さかもと・こういち=1970年9月29日生まれ、東京都出身

写真拡大

ジャッキー・チェンに憧れてスタントマンの道へ。その後、映画監督を志してアメリカへ渡り、スーパー戦隊シリーズの米国版ローカライズ作品「パワーレンジャー」シリーズのスタッフとしてキャリアを積み、2009年公開の映画「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」の監督を務めたことを機に、日本でも活動するようになった坂本浩一氏。キレのあるアクションシーンを中心とした演出の手腕は、特撮ファンからも絶大な支持を集めている。そんな坂本監督に、アクションを演出する際のこだわりや、最終回間近の「ウルトラマンジード」(テレビ東京系)の見どころ、さらに、来年より始動する新ドラマ「木ドラ25『モブサイコ100』」(2018年1月18日[木]スタート、テレビ東京ほか)への意気込みを語ってもらった。

ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊と、日本を代表する特撮シリーズの全てを手掛ける気鋭・坂本浩一監督

■ 「パワーレンジャー」で学んだことは今でもすごく役立っています

──まずは、坂本さんが監督としてデビューするまでの経緯を教えてください。

「9歳のころにジャッキー・チェンの映画を見て、『ジャッキーみたいになりたい』と思ったのが一番最初のきっかけで。そして16歳のときに、香港でも活躍されていた倉田保昭さんのもとに弟子入りして、高校に通いながら約3年間、スタントマンとして活動しました」

――スタントマンのお仕事にとどまらず、監督を志すようになったきっかけは?

「やはり、それもジャッキー・チェンの影響です。ジャッキーは、映画に出演するだけでなく、監督も務めていましたよね。だから、いつかは僕も監督をやりたいなと。それで、監督になるための勉強をするならハリウッドしかないと思い立ち、高校卒業と同時に渡米したわけです。

アメリカでは、アクション監督のアシスタントや、スタントマンのコーディネーターといった立場で、いろんな作品に関わったんですが、そんな中、1993年に『パワーレンジャー』が始まって。日本の特撮ドラマのことが分かっている作り手ということで、知り合いを通じて紹介されて、1994年から15年間、シリーズに関わることになったんです。『パワーレンジャー』では、アクション監督だけでなく、ドラマ部分も含めた監督も務めるようになり、5年目くらいからは、プロデューサーも兼任するようになりました。ですから、『パワーレンジャー』では本当に多くのことを経験させてもらいましたし、そこで学んだことは今でもすごく役立っています」

──そして、映画「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」の監督に抜てきされ、日本でも活動することになります。

「円谷プロダクションの方で、ハリウッド映画のようにスペースオペラ調の、CGを多用した新たなウルトラマンを作りたい、という企画が立ち上がって。ハリウッド的なアクションの撮り方や、ウルトラマンというシリーズの世界観を理解している存在ということで、プロデューサーの方が声をかけてくれたんです。

ウルトラマンは本当に子供のころから大ファンで、近年のシリーズも、日本から取り寄せて見るくらい大好きだったんですよ。そんな中で、もし自分がウルトラマンを撮る機会があったら、アクションものにジャンル分けできるようなウルトラマンを撮りたいと思っていたんです。それで最初に円谷プロと『銀河伝説』の打ち合わせをしたときに、『坂本監督の得意とするところを存分に発揮してください』とおっしゃっていただいたので、思いっきりやらせていただきました(笑)」

――「思いっきりやった」というのは、具体的には、どういった点でしょうか?

「この作品は、地球ではなく宇宙が舞台で、ウルトラマンたちも異世界の巨人ではなく、作品世界の中では“普通の人”というような設定なんですね。だから、従来のウルトラマンにはない、スピーディーなアクションを採り入れました」

──特撮ファンの間では、「坂本監督が手掛けるようになってから、ウルトラシリーズのアクションが変わった」という声も多く聞かれます。

「アクションは一番こだわったところですし、みなさんがそこを認識してくださって、評価していただいているのだとすれば、とてもうれしいですね」

■ 個人的な趣味も含めて、強い女性に憧れるんですよ(笑)

──ファンの間では、アクションシーンを見ただけで坂本監督が演出しているのが分かるくらいに、個性的なアクションは坂本作品の最大の美点だと思うのですが、監督がアクションの演出をつける上で一番こだわっているところは?

「これもジャッキー・チェンからの受け売りなんですけど(笑)、最も大切にしているのは“リズム”です。アクションが単調だと、見ていて飽きちゃうんですね。でも音楽と同じように、動きやスピードに緩急をつけると飽きずに見られるんです。だからアクションを構成するときはいつも、頭の中でそのリズムを計算しながら、いかに単調にならないようにするかに腐心しています。

また、僕は常々、アクションシーンがドラマ部分とシームレスに繋がっていることが、いいアクション映画の条件だと思っていて。中には、ドラマ部分とアクション部分が全然違う世界観で、別の作品に見えるようなこともある。僕は、アクションが付属物ではなく、アクションシーンを前提としながら物語が進行していくという形が好きなんです。スタントマン出身ということもありますが、その“アクションとドラマの共存”を自分のセールスポイントとして、両方のバランスをとりつつ、最終的に、観客のみなさんが『ドラマのあるアクション作品を見た』と思える、そんな作品をつくることが目標ですね」

──もう一つ、坂本監督の作品はほぼ確実に女性キャラのアクションがあるというのも特長ですよね。

「個人的な趣味も含めて、強い女性に憧れるんですよ(笑)。日本はアイドル文化というか、かわいい女の子が人気ですが、海外では、セクシーな大人の女性が魅力的な女性の代名詞になることが多いんです。僕が惹かれるのもそういう女性なので、戦うヒロインというか、男性だけでなく女性から見ても憧れる、かっこいいヒロインが撮りたい、というのは常にありますね」

──ちなみに、坂本監督にとってターニングポイントとなった作品は?

「一番大きかったのは『赤×ピンク』(2014年)という映画です。原作は桜庭一樹さんのライトノベルで、脚本は港岳彦さん。つまり原作者は女性、脚本家は男性、という作品で。撮影前に、出演する女優さんたちを集めて、『作品について言いたいことを全て言い合おう』と意見交換をしたときに、桜庭さんの原作を男性目線で読んだときと女性目線で読んだときの感想がかなり違っていたんですね。その瞬間、男性と女性、それぞれが感じているヒロイン像の違いが明確に見えたような気がして。そこから、男性も女性も関係なく、誰もがかっこいいと思えるヒロインのキャラクターを作っていこう、という作業が始まったというか。『赤×ピンク』では、そういった登場人物のキャラクターの造形の仕方を学んだような気がします」

■ 「モブサイコ100」では濱田龍臣くんの違った一面を引き出せたら

──坂本監督は、「ウルトラマン」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」という日本が誇る特撮シリーズを全て手掛ける稀有な存在だと思うのですが、それぞれ撮り方の違いなどはあるのでしょうか。

「もちろん自分の中には明確に違いがあるんですが、『ウルトラマンはこうじゃなくちゃいけない』というような決め事は一切なくて。それよりも、『どうすればそのヒーローがかっこよく見えるのか』、そこが一番重要だと思っています。例えばウルトラマンなら、神々しい存在感、巨大感。あとは光線技を放てるというのも大きな特長ですよね。そういった、それぞれの特長をかっこよく見せるための差別化はしています」

――ウルトラマンと言えば、メイン監督を務めている「ウルトラマンジード」がいよいよクライマックスを迎えます。

「『ジード』の発端になった、ウルトラマンベリアルと、ライバルのウルトラマンゼロというキャラクターは、僕が最初に撮った『ウルトラ銀河伝説』から生まれたキャラなので、僕にとってはすごく思い入れのある作品で。ベリアルの息子が主人公という話に、すごく運命的なものを感じているんです。それと、撮り方については、今まで僕が撮ってきたウルトラマンシリーズとは敢えて少し作風を変えて撮っていて。いろんな意味で、かなり思い入れの強いウルトラマンになりましたね。

さらに言えば、乙一さんがシリーズ構成に参加されたことで、従来の特撮作品にミステリー要素やSF要素が加わってユニークな世界観が確立されたと思うんです。最終回に向けてどんでん返しもあり、さらに盛り上がっていきますし、テンションを落とさずに突っ走っていくので、最後まで主人公のリク(濱田龍臣)の、そして彼が変身するジードの成長を見守っていただければ」

──そして来年からは、深夜ドラマ「モブサイコ100」で監督を務められます。坂本監督がアクションがメインではない作品を手掛けるということで、早くも注目が集まっていますね。

「元々、原作の漫画が好きなので、その原作の世界観を保ちつつ、どう実写ドラマとして落とし込んでいくかが勝負どころですね。格闘アクションというジャンルではありませんが、超能力バトルのシーンやコメディーの要素もあるので、そういう意味では、いろいろなことが試せそうですし、僕自身が楽しもうと思っています。

『ジード』に続いて龍臣くんが主演で、本当に今年1年ずっと彼と一緒なんですよね(笑)。ただ、主人公のモブは『ジード』のリクとは全く違うキャラなので、彼の違った一面を引き出せていけたらと思います」

──今後は、「モブサイコ100」のような連続ドラマもやっていきたいというお気持ちがあるんでしょうか?

「もちろん。壁ドンが出てくるような恋愛ものでも大丈夫ですよ(笑)。僕はアクションが得意というだけで、アクション以外は撮りたくないというわけではないんです。全くアクションのない作品でも、オファーをいただければどんどん挑戦してみたいですね。

そういえば、僕は日本で活動を始めて8年経つんですが、まだ時代劇を撮ったことがないんですよ。子供のころ、千葉真一さんや真田広之さんが出ていたアクション時代劇が大好きだったので、そういう作品もいつか撮ってみたいです」(ザテレビジョン)