春日部市や東武鉄道などが連携し「クレヨンしんちゃん」で春日部を盛り上げる。写真は2016年11月3日に行われたクレヨンしんちゃんラッピングバスの出発式(編集部撮影)

春日部駅は人口23万人を擁する春日部市の中心部に位置する。広大な東武鉄道の路線網の中において、稼ぎ頭のスカイツリーラインと沿線開発に力を入れるアーバンパークラインの交差する春日部駅はまさに要衝といえる。人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の舞台としても知られている。

しかしながら駅は地上駅で、設備には少し古さがにじむ。暗くて狭い乗換通路を乗換客が行き来する様子は明るい雰囲気の駅とは言い難い。

駅構内に東口と西口を自由に行き来できる通路はない。駅西側にある道路は「開かずの踏切」だ。車の長い列が、踏切が開くのを待っている。駅から数百メートル離れたところに地下通路もあるが、往来する人は決して多くはない。

春日部駅をはさんで東西が分離されている。数年前まで春日部市内に住んでいた男性は「私は西口を利用していたが、東口は行きにくいので、あちらのことはほとんど知らない」と言う。

人口減と衰退する商店街が目立つ春日部市

春日部市は首都圏のベッドタウンでありながら、すでに人口減少が始まっている。お隣の越谷市はいまだ人口が増加しているのに対して、春日部市の人口のピークは2000年。市内南部の武里団地の老朽化や住民の高齢化が大きな原因だ。残念ながらそれを打ち消すだけのプラス材料がなかった。

駅周辺の中心市街地にも元気がない。駅東口側の旧粕壁宿があった場所に広がる商店街では人影もまばらだ。数年前には商店街の中心に位置する西武百貨店が撤退し、跡地は高級家具販売の「匠大塚」になった。いっぽう、駅西側にはショッピングモール「ララガーデン春日部」と「イトーヨーカドー春日部店」があるが、人の流れはかろうじて「イトーヨーカドー」へ向かう程度。若いファミリー層向けの店が多いララガーデン春日部へ向かう人の動きは少ない。多くの客はクルマで買い物にやってくる。

なお、郊外の国道16号線沿いには「イオンモール春日部」もあり、こちらは多くの人でにぎわう。春日部駅前で人々の動きを観察していても、春日部駅を降りる人々は商店街へ向かわず、すぐにバスや迎えの車に吸い込まれていった。

春日部駅の西口にある券売機の上には、「鉄道高架で『つながる東西』活気あるまちの実現を!!」と、大きな文字が書かれた横断幕がある。先日行われた春日部市長選では両陣営ともに「春日部駅高架化の推進」をテーマに掲げ、大接戦となった。それだけ市民の関心は強い。


春日部駅西口に大きく掲げられた横断幕(筆者撮影)

春日部駅周辺の連続立体交差化事業は東武スカイツリーライン1.4kmと東武アーバンパークライン1.5kmをそれぞれ高架化し、10カ所の踏切を除却するというものだ。完了すれば、開かずの踏切や「東西分断」ともいえる状況が解消する見込みだ。春日部市では1995年度から鉄道高架整備推進室を設置し、調査・研究を進めている。ようやく今年度に国との設計協議に入るため、まだまだ先は長い。

しかし、今年発表された東武鉄道の中期経営計画に「春日部駅のジャンクション機能強化」が盛り込まれた。また、昨年発表された輸送改善計画では、春日部駅のアーバンパークライン用ホームを増やし、2面4線化することが示されている。理由としては「東武アーバンパークライン・東武スカイツリーライン直通列車のスムーズな運行や増発への対応、そして、将来的に東武アーバンパークライン全線において、追い越しへの対応や乗換利便性の向上を図るため」(東武鉄道広報)だという。春日部駅周辺の連続立体交差化には「早期事業化に向けて、埼玉県、春日部市と連携を図り、都市計画決定手続きに積極的に協力していきたい」(同)と積極的だ。高架下の開発や都心アクセスの強化については「現在構想中」とのことで、具体的な内容は公表されていないものの、期待が持てる。

連続立体交差化はにぎわいを生み出せるか

そして注目すべきは高架化に伴う高架下開発や周辺再開発だ。春日部市が作ったプランでは周辺に商業施設やタワーマンションが建設される。


春日部駅周辺の再開発イメージ(写真:春日部市)

元春日部市民の男性は市のプランに対して、「これが春日部クラスの町における普通の駅の姿だと思う」とした上で、「春日部では買い物するところがなく、学生時代には新越谷の駅ビルを利用していた。春日部の駅の周辺に商業施設ができると、春日部市民だけでなく乗換客なども利用するのでは」と期待をのぞかせていた。

乗換客は春日部駅が1日2万8565人、新越谷(南越谷も含む)駅は同5万1759人と倍近い差がある。しかしそれを踏まえても、春日部駅の乗換人数に対して駅前の商業施設や若年層向けの飲食施設が少ない感は否めない。

新越谷駅前には「スターバックスコーヒー」や「ドトールコーヒー」といったカフェ、「ロッテリア」、「ミスタードーナツ」、「モスバーガー」といったファストフード店があり、駅と直結するビル「新越谷ヴァリエ」には学生や若い人の姿が目立つ。一方で春日部駅前には「タリーズコーヒー」と「ケンタッキーフライドチキン」くらいしかなく、駅ビルもない。

春日部駅周辺の連続立体交差化と駅周辺再開発が完成すれば駅近くの商業開発や若者向けのカフェ・ファストフードの進出が進む。そうすることで春日部駅の魅力は向上してくるはずだ。

また、連続立体交差化にはにぎわいの創出だけではなく人口減少の改善の期待もかかる。さいたま市と東京都心部のどちらにも出やすいという大きな魅力がある。実際、春日部駅から歩いて25分ほどかかる大沼4丁目には真新しい住宅が並ぶ。グラウンドの売却で生まれた土地にマンションと住宅が立ち並び、2010年以降、この地区に限れば、人口は大きく伸びた。

地域の人々のつなぎとめも必要

また、春日部駅近くの商業地の跡地には新しいマンションがいくつか立ち始めており、こちらも人口が増えている。そこへ春日部駅周辺の連続立体交差化や再開発といったプロジェクトが活発に行われれば、住みたい街としての春日部の魅力が向上する可能性は大いにある。

春日部市も、居住先として選んでもらうための“シティセールス”に取り組んでいる。自然環境や教育を中心に「子育てに適したまち」という点をアピールする。しかし、越谷、三郷、八潮など近隣の勢いがある都市に対してはどうしても印象がかすんでしまう面は否めない。

地域の人々を春日部につなぎとめることも重要だ。東京に出やすいとはいえ、やはり東京都心から1時間圏の端になる春日部は苦戦を余儀なくされている。つまり、就職や結婚といったタイミングでより東京都心に近いところへ出ていってしまう可能性が高いのだ。そのため、地域に住む若年層への魅力アピールも必要だ。

連続立体交差事業という器の準備はできた。あとはその完成までに人口流出をどこまで食い止めることができるか。腰を据えた取り組みが必要だ。