晩産化のリスクは卵子の老化だけではありません(写真:mits / PIXTA)

女性の高学歴化や社会進出がめざましい今、平均出産年齢の高年齢化、いわゆる「晩産化」も同時に進んでいます。しかし、生殖能力は20代をピークとして、男女とも年齢を重ねるに従って衰えることに変わりはありません。

年齢が高い女性の妊娠・出産については、卵子の老化が話題になることが多いですが、怖いのはそれだけではありません。生活習慣病をはじめとする多くの疾病の受診率は、年齢が高くなるとともに高くなり、その中には妊娠・出産の妨げとなり得る疾病もあります。どのような病気に注意が必要なのでしょうか。

初産の平均年齢は40年で5歳上昇

そもそも、第1子出生時の母親の平均年齢は、1975年に25.7歳でしたが2015年には30.7歳と40年で5歳上昇しています。第2子以降も含めると、出産時に30歳以上の母親は1975年に全体の2割程度でしたが、2015年には同6割を超えています(厚生労働省「人口動態統計」)。


人口の多い第2次ベビーブーム世代(1971年〜1974年生まれ)が40代となっていることもあり、出産時に40歳以上の母親は2015年には5%を超えました。WHO(世界保健機関)は高年妊娠の定義を35歳以上の出産としていますが、いまや4人に1人の割合にまで高まっています。

20代と40代女性で、受診内容はどう違う?

そうした中で、妊娠・出産を考える女性がどういった疾病で受診しているのか、年齢別に分析し加齢に伴う妊娠への影響を考えていきたいと思います。分析には、日本医療データセンターが了承を得ている健康保険組合のレセプトデータベースを使用します。

分析対象となるのは、2014 年度に「不妊症」と診断された 25〜29歳と40〜44歳の女性3714人とし、彼女たちがその1年間で医療機関を受診する理由となった不妊症以外の疾病を集計し比較することとします。

なお、今回の分析対象は不妊症と確定診断された女性のデータにおける分析であるため、不妊症と診断されていない女性では、結果が異なる可能性があります。


まず、40代前半と20代後半で受診率に大きな開きがあるのは、閉経期およびその他の閉経周辺期障害です。これは、更年期障害など閉経に伴う症状による治療を指します。身体の機能を健康に保つことができていても、閉経すれば出産は難しくなります。閉経は50歳前後で迎えるとされますが、40〜44歳でも1.9%が受診しています(25〜29歳では0.1%)。

次に、子宮筋腫は対象者全体で受診率が高いですが、加齢とともに受診率は上昇しており、年齢別にみると25〜29歳で5.0%が受診し、40〜44歳ではその約4.5倍にあたる22.7%が受診をしています。子宮筋腫は存在する部位により不妊の原因となり得るとされています(日本産科婦人科学会「日産婦誌61巻5号」)。

続いて、甲状腺の疾病は女性に多い疾病です。甲状腺炎の中でも代表的な慢性甲状腺炎(橋本病)は国立生育医療研究センターによると、不妊や流産、早産、妊娠高血圧症候群などのリスクになるため、妊娠前から出産にかけて特に注意を要します。甲状腺関連の疾患について、40〜44歳の受診率(3%程度)は25〜29歳の受診率(1%程度)の3倍以上と高くなっています。

高血圧症や肥満といった生活習慣病は、妊娠とは関係なく年齢が高いほど多くなります。高血圧の女性が妊娠した場合、早産や胎児発育遅延、帝王切開率の増加などが報告されています(国立生育医療研究センター調べ。詳しくは同センターHP参照)。また、「肥満」に属する人(BMI25.0 以上)が妊娠すると、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などを発症するリスクが高まるほか、緊急帝王切開、分娩後大量出血等の異常も多くなります(厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」)。

ほかには、骨粗しょう症は圧倒的に女性に多く、また年齢が高くなるほど割合が高くなると言われています。原因として、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています(日本整形外科学会HP)。

妊娠時は母体と胎児における骨の需要に対応するために、カルシウム不足の人は摂取量を増やす必要があると報告されており(厚生労働省「「日本人の食事摂取基準(2015 年版)策定検討会」報告書」)、骨粗しょう症の人は重症化防止に注意が必要です。

健康診断以外の項目にも注意を

これらの疾病には、健康診断などによる早期の発見で対処できるものや、生活習慣の見直しと早めの治療で対処できるものもあります。そのため、妊娠・出産を考える場合は、加齢によるリスクを認識したうえで将来設計をし、通常の健康診断で測定する項目にはない項目についても、健康管理をしておくことが重要なのではないでしょうか。