“夢”と“現実”はどこで折り合いをつける? 『先に生まれただけの僕』櫻井翔が示した、教師の立場

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 部活動を活発にするために、外部からの顧問を雇った京明館高校。そんな中、新たに勃発した問題は、プロ棋士になりたいと将棋の勉強に励み、学業の成績が急降下した生徒の登場だ。学校は勉強を教えるだけの場所ではないという側面によって生まれる、一種のジレンマと向き合ったのが、2日に放送された『先に生まれただけの僕』第8話だ。

(参考:学園ドラマ、“変化球”で社会問題描くのがトレンドに? 『明日の約束』と『先に生まれただけの僕』の新しさ

 0.1%しか成功しないプロ棋士の世界を目指す、特進クラスの生徒・大和田。塾もサボり、ひたすら将棋に打ち込んでいた彼に、厳格で安定志向の父親(升毅)は猛反発。それには鳴海(櫻井翔)をはじめとした教師たちも「夢を諦めさせることも応援することもできない」と頭を抱えてしまうのである。

 ここでふと、先週のモヤモヤした結末となったエピソードを思い出した。同じく特進クラスの優秀な女子生徒が、幸せな家庭を作りたいという夢を追うために大学進学を諦めて、年上の男性と卒業後に結婚することを思い留まらせたのである。社会の右も左もわからない生徒が、夢を追う将来を選ぼうとする。今回と前回は、その意味では共通していたが、鳴海をはじめ教師が出した結論はまるっきり逆のものとなった。

 鳴海が今回、大和田に提示したのは、プロ棋士になるリミットである「21歳で奨励会入りを果たす」ということが叶わなかったときは、そこから大学受験をして、人生をリスタートさせるというもの。いわば「生徒」と「親」それぞれの望み、そして「夢」と「現実」の折衷案だったのである。夢のリミットが明確なことと、その下地がしっかりと備わっているということはあるにしても、先週の女子生徒にも今回のような適切な折衷案は少なからずあったのではないかと、改めて思えてしまうのである。

 とはいえ、「親の気持ちを考えたことがあるか」と訊ねられた鳴海は、教師の立場を「この子たちに希望を持たせてやること」だと語る。「勉強や社会の現実やルールを教えてあげることも、希望を持たせるためにやっているんです」。サラリーマン校長が学校改革を行いながら、人生の先輩として生徒と向き合っていくというこのドラマの軌道に、しっかりと回復させた、モヤモヤを吹き飛ばすエピソードになったのではないだろうか。

 生徒とのメインエピソードの狭間で、サイドエピソードの描きこみもバランスが良い。鳴海と松原(多部未華子)の関係の危うさに、立ちはだかる後藤田(平山浩行)の存在。他の教師たちのコミカルなやり取りに、加賀谷(高嶋政伸)は家庭の悩みを綾野(井川遥)に相談するなど、程よく終盤への伏線として繋げていく。

 しかも、面談に向かう鳴海たちが廊下を歩く場面で仰々しいスローモーションにする演出や、次回へと続く形のエピローグなど、これまでになかったような演出が目立った。というのも、今回は『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)や『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)で登板してきた鈴木勇馬の演出回。スピード感があって、きちんとまとめられている彼の演出には、ドラマ作りの卓越したセンスを感じる。

(久保田和馬)