JTは厳しい経営環境を乗り越えられるのか(画像はJTの公式ホームページより)

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日本たばこ産業(JT)は2017年11月21日、次期社長に、欧州子会社JTインターナショナル(JTI)の寺畠正道副社長が就任するトップ人事を発表した。この発表時点で51歳、執行役員社長に就任する18年1月1日時点で52歳と、1985年の民営化後、最も若い社長誕生となる。国内市場が縮小する中、海外事業で実績を積んだ若手を起用し、厳しい経営環境を乗り切りたい考えだ。

寺畠氏は執行役員社長に就いた後、2018年3月27日に開催される株主総会後に代表取締役社長に就任する。小泉光臣社長(60)は代表取締役を退き、会長や顧問にも就かない。

海外駐在は通算12年

民営化後に入社した世代で初めて社長に就く寺畠氏。1989年に京都大学工学部を卒業後、JTに入社。秘書室長、経営企画部長など順当に出世コースを歩み、2011年に執行役員、13年にJTI副社長に就いた。英国やスイスなど海外駐在は通算12年に及ぶ。

小泉氏は新社長発表記者会見で、寺畠氏について「人格が優れ、グローバルセンスがある」と絶賛。「年齢は念頭になかった」とした。当の寺畠氏も「海外の競合には私より若い社長もいる。年齢を意識したことはない」と語った。

JTの海外事業は、寺畠氏との歩みと重なる。1999年、「ウインストン」「キャメル」というグローバルブランドを持つ米RJRナビスコの米国外たばこ事業買収プロジェクトに参画。当時、日本企業によるM&Aとしては最高額となる約9400億円の買収を成功させ、JTI設立につなげた。米RJRナビスコの成功体験がなければ、2007年に約2兆2000億円を投じた英ギャラハー買収はなかった。

2016年12月期の連結売上収益は2兆1433億円、営業利益は5933億円だが、いずれも海外事業が過半を占めている。今後も「海外には開拓余地がある」とみて、買収による規模拡大を進める方針だ。

たばこ販売本数は20年で半減

一方、国内市場に目を転じると、好材料はない。日本たばこ協会によると、2016年度の販売本数は1680億本と、この20年で半減。約6割を占めるJTのシェアは揺るぎないが、パイの縮小は続く。

足もとでは加熱式たばこへの切り替えが急速に進んでいるが、JTの「プルーム・テック」は出遅れている。同分野で先行する米フィリップ・モリス・インターナショナルの「アイコス」、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「グロー」に攻め込みたい考えで、寺畠氏は「戦いは始まったばかり。商品開発への投資を継続する」と意欲的だ。

医薬、加工食品というたばこ以外の事業もあるが、いずれも営業利益は100億円未満と規模が小さく、どう育成していくのかも課題となる。

「激しく変化する事業環境の中、若い世代にバトンタッチすることで、JTグループは更なる持続的成長ができるものと確信している」。小泉氏はこんなメッセージを発表した。寺畠氏は期待に応えられるのか、注目される。