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手の届くプライスとフルカスタムを両立した時計



ここ2、3年、2万円から5万円の価格帯に面白い時計メーカーが増えてきた。お手頃な価格にもかかわらず、デザインは個性的で作りも良いのが、こういった「新世代メーカー」に共通する特徴だ。「メイド・イン・ジャパン」を打ち出した日本のノットや、アメリカのダン・ヘンリー、そして前号で紹介したスイスのクロッカーズなどがその最右翼だろう。加えて新世代の時計メーカーでもっとも注目を集めるメーカーのひとつも、10月に日本上陸を果たした。それが2014年創業のアンダーンである。

創業者は、香港で高級時計のカスタマイズを行っていたマイケル・ヤン。彼は様々な時計の改造を手掛けるうちに、もっと多くの人に腕時計のカスタマイズサービスを提供できないか、と考えるようになった。

普通、時計のカスタマイズには途方もないコストがかかる。仮にコストを抑えたとしても、製品管理が面倒すぎる。そこで多くのメーカーは、ストラップのバリエーションを増やすぐらいでお茶を濁してきた。対してアンダーンは、ストラップはもちろん、文字盤や針、ケースの色など、あらゆる部品に手を入れられる。

クラシカルなクロノグラフの「アーバン」を例に挙げると、ベルトは40種類、文字盤は24種類、ケースは4種類、針は27種類から選べるという。しかも文字盤にはイニシャルを、裏蓋には刻印や好きな画像を入れられるというから高級時計メーカーのセミオーダーサービス以上だ。筆者が見た限りで言うと、アンダーンのカスタマイズサービスは、時計業界のなかでもっとも充実しているのではないか。

これだけ多彩なメニューを提供できる理由は、ネットでしか販売しないためである。

仮に店先でこういうカスタマイズサービスを提供するなら、接客に時間がかかりすぎてしまう。腕時計のカスタマイズがせいぜいストラップ程度に留まる理由だ。対してネットならば、顧客からの注文を受けるだけで済む。またカスタム工房から始まったアンダーンは、時計のケーシング、つまり組み立て作業をすべて社内で行っている。部品は他社から買ってくる時計メーカーは少なくないが、組み立てを自社で行うメーカーは、この価格帯では珍しいのではないか。注文書を見ながら、時計職人がひとつひとつ組み立て作業を行うため、顧客からの注文に柔軟に応えられるというわけだ。それを3万円台から提供できるというのも、ネット専売の強みと言える。

もっとも、すべてをオンラインで完結させるサービスの場合、画像と実際の製品に違いがある場合が少なくない。筆者も、時計ではないが、ウェブ上で行うカスタマイズサービスには困らされた経験がある。そこでアンダーンが用意した実物の文字盤やケースなどをチェックさせてもらったが、オンライン上の画像と、実物の色や形にほとんど違いはなかった。つまりオンラインで注文しても、イメージ通りの時計ができあがるはずだ。

また生産スピードが早いのも、アンダーンの大きな魅力である。通常のカスタマイズでは、注文から納品まで10日程度。裏蓋にプリントなどを施した特別なカスタムでも、2週間程度で完成するというから、そのスピード感たるや、普通の時計メーカーとはまったく違う。

仮にカスタマイズをしなくとも、アンダーンの時計は良くできている。写真で掲載したのは、クロノグラフのアーバンである。搭載するのはセイコーインスツル製のメカクォーツクロノ。普通のクォーツクロノは、リセットボタンを押すと、モーターがクロノグラフ針を元の位置に戻す。しかしその人工的な動きを好まなかったヤンは、リセットボタンを押すとクロノグラフ針が機械的に戻るメカクォーツクロノを採用した。

UNDONE

THE URBAN KILLY

価格:3万1800円〜

価格はクォーツクロノより高いが、あえてより機械的なムーブメントを選んだあたりに、創業者のこだわりがうかがえよう。機械的に針を戻すだけあって、感触も実に小気味よい。正直3万円台のクロノグラフとは思えないぐらいだ。またケース素材も、医療用のステンレスである316Lを使っているため、金属アレルギーが出にくい。

正直筆者は、時計のカスタマイズに距離を置いてきた。というのも、注文する人間のセンスが問われるし、そもそも値段が高すぎたからだ。

しかしアンダーンが提供するカスタマイズサービスは、画面上で確認しながらカスタマイズを進められるし、価格も妥当だ。もしあなたが自分だけの1本を欲しいならば、アンダーンのウェブサイトには、一度アクセスすることをお勧めしたい。

広田雅将(ひろたまさゆき):1974年生まれ。時計ライター/ジャーナリストとして活動する傍ら、2016年から高級腕時計専門誌『クロノス日本版』の編集長を兼務。国内外の時計賞の審査員を務めるほか、講演も多数。時計に限らない博識さから、業界では“ハカセ”と呼ばれる。

※『デジモノステーション』2018年1月号より抜粋。

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text広田雅将