田麻也(サウサンプトン)ら欧州組の年長者がいる時の彼は控え目な振る舞いを見せることが多かったが、今回の代表チームは国内組のみ。2014年ブラジルW杯経験者であり、国際Aマッチ43試合出場5得点という、34歳の今野泰幸(G大阪)に次ぐ実績を誇る28歳の司令塔は「自分がみんなを引っ張らないといけない」という自覚を強めているはず。その思いがこうした行動に現れたのだろう。

 ちょうど1年前の2016年11月の最終予選・サウジアラビア戦(埼玉)で香川真司(ドルトムント)をベンチに追いやり、トップ下で先発出場した時には、清武がロシア行きの危機に瀕するなど、誰一人として想像しなかったに違いない。それほど高度な戦術眼を誇るテクニシャンは光り輝いていた。ところが、今年に入ってスペインの強豪セビージャから古巣のセレッソ大阪へ移籍すると、予期せぬ壁にぶつかる。その最たる要因が4度のケガだった。

3ヶ月の長期離脱を経て。ハリルも認める技術は錆つかず

「ケガをしない工夫はしました。食トレもしたし、トレーニングも増やしてるし、サプリメントも取るし、佑都(長友=インテル)がヨガをやり始めた頃には自分も取り入れました。ホントにいろいろやりましたけど、ケガをする時はする。それはしょうがない」と本人は言うものの、苦悩の日々を強いられたのは間違いない。

 とりわけ、6月末のベガルタ仙台戦で左ハムストリング筋損傷の重傷を負って3ヶ月もの長期離脱をした際には、セレッソの快進撃、そして日本代表のロシア行き切符獲得を遠くから見るしかない辛さを嫌と言うほど味わったことだろう。

 9月中旬にようやくピッチに戻り、11月4日にセレッソのYBCルヴァンカップ制覇にも貢献したが、ハリルホジッチ監督からお呼びはかからなかった。11月のブラジル(リール)&ベルギー(ブリュッセル)2連戦の日本代表メンバーにも復帰できず、本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、香川の「ビッグ3」とともに、清武もロシア行きの可能性が断たれてしまうのではないかという危惧さえ高まった。

 それでも、本人は焦らず地道に公式戦出場を重ね、パフォーマンスを徐々に取り戻していった。その確かな前進をボスニア人指揮官も認めたからこそ、今回のE-1に満を持して呼び戻したのだろう。メンバー発表会見では「現在見せているプレーよりも、さらに高いものをみせないといけない」と容赦ない要求を突きつけられたが、それを一番よく分かっているのが清武自身である。2014〜2016年に2シーズン過ごしたハノーファーで10番をつけて躍動し、セビージャでも半年と短いながらも世界トップクラスの面々と互角に渡り合った高度な経験値を遺憾なく発揮するのは、まさに今なのだ。

 コロンビア、セネガル、ポーランドという格上揃いのH組に入った日本代表がロシアで大躍進を遂げるよう思うなら、中盤の軸を担うのは、やはりデュエルに強くハードワークのできる山口蛍(C大阪)や井手口陽介(G大阪)、長澤和輝(浦和)のようなタイプの選手たちだろう。

4年前の覚悟を胸に。清武弘嗣は再び日本代表の中心へ

 ただ、11月2連戦の後半に攻めに出たように、攻撃のスイッチを入れられる攻撃的MFは必要不可欠だ。その枠を清武は香川、森岡亮太(ワースラント・ベフェレン)、柴崎岳(ヘタフェ)らと争わなければならない。

 目下、香川はドルトムントで停滞感を打破しきれず、柴崎は負傷離脱中。森岡はチームでは好調だが、いかんせん代表での実績が少ない。こうした面々と今の清武は横一線の状態と言っていい。しかしながら、今回のE-1で傑出したパフォーマンスを示して、日本の勝利の原動力になれれば、風向きは一気に変わる。最近のセレッソではプレースキッカーを丸橋祐介やソウザに譲っているものの、もともとフリーキックやコーナーキックの精度は日本有数のレベルにある。その大きな武器を前面に出すことで、差別化を図ることもできるのだ。

 3月を最後に代表から遠ざかった間、清武は「今の自分は代表選手じゃないんで」と自分に言い聞かせるようにコメントし続けてきた。「代表のことは考えていない」とも繰り返し発言していた。

 だが、ブラジルWのでコロンビア戦(クイアバ)でラスト8分間の出場に終わった後、「4年後は自分がキャプテンマークを巻いてやるという目標が出てきた。そういう自分がピッチに立っている姿を想像して、この4年間を過ごしていければいい」と堂々と口にした言葉は決して消えることはない。もちろん彼自身の中にも深く刷り込まれているはず。その夢を現実にしようと思うなら、数少ないアピールの場であるE-1に全てを注ぐしかないのだ。

 清武が尊敬する長谷部のように周りを的確に動かし、自らも生きるような統率力と責任感を示してくれれば、日本代表は必ずいい方向に進む。2015年大会(中国・武漢)で4チーム中最下位という屈辱的な結果に終わったリベンジを果たすべく、日本屈指のファンタジスタは蓄えてきた底力を今、ここで爆発させてくれるだろう。今大会の日本の命運はこの男にかかっていると言っても過言ではない。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子