満島ひかり、”動と静“のギャップが武器に!? 映画、ドラマ、CMで映える中毒性

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 先日閉幕した第30回東京国際映画祭で、蒼井優、安藤サクラ、宮崎あおいらとともに「Japan Now 銀幕のミューズたち」と特集企画を組まれた満島ひかり。言わずもがな、今やこの世代を代表する国民的女優のひとりとして着実に歩を進め続けている彼女は、独特のギャップを武器にしてきた経緯が伺える。

(参考:満島ひかりは敵か味方か? 視聴者参加型ドラマ『監獄のお姫さま』の舞台的面白さ

 2017年、満島はドラマ『カルテット』(TBS系)で、松たか子、高橋一生、松田龍平といった豪華布陣の中、チェロ奏者・世吹すずめ役として、一見ピュアであどけない彼女の心の奥底にある物悲しさを見事に演じきった。その後、終始陰惨な空気が満ちる『愚行録』で演じた田中光子役では、ひとりの少女の希望、そしてひとりの女性の絶望を体現。登場人物たちの数々の愚かな行為の凄まじさもさることながら、彼女の名演は多くの観客にダメージを負わせたものだ。夏に公開された『海辺の生と死』では奄美を舞台に、島尾ミホをモデルとした大平トエ役を演じる。その声に感じる文学的な響きは、島の自然に負けぬ力強さと美しさで、多くの観客たちをスクリーンに引き込んだ。

 満島はこれまでに、『愛のむきだし』(2009)ヨーコ役や、本作と同じく宮藤官九郎脚本『ごめんね青春!』(2014/TBS系)蜂谷りさ役などでも、そのドSっぷりの力の大きさを見せつけてきた。いずれのキャラクターにも共通するのは間違いなく、そのあまりに振り切れたハイテンションであり、もはや見ていて心配になるレベル。しかしそのハイテンションの“動的な演技”があるからこそ、言葉や身振りに頼らない“静的な演技”が生きてくる。これらは現在放送中のドラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)でも見られ、視聴者を楽しませている魅力のひとつとなっている。

 次々と名ゼリフが飛び出してくる本作。特に満島が演じる鬼刑務官・若井ふたば/先生の発する罵詈雑言が“クセになる”といった視聴者の声も多く目にする。「雑居房の雑は雑魚の雑!」や「愚鈍!」、そして小泉今日子ら演じる女囚たちを番号以外で呼称するときの「ババア」や「おばさん」発言。口汚い言葉であっても、そのときのシチュエーションやテンションでニュアンスが変化し、ときに“女囚たち”を蔑み、ときに“女性たち”を奮い立たせているのが面白い。

  次から次に繰り出されるハイテンションでの罵詈雑言ーー。本作で満島は小泉、夏帆、坂井真紀、森下愛子、菅野美穂をズバ抜けて大きな声で引っ張っていく。しかし、劇中で小泉ら演じる女囚たちと触れ合ううちに垣間見えてくる人情深い一面や、とくに江戸川しのぶ/姫(夏帆)の息子である勇介の成長に歓喜する女囚たちの陰で、ひとり顔をほころばせる姿が印象的に映った。本作随一のギャップが魅力的なキャラクターでもあるのだ。その姿を目にしたことを境に、大きな目で送る鋭い視線、女囚たちへの叱責など、そのすべてに愛情すら感じてしまうほど、そのギャップが演じているキャラクターにとてもいい効果を与えている。

 前述したこれまで満島が演じてきた役で見ている限り、その完全なハマりように、「ドSキャラ」や、「テンションの振り切れたキャラ」、そして「高圧的で口が達者なキャラ」などを、彼女が演じる得意なキャラクターのタイプ、あるいは彼女自身へのイメージとして固定してしまいそうになる。ところが、『監獄のお姫さま』でも時折見せている笑顔同様に、今年9月から彼女が起用されたキリンビール「一番搾り」のCMでは、会社帰りの男性たちと屋台で肩を並べ合い、またまったく違う一面を見せている。アツアツのおでんを頬張り、ビールグラスをあおる姿に、思わずもれる「幸せ〜」のひと言。その愛嬌たっぷりの自然な振る舞いと満面の笑みには、思わずこちらも「幸せ〜」と続きそうになってしまうのだ。

 どのキャラクターにも見事にハマる彼女の演技は、いくつものイメージを作り出すが、自在な振れ幅によって、さらにいくつものギャップを作り出している。銀幕に留まらず、ドラマにCMに、まだまだ彼女の姿に振り回されていくに違いない。

(折田侑駿)