あべのハルカス近鉄本店(大阪市阿倍野区)の10月の既存店売上高は前年同月比2割増を記録した(記者撮影)

大阪南部や奈良を地盤とする近鉄百貨店の基幹店舗「あべのハルカス近鉄本店」(以下、近鉄本店)。地上300mの日本一の超高層ビルに入居し、「売り場面積は日本最大」と鳴り物入りで開業したこの店舗が、ここにきて活況を呈している。

今年10月の近鉄本店の売上高は前年同月比で21.1%増と、百貨店業界の中では異例ともいえる伸びを見せた。近鉄百貨店のIR(投資家向け広報)担当者は「今までに見たことのない数字で、びっくりしている」と驚きを隠せない。11月については現時点で発表されていないが、20〜30%増で着地したもようだ。

免税売上高は1割程度にすぎない

ライバルであるほかの百貨店と同様に訪日客需要が旺盛で、近鉄本店の10月の免税売り上げは前年同月比で約8倍と大幅な伸びを記録。一見すると訪日客需要が牽引役にも思えるが、実は近鉄本店の売上高において、免税売り上げが占める割合は1割程度にすぎない。

最大の牽引役は地元客だ。近鉄本店の各フロアを観察していると、中高年層の女性、いわゆる「大阪のおばちゃん」や若い女性、高齢の夫婦など幅広い層の顧客がひっきりなしに行き来しているのがわかる。

10月から気温が低下したこともあり、コートやジャケットなど冬物衣料を買い求める地元客が増加。ここに訪日客需要が加わり、化粧品や高級腕時計などの売り上げも伸びている。

かつて、関西圏では阪急百貨店や大丸といった強豪がひしめく中で、近鉄本店は地元客から「親しみのある店舗」と支持されていた。 

だが、2014年にあべのハルカスとして新装開業したことが裏目に出る。誘致した新しいブランドが地元客になじまずに、もくろみどおりに集客することができなかった。特に、新店舗のウリの1つだった「ピュアヤング層」と呼ばれる10〜20代の女性をターゲットにした新専門店ゾーンが「大コケした」(前出のIR担当者)。

「これはヤバい。何とかせなアカン」。開業とほぼ同時期に就任した郄松啓二社長は、出足の苦戦を受け、オープンからわずか半年で改装着手に踏み切った。

「無印良品」が起爆剤に


全面開業から3年半が経過した「あべのハルカス」(撮影:尾形文繁)

目玉の若年女性向け専門店を大幅に入れ替え、そこに地元のドラッグストア「コクミン」や家電量販店の「エディオン」を誘致。食品売り場にも、焼きたてチーズタルトがウリの「ベイク チーズタルト」などを次々と導入した。

それでも近鉄本店の開業初年度の売上高は983億円と、開業当初に掲げた目標の1210億円に及ばなかった。それ以降も本格回復には至らず、2016年度の近鉄本店の売上高は974億円と、前年度並みにとどまった。

だが、昨年11月に誘致した「無印良品」が、反発力がいま一歩だった状況を一気に変えた。大阪南部で最大級となる無印良品の店舗が、若年女性向け専門店ゾーンを改装した場所に入居したことで、顧客の流れがよくなった。それが周りにも波及して、バッグや婦人靴、化粧品なども売れるようになった。

2017年3月にはロールケーキの「堂島ロール」で有名な「パティスリーモンシェール」を入れた。これにより食品売り場も活気づいた。

時を同じくして、落ち込んでいた訪日客数も回復。中国を中心に海外6カ国、100の旅行会社と組み旅行商品を開発したことや、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンと相互送客や共同マーケティングに取り組んだ施策が奏功した形となった。

問われる次の一手


あべのハルカス近鉄本店は訪日客に加え、地元客でにぎわっている(記者撮影)

近鉄百貨店は、今2017年度の近鉄本店の売上高が前期比7.5%増の1048億円になると見込む。ただ、足元の回復状況に鑑みると10%を超えて着地しそうだ。

近鉄百貨店全体の2017年度通期業績についても、会社側は10月上旬に売上高2711億円(前期比1.7%増)、営業利益39億円(同27.4%増)と、それぞれ上方修正したが、近鉄本店の勢いを踏まえると上振れする可能性が高い。

好調が続く近鉄本店だが、来2018年度は一部テナントの契約更改時期に当たる。近隣に構える自社の商業施設との連携を考慮しながら、人気テナントの引き留めや新しいブランドの誘致に取り組まなければならない。

近鉄百貨店としては、阿倍野エリア全体でどのように実績を積み上げていくかが新たな課題となっている。近鉄本店は活況を継続することができるのか。「次の一手」が問われている。