12月3日にノルウェーのリレハンメルで開催された、ノルディックスキー・ワールドカップ・ジャンプ女子第3戦のラージヒル。3位で表彰台に上がった高梨沙羅(クラレ)は、「ホッとしたというより、やっぱりやることはまだまだあるという感じ。ただ、大きな刺激をいただいたので、それを力に変えて次からはがんばっていきたいと思います」と話した。


初戦から厳しい戦いとなった五輪シーズンの幕開けも、笑顔が見られた高梨沙羅

 シーズン開幕戦(12月1日)と2日目(12月2日)のノーマルヒル2戦は、微妙な風の条件もあって、ともに4位。昨季は開幕から7戦連続で表彰台に上がり、17戦9勝で4度目のW杯総合優勝を果たしている実績から見れば、3試合目での初表彰台は遅すぎるものだった。

 11月30日の公式練習では1本目に低い飛び出しからヒルサイズ(98m)超えの101.5mを飛び、相変わらずの強さの片鱗を見せたが、2本目が92mと伸び悩むと、予選も92.5mで2位通過。昨季のW杯では4勝して総合3位の実績を持つマーレン・ルンビ(ノルウェー)に後れをとった。

「このジャンプ台は強い追い風や横からの風も吹きますが、それは私だけの問題ではないので……。ここはR(ジャンプ台の傾斜度が変化する部分)が独特で、体を押さえつけられるGを感じにくく、1本目はまだよかったけど、2本目と3本目はRをうまく乗り越えられなくて、踏み切るタイミングが遅れてしまった。空中で左のスキーが上がってこない感じで姿勢がねじれてしまい、それがもったいないと思いました」

 その微妙な狂いが、開幕戦でも出てしまった。

「昨日(の公式練習と予選)はアプローチでRの通過がうまくできず、その反動で踏み切る時に上半身を使うような感じになっていたけれど、そこは修正できたと思います。でも、1本目のテイクオフへの仕掛けが遅れてしまい、あわてて立ったので上半身が跳ね返ってしまうようなジャンプになり、空気抵抗を受けて減速しました。2本目はそこを修正できたけど、やっぱり1本目の名残もあってバランスの悪いジャンプになってしまいました」

 こう話すように1本目は93mで4位。追い風が強くなった2本目は89mを飛んだが、1本目3位のカリナ・フォクト(ドイツ)に0.2点届かず4位。2012年以降、5年連続で上がっていた開幕戦の表彰台を逃してしまった。

「明日はGを意識するのではなく、一連の動作の中でスムーズに(助走路のRを)通過できるように全体の流れを意識したい」と話して臨んだ第2戦では、1本目に94.5mを飛んで3位につけた。ところが、2本目は強い追い風の中で87mしか飛べず、伊藤有希(土屋ホーム)に逆転されて、またしても4位という結果に終わる。

「助走姿勢を自分のポジションに落とすことができれば、ジャンプ台のどんなRでも超えられるので、そこでしっかりGを感じられるか、感じられないかがカギになると思います。その点で今回は、このジャンプ台に適応しきれずに終わってしまいました」

 試合前にこのリレハンメルのジャンプ台について「得意ではないけれど、相性はいいと思う」と高梨は話していた。昨年の開幕戦連勝を含め、過去5勝しているジャンプ台だからだ。だが今回は、相性がよかったとは言えない。結果を見れば第1戦は優勝したルンビに19.5点差をつけられ、第2戦は優勝のカタリナ・アルトハウス(ドイツ)には23.5点差、2位のルンビには19.1点差をつけられる完敗だった。

 かつては、得意ではないジャンプ台で、なおかつ完璧なジャンプができていなくても、力の差が大きかったために勝てていたのだろう。しかし、今年はルンビやアルトハウスが、高梨並みに踏み切りの精度を上げてきたうえに、力強さも身につけてきている。

 その状況を高梨は「全体的に世界のレベルが上がっていることを痛感させられる試合でした。テイクオフの精度や空中の通過の仕方がよくなり、かなり距離を飛んでも着地でテレマークをしっかり入れる選手たちが多くなっている」と話す。結局、最終日のラージヒルでも高梨は3位に入ったとはいえ、優勝したアルトハウスには32.4点差をつけられ、完敗といわざるを得ない結果だった。

「1本目は踏み切りのタイミングを外してしまって、うまく空中につなげられなかったですが、2本目はしっかりと気持ちを切り換えて、いいイメージで臨めました」と振り返ったように、この日の2本目のジャンプは、高梨らしいキレが少し戻ってきていた。

「今回は海外のレベルの高さを感じたので、自分を強く持って次の試合に向けて問題点に集中して取り組んでいきたいと思います。もう少しジャンプ台のGを感じ、テイクオフでスムーズに立ち上がれるようなアプローチをすることと、ジャンプ台に自分の力をしっかり伝えられるようにすること。それにもう少し、キレのある踏み切り動作をできるように練習していきたい」

 こう話す高梨は、悔しさを感じた一方で、ワクワクもしてきたという。

「クロスゲームの中で、テレマークを入れるのが当たり前というような緊張感のある試合が、これからのW杯や平昌五輪まで続いていくと思う。そうなれば周りの人たちも面白いと思うだろうし、注目される機会も増える。女子ジャンプが一丸となって、五輪で注目を浴びるようにがんばっていきたい。その中で自分も、しっかり気を抜かないでやるべきことをやっていきたい」

 かつてはサラ・ヘンドリクソン(アメリカ)という最強ジャンパーに挑戦した高梨。その頃と同じような刺激を、今大会で高梨に勝ったルンビとアルトハウスから感じるのだろう。強敵と呼べる相手が現れ、完璧なジャンプをしなければ足元をすくわれるような状況になったからこそ、新たな戦いの楽しみを感じる世界に踏み込んだ。平昌五輪の金メダルはその戦いの先にある。

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