北朝鮮が11月29日、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射試験を再開した。中国の特使派遣も成果がなく、今冬にも朝鮮半島情勢は危機を迎えるであろう。台湾海峡の軍事バランスも大陸優位に傾いている。

 日本はこれから危機の時代に突入する。

 短期の北朝鮮の核ミサイル問題、中期の朝鮮半島と台湾海峡の動乱、長期の軍事大国中国の台頭と統一朝鮮の出現といった脅威が、今後数十年にわたり連鎖的に生起するであろう。日本には長期的視野に立った防衛戦略が求められている。

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1 短期の脅威: 北朝鮮の核ミサイル問題

1.1 北朝鮮の能力と脅威の度

 北朝鮮の保有するミサイル発射機数はミサイル数、休戦ライン沿いの砲弾・ロケット弾については、米国防省は2012年時点で、発射用ランチャー数は、日本を狙うノドン級で50基以下、射程が3200キロ程度のムスダン級で50基以下、改良型スカッドその他で計100基以下とみている。

 またミサイル数については、米国の北朝鮮分析専門機関のウェブサイト「38ノース」の見積りによれば、ノドン級が200〜300発以上、スカッド級が500〜600発以上、その他を合わせ、すでに約1000発は保有しているとみられている。

 各発射ランチャーから同時連続的に50発から100発程度を北朝鮮の各所、一部は海から発射してくれば、日米韓のミサイル防衛システムでは全数撃破はできず、打ち漏らしが出てくると予想される。

1.2 中露の対応と外交と経済制裁の限界

 中国の戦略的利益は米韓軍との地上接触阻止、難民の流入と国内混乱防止にあり、北朝鮮の核保有はそれ以下の脅威でしかないとみられる。中国は通常戦力のみでも北朝鮮を占領支配できる。

 ロシアのウラジーミル・プーチン政権にとっては、ウクライナ東部の支配と経済制裁解除、次いでシリアのアサド政権維持が最大の戦略的課題であり、そのため米軍をアジアで拘束するのが利益となる。

 そのためロシアは2013年頃から北朝鮮に対する軍事支援に乗り出した。

 中露の協力なしには経済制裁の効果は上がらない。中国の影響力にも限界があり、今年10月のドナルド・トランプ大統領の北京訪問時の米中首脳会談後、習近平国家主席から平壌に特使が派遣されたが、核・ミサイル開発問題では進展はなかった。

1.3 米国の採り得る軍事的、準軍事的選択肢とその可能性

 核使用局地戦、通常戦力局地戦、核とミサイル・休戦ライン沿い火力の制圧、ソフトキル、情報戦主の斬首作戦などが考えられるが、可能なのは斬首作戦のみであろう。

 なぜなら、他の軍事的選択肢では北朝鮮による日本や韓国に対する核・化学ミサイルによる反撃のおそれが大きいためである。地下に隠された移動式のミサイルを発射前に発見し制圧するのは、米軍でも極めて困難とみられる。

1.4 今冬が軍事・準軍事行動の最後の機会

 その理由として、以下の点が挙げられる。

(1)来春にはICBM完成のおそれがあるため、完成前に破壊する必要がある。
(2)経済制裁の効果が出るには今冬まで待つ必要がある。
(3)冬季は荒天が多く、北朝鮮側の弾道ミサイル発射が制約を受ける。

(4)情報収集上は、積雪時の屋根の融雪、車の轍跡などから活動状況を把握しやすい。
(5)中国は党大会から間がなく、露は来年3月に大統領選挙を控えており、中露の対応力に制約がある。

 もし、米国が今冬に行動に出て北朝鮮の核・ミサイル能力を奪うことができなければ、北朝鮮の核保有は実質黙認に至る可能性が大きい。

 そうなれば、金正恩は、来年の「新年の辞」などでICBMの完成を公式に宣言し、米国と国際社会に北朝鮮を核保有国として認めることを条件に交渉を呼びかけることになるであろう。

 交渉では、米韓軍事演習の中止、在韓米軍の撤退、米韓条約破棄、米朝平和条約締結などが提案されるとみられる。

 韓国には核恫喝も交えつつ政治的な平和統一が提唱され、文在寅(ムンジェイン)政権に南北統一の大統領選挙などの呼びかけなどがされるかもしれない。

 このようなプロセスが実現すれば、金日成が失敗した北主導の朝鮮半島の統一が達成されることになる。

2 中期の脅威

2.1 朝鮮半島の動乱

・北が核保有し黙認された場合次のシナリオが予想される。

(1)韓国は北の核恫喝に屈し北主導の半島統一へ
(2)韓国も核保有し半島に局地的な相互核抑止態勢が成立
(3)(1)(2)いずれでも在韓米軍は撤退

 韓国が核保有せず北朝鮮の核保有が事実上黙認されるとすれば、米国の韓国に対する核の傘の信頼性は半ば失われることになる。韓国の指導層も国民も動揺し、米国は当てにできないとみて、北朝鮮の核恫喝に屈する恐れが高まる。

 韓国が北朝鮮の恫喝に屈することを拒否し、自由と独立を守るため自衛目的の核保有に踏み切ることも考えられる。その場合韓国は、NPTから脱退することが必要となり、米中露などの核保有国から阻止の圧力がかかると予想される。

 米国は、北朝鮮に対する核抑止力の局地的均衡回復と、紛争を抑止し自国の直接軍事介入のおそれをなくするため、韓国の核保有を黙認するかもしれない。

 その場合は、NPT態勢維持のため、韓国の核保有が公にならない範囲にとどめる可能性が高い。能力があるともないとも明言しないイスラエル型の保有になる可能性がある。

 中露は韓国の核保有の動きを警戒するとみられるが、朝鮮半島内の局地的な相互核抑止態勢の維持は、他の大国の干渉と南北間の武力紛争を抑止するという観点から、米国と協議のうえ在韓米軍撤退を条件に黙認する可能性がある。

 韓国国内世論では過半数が核保有に賛成であり、韓国には投射手段も含め核戦力保有の潜在能力もある。

 ドナルド・トランプ大統領の訪韓時には、韓国が開発する弾道ミサイルの弾頭重量の制限が撤廃されることになり、韓国は弾頭重量が2トン以上の「怪物」弾道ミサイルの開発を開始することになった。

 韓国は既に国産の大型潜水艦の開発を進め、巡航ミサイルを搭載しているが、2020年頃にはこれに国産の弾道ミサイルを搭載することを目指している。

 韓国がプルトニウム抽出技術を持っていることは明らかであり、原発大国でもあり、核弾頭製造の潜在能力も高い。

 ただし韓国が核保有に至った場合、ナショナリズムが過度に燃え上がり、在韓米軍撤退から反日米、半島統一に走り北の独裁体制に取り込まれるおそれもある。

 逆に過度なナショナリズムに走らず、安定した政治が続き、日米との良好な関係が維持されれば、長期的には、韓国の自由で開かれた社会と経済の優位性を生かし、北朝鮮を変質させ韓国主導の統一が可能になるであろう。

 北の核保有能力が力で奪われる場合は次のようなシナリオが考えられる。

(1)中露が介入し北を米韓と分割占領
(2)米韓軍が北上し大半を占領、中朝国境に緩衝地帯を創る
(3)米韓は北の一時占領後撤退、北の体制は温存

 米韓軍が休戦ラインを超えて北上した場合、北の体制崩壊に至る前に中露は介入する可能性が高い。しかし両国とも米軍との直接の戦闘は核戦争にエスカレートする恐れがあり、あくまで回避しようとするであろう。

 北朝鮮の核弾頭、核関連施設、弾道ミサイル、化学兵器などの接収も米中露の共通した狙いであろう。

 これらの必要から、米国と中露は米軍が行動するに先立ち、何らかの占領地域や接収責任区域などについて協議し了解に達している可能性が高い。米中、米露首脳会談でも重要議題になっているであろう。結果的に北朝鮮は分割占領されることになろう。

 その場合も、米韓の力の行使が迅速かつ圧倒的であれば、中朝国境沿いにわずかの非武装緩衝地帯を残し米韓が半島をほぼ全面占領することになろう。中露は難民の流入阻止のため国境沿いに軍を展開するであろう。

 米国の意図が体制転覆ではなく、北の核・化学・弾道ミサイルなどの能力を奪うことにあれば、一時的に占領しても目的達成後撤退する可能性もある。

 その場合、残された北の指導部は集団指導体制になり、米朝平和条約締結に向けた交渉も始まり、長期には韓国主導の半島統一に動くとみられる。

2.2 台湾海峡の動乱

(1)中国が台湾を政治的経済的に屈服させ平和裏に併合
(2)中国が武力攻撃、米国は間接支援に留まり、台湾は抵抗するも屈服
(3)中国が武力攻撃、米国は軍事力派遣、台湾勝利

 などのシナリオが考えられる。

 今年の『防衛白書』は、次のように述べ、中国の動向に強い警告を発している。

 「中国は、周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での軍事活動を阻害する非対称的な軍事能力(いわゆる「アクセス(接近)阻止/エリア(領域)拒否」(「A2/AD」)能力)の強化のほか、昨今、実戦を意識した統合運用体制の構築などを念頭に、大規模な軍改革に取り組んでいるとみられる」

 「また、中国は、東シナ海や南シナ海をはじめとする海空域などにおいて質・量ともに活動を急速に拡大・活発化させている」

 「特に、海洋における利害が対立する問題をめぐっては、力を背景とした現状変更の試みなど、高圧的とも言える対応を継続させ、自らの一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢を継続的に示している」

 今年10月に開かれた中国共産党第19回全国代表大会での習近平総書記の報告では、大会の主題が「初心を忘れず、使命を深く胸に刻み、中国の特色ある社会主義の大旗を高く掲げ、小康社会を全面的に建設し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取り、中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現のために怠りなく奮闘すること」にあると、その冒頭で高らかに宣言している。

 そのための基本戦略として安全保障面では、「総合的な国家安全観の保持」「党の人民軍隊に対する絶対的な指導力の堅持」「”一国両制”の堅持と祖国統一の推進」を掲げている。

 特に「二つの百年」という目標の実現が中華民族の偉大な復興戦略のキーとなることを強調している。

 「二つの百年」とは、現在から2020年までの間に小康社会の全面的建設に決定的に勝利し、その後の200年は「社会主義現代化国家の全面的建設」を目指すとしている。

 その中で2020年から2035年の第1段階では、「社会主義の現代化を基本的に実現」する。

 2035年から今世紀中頃までの第2段階では、「社会主義の現代化強国の建設」を目指し、中国を「総合国力と国際的影響力において世界的な指導国家にする」としている。

 これに連動し軍建設については、2020年までに機械化、情報化を大幅に進展させ戦略能力を向上させる。2020年から2035年の間に国防と軍隊の現代化を基本的に実現し、今世紀中ごろには人民軍隊を全面的に世界一流の軍隊にするとしている。

 さらに台湾との両岸政策については、台湾問題を解決し祖国を統一することは中国の人々の共通の願いであるとともに、中華民族の根本的利益がここに存するのであり、中国が「両岸関係」の政治的基礎と位置づけ、「一つの中国」を体現しているとする「92共識」を体現することが、両岸関係の平和的発展の基礎になるとしている。

 「両岸は一家であるとの理念を持ち」、両岸の文化経済交流を拡大し、台湾同胞に「大陸同胞と同じ待遇を与え、精神の一致を促進する」と表明している。

 これは両岸の経済文化交流を通じて台湾国民の大陸への心身両面での同化を進め、その独立心を削ぐことを狙った長期戦略の表明と言える。

 他方では、「我々は国家の主権と領土の完全性を堅固に維持する。国家の分裂という歴史的悲劇を決して繰り返させない」と、台湾併合への意思を鮮明にしている。

 さらに、「我々は堅固な意思と十分な信念をもっており、いかなる形の”台湾の独立”という国家分裂の策謀をも挫く能力を持っている。我々はいかなる者、組織、政党であれ、いついかなる形態であれ、一片の領土たりとも中国から分断させることは決して許さない。」と、台湾独立への動きを決して許さないこと、特に台湾内部はもとより外部からの干渉も一切許さないとの意思を強調している。

 台湾国民の若い世代を中心とする独立運動の高まり、それに連動した、米日などの外部勢力による台湾独立支援を強く警戒し封じ込めようとする習近平指導部の強固な意図がうかがわれる。

 中台間の軍事バランスは、今後人民解放軍の現代化に伴いますます大陸優位に傾いていくと予想される。

 米国と台湾の軍事専門家は、両岸の軍事バランスは2020年代の前半には、台湾本島への海空侵攻が可能なレベルにまで台湾側に不利になるとみている。

 台湾は大陸の軍事的威圧の下、経済文化面で平和裏に大陸に同化され独立を失うのか、ある時期にそれに抵抗し大陸からの武力攻撃の危険を冒し独立を求めるのかという岐路に、2030年頃までには立たされることになるとみられる。

 その際の台湾をめぐる米中の軍事バランスにより、米国の対応は基本的に決まってくる。米国が劣勢なら台湾は大陸の侵略に抵抗できず武力併合されることになる。

 米国が中国との軍事衝突のリスクを冒しても、台湾を支援すれば台湾に勝利をもたらし、大陸との全面戦争になることなく介入目的を達成できると判断すれば、介入することになろう。

 中台紛争時には我が国の尖閣諸島、南西諸島にも戦火が拡大するおそれは大きく、日本も軍事面での台湾支援が自国の防衛上も欠かせないものとなろう。

3 長期の脅威

3.1 軍事大国中国の台頭

 上記の今年の党大会での習近平報告、近年の朝鮮半島情勢、台湾情勢などから、以下の趨勢は今後も避けられないとみられる。

 習近平国家主席の長期独裁体制のもと、中国の強大国建設路線と海洋覇権拡大の動きは続く。イデオロギー面での締付け、国内の民主派、少数民族弾圧も経済社会面での共産党の統制・介入も強まる。

 ポスト習近平時代が来ても、共産党独裁体制が続く限り、長期的な中国の軍事力強化と覇権拡大は止まらない。

 中国と米国とのアジア・太平洋での覇権争奪は長期的に激化し、2035年頃までに台湾海峡、朝鮮半島は動乱に巻き込まれる可能性が高まる。その際に日本は米国以上に深刻な安全保障上の危機に陥るであろう。

3.2 中国の将来

(1)民主化運動が激化し共産党独裁崩壊、少数民族独立、軍事脅威消滅、難民発生
(2)中国共産党独裁が続き日台越比などと紛争生起、力の限界、米国の支援、国際的孤立もあり敗北、体制崩壊の引き金に
(3)米軍の介入を抑止できる戦力を整備し、周辺国との紛争に勝利、各個に撃破し西太平洋の覇権確立

3.3 統一朝鮮の台頭

 長期的には以下の統一シナリオが考えられる。

・韓国主導での統一:

(1)韓国が自ら対北核抑止力を保有し、日米との友好関係も維持しつつ北と長期に対峙し、優勢な経済力、技術力、自由で開かれた社会の強みを生かし北の内部崩壊を促し、政治統合を果たす場合

(2)(1)と同様だが、ナショナリズムが高まり、日米との関係が悪化する場合

(3)(1)と同様だが、民族問題、領土問題を巡り中国との関係が悪化し紛争に至る場合

・北朝鮮主導での統一:

(1)韓国併合後その経済力、人口、技術力を全面動員し、核ミサイルを持った強大な軍事独裁大国を建設し周辺国を威嚇し覇権拡大へ

(2)覇権拡大が対馬海峡に向かい日本と紛争が起きる場合

(3)覇権拡大が中国に向かい中朝紛争が起きる場合

 韓国が独自の核抑止力を保持し、北の核恫喝に屈することがなければ、韓国は長期的に経済、社会の発展成熟の優位性を生かし、韓国主導の統一ができよう。しかし統一後のナショナリズムをコントロールできなければ、日本や中国と対立する可能性が高まる。

 南北を合わせた軍事力の強大さを考慮すれば、過剰な軍事的自信が対外的な冒険主義や軋轢につながるおそれは否定できない。

 日米中など関係大国との融和外交と適切な規模と能力の軍事力の保有に、統一後の韓国が進路をとるように周辺国が協力して誘導することが望ましい。

 その際に、関係大国が統一韓国の中立を保障し相互に干渉を控えることを保障する政治的外交的な枠組みの構築が必要となろう。

 北主導の統一もあり得るが、大量の難民が発生し、中国、米国、日本などに流入するおそれがある。

 武装難民も含まれる可能性が高く、各国の入国管理態勢強化と国内治安維持、難民受け入れ態勢整備が求められる。難民の保護、輸送、受け入れなどについての国際協力も必要になる。

 北が半島を統一すれば、現在の休戦ラインの南北対峙が対馬海峡で再燃することになる。しかも対峙する相手は人口7000万人の独裁体制下の核大国となる。

 今年の『防衛白書』によれば、南北朝鮮の地上兵力は北が102万人、南が49.5万人である。統一朝鮮の地上兵力の規模は縮軍をしても100万人は超え、予備役も少なくとも500〜600万人の規模に上るであろう。

 独裁体制下で韓国の先端技術力が全面動員されれば、通常戦力の近代化、情報化も一気に進み、軍需産業の生産能力も質量ともに大幅に向上するとみられる。

 このような軍事大国に日本は第一線で対峙することになることを予期しなければならない。日米同盟が維持されても、日本の防衛態勢は現在の韓国に倍加するレベルに引き上げなければならなくなるであろう。

 統一朝鮮では徴兵制と全面動員態勢が維持強化されるとみられるが、少子化の中その軍事圧力に対抗するには、日本でも徴兵制をとらねばならなくなるであろう。

 韓国主導で統一がされても、日米との関係が悪化し、韓国が武装中立路線をとれば、統一朝鮮ほどにはならないかもしれないが、基本的には同様の対峙状況になる可能性がある。

 いずれにしても、日本と米国、台湾、欧州、豪州、インド、東南アジアなどとの軍事、外交面での協力関係も、今よりもさらに強化しなければならない。

 集団的自衛権の行使の在り方についても、より多くの国との多角的な協力関係を具体化し深化させねばならない。

 中朝が友好関係を維持すれば、日本への軍事的圧力は一層高まることになる。日本は南西正面と対馬海峡の2正面で、厳しい軍事的対峙状況に立たされることになる。

 しかし、中朝間には領土問題、民族問題もあり、対立要因を抱えている。この点に、中朝離間を図る余地があると言えよう。

 ロシアの中立的姿勢を維持するための外交努力も重要になる。極東ロシアの経済開発協力など何らかの妥協も必要になるかもしれない。

4 日本への影響と日本の対応

・短期的:

 米韓と協力し北朝鮮に最大限の圧力を加えて北を弱体化させるとともに、米国の軍事的選択肢にも備えるしかない。特に北のミサイル攻撃に対するミサイル防衛、民間防衛態勢の整備、対特殊部隊攻撃、対サイバーなど非対称戦への備えが重要である。

・中期的:

 台湾防衛への協力が最重要課題である。南西諸島も朝鮮半島も台湾が中国の支配下に入れば防衛は困難になる。日本としても台湾関係法を制定し軍事援助の可能な態勢をとる必要がある。

 日本と体制と価値観を共有する台湾の防衛は、地政学上も歴史的つながりの面でも、米国以上に日本にとり死活的問題である。

 台湾の日本にとっての戦略的価値を踏まえ、台湾の大陸への実質的な吸収、武力統一を阻止するため、軍事面を含めた最大限の支援策を日本はとらねばならない。

 北主導で半島が統一された場合の脅威度を考えれば、ミサイルなどの反撃の脅威はあっても、いま北朝鮮から核能力を奪う方がリスクは少ない。現在は米韓との協力に最大限尽力すべきであろう。

 米国が北の核保有を黙認することになれば、日本は韓国とともに自ら核保有することを米国に認めさせるべきである。

 日韓と北朝鮮三者間の局地的な相互核抑止は、北と韓国の2国間よりも安定する。米国は北の核を黙認しながら日韓に自衛のための核保有を認めないなら、いずれ韓国、さらに日本は共産勢力に組み込まれ西太平洋の覇権を失うか、それを阻止するために大規模な軍事介入を余儀なくされることを覚悟すべきであろう。

 同様に、台頭が予想される軍事大国中国に対しバランスオブパワーを維持するためには、日韓のみならず台湾の核保有も必要となる。ただし台湾の核保有は中国の侵攻の口実になるため、秘密裏に行わねばならない。

 当面は、米国の核の傘の信頼性増大のための具体的な施策と台湾の通常戦力増強近代化が必要である。日本もそれに協力できる態勢をとり、最大限の支援を行うべきであろう。

筆者:矢野 義昭