「勤続10年」、今のご時世で10年も同じ会社で働いているのは幸せなことである。が、しかし、同時に新しい挑戦や可能性に踏み出せていないケースもある。

就職氷河期と言われ続けている中、今年の春に大学を卒業した女性の就職率は98.4%を記録した。しかし、新卒で就職したものの、3年以内の離職率は30%近いという調査結果もある。

今、アラサーと呼ばれる世代は、大卒で入社した場合、職場ではちょうど10年選手。正規雇用にこだわらず、派遣やパートを選んで働く女性も増えてきた中、同じ職場で10年間働き続けてきた「10年女子」の彼女たちは、いったい何を考えているのだろうか?

「キャリアアップは?」「結婚は?」「貯金は?」そんな「勤続10年女子」たちの本音に迫ってみた。

今回登場するのは、大手家電メーカーで正社員として働いている綾子さん(仮名・35歳)。

綾子さんはセミロングで、メイクも控えめ、ほんのり入れたチークが可愛らしい印象。清楚な雰囲気の紺のワンピースに白のジャケットを合わせていて、男性ウケも良さそうな雰囲気。

「地元は静岡です。両親と兄の4人家族で、仲が良かったかな。土地柄なのかのんびりした気質で、一番を取ってやる!とかガツガツした雰囲気はなかったですね。兄ともほとんど喧嘩をしなかったし、母親とは今でもしょっちゅう電話し合ってます」

おっとりと話す綾子さん。子供の頃から勉強ができる方で、その可愛らしくおっとりとした雰囲気から、クラスメイトからは密かに「姫」と呼ばれていたとか。反抗期も特になく、穏やかに日々を過ごしてきた。

中学、高校と彼氏はいなかったが、友達に恵まれて楽しく過ごしてきた。自分からは「これが欲しい!」と強く動くタイプではなく、そんなに強い願望も持ち合わせていなかった。

「友達でリーダーシップを取るのが上手な子がいて、クラスのイベントをみんなで作り上げよう!とか意見をはっきりと言っている子で、私はその後をついて行っている感じでしたね」

表に立って行動することはないが、真面目にやっていればうまくいく。大きく道を外さなければ、社会は守ってくれる。リーダーシップは無いけれど、チームメンバーとして貢献できる、そんな生き方をしてきた。

普通に授業を聞いて、真面目に試験勉強をすれば良い点は取れる。だから、綾子さんは常に良い成績だった。変に目立つこともなく、穏やかな生徒として教師の目には写っていただろう。クラスのほとんどが大学進学をする高校で、綾子さんはこれまでの成績の良さもあり、推薦で東京の私立大学に合格。上京して、一人暮らしを始めた。

努力すればなんとかなる

優等生の綾子さんだが、第二外国語のフランス語を落としてしまいそうになる。この時はちょうど初めての彼氏が出来て、舞い上がっていた。慌てて勉強し、補講に出て、何とか単位を取った。

「真面目にやらないと、落としちゃうもんなんですね。この時は本当に焦りました」

努力をしないと結果がついてこない、怠けるとそれなりの結果になる、ということを身にしみて感じた出来事だったという。その後、就活を始めるが、主に大手企業を中心に受けて行った。自分に出来る最大限のことをやって、二次面接、三次面接に進む率は高かった。

清楚で真面目な印象の綾子さんは、無事に現在の大手家電メーカーに就職が決まる。昭和の風潮が残る会社ではあるが、福利厚生がしっかりしていて安定しているところが良かった。しかし社会人になってしばらくすると、大学時代に付き合った彼氏とは破局を迎える。

「就活の頃から時間が合わなくなってしまって、ほとんど会っていなかったんですよね……。卒業旅行も結局流れたし。彼はマスコミ志望だったんですけど就活の頃から出来た人間関係に楽しそうで、私との時間がどんどん減っていき、別れを告げられました。どうやら、同じ会社で新しい彼女が出来たみたいなんです」

しかし、綾子さんにも新しい出会いは訪れた。友人の紹介で知り合ったIT系に勤める男性に猛アプローチを受け、交際に発展。28歳で結婚をする。彼は少しワンマンなところもあるが、稼ぎも悪く無いし、この先30歳を超えてしまうと婚活をしなくてはならないという現実があるから、ここらで結婚しておくのが賢明だと思ったところもある。

「結婚はその時のタイミングかな、と思いました。激しく“好き!”という訳では無いですが、もっと良い人が現れるという保証も無いですし……」

結婚しても仕事は続けることにしていた。ちょうどその頃、親しくしていた女性上司の新プロジェクトを手伝うべく、そのスタートアップメンバーに入っていたからだ。

「“綾子さんに手伝ってもらいたいの”と直々に言われて、私もやる気になったんです。結婚して退職という道もありましたが、今すぐ子供を作る予定もなかったし、自分を認めてくれる上司がいるならばそれに応えたいという気持ちでした。子供は30歳から考えようと思っていました」

リーダーシップを取るのは苦手な方だが、サポートする力はあると思っている。スーパーサブ的ポジションが自分には合っていると感じるとか。

順調に進む新プロジェクト、仕事が忙しくなり、子供を産むのは先送りに……!? 〜その2〜に続きます。