抽選会後に行なわれた各国代表監督によるフォトセッション。ハリルホジッチ監督率いる日本代表は“サプライズ”を起こせるだろうか。(C) Getty Images

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 概してワールドカップの番狂わせは、欧州以外の開催の方が多い。
 
 サッカーは欧州を軸に回っている。当然トッププレーヤーたちの日常と異なるほど、開催地側の条件に合致したチーム(選手)が力を発揮する。とりわけその傾向が顕著だったのが、1994年アメリカ大会と2002年日韓大会だった。
 
 アメリカ大会はテレビ中継の都合が優先され、夏真っ盛りの日中に試合を行なった。選手たちの健康を危惧し、試合途中で給水タイムが導入された大会だった。その2年前にはアジアカップ決勝で日本に敗れたサウジアラビアが、モロッコ、ベルギーを破ってベスト16に勝ち進み、ディエゴ・マラドーナの5人抜きに匹敵するようなサイード・オワイランの単独突破が話題になった。韓国もグループリーグ突破は逃したが、スペインと分け、猛暑の中でドイツをノックアウト寸前(2-3)まで追い込んでいる。
 
 また日韓大会は、ワールドカップ史上でも最も異質なシナリオが描かれた。トルコと韓国が3位決定戦を争い、セネガルが前回王者フランスを下してベスト8に進出。欧州2か国と同居した日本も、厳しいグループリーグをトップ通過した。
 
 サッカー界は欧州の気候条件に即して戦術も進化している。そこには最高の選手が集まり、日常的に質の高い戦いが繰り広げられるわけだが、実は公平さを考慮すれば、非日常的なワールドカップという祭典くらいは、他大陸開催の方が適しているのかもしれない。
 
 歴史的に欧州と南米の対決の構図が色濃いワールドカップでは、それ以外の大陸から躍進する国が出ると“サプライズ”と受け取られてきた。20世紀は1966年イングランド大会の北朝鮮や、1990年イタリア大会のカメルーン(ともにベスト8)に象徴されるアフリカ勢の台頭が特筆されるが、まだ2大大陸以外は“未知の世界”だった時代の話だ。
 
 もはやほぼ全員が欧州を主戦場とするアフリカ勢の潜在能力には疑いがなく、おそらく成否のカギを握るのは戦術も含めた規律だ。ワールドカップの優勝を果たしたのは自国監督だけだが、逆にアフリカの成功を導いてきたのは大半が外国人監督である。
 
 ちなみに前回大会で最も大きな驚きを与えたのは、ノックアウト1回戦でドイツに食い下がったアルジェリアと、激戦のグループリーグを首位通過し、ベスト8に進んだコスタリカだろう。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いるアルジェリアは、対戦相手に応じて大胆に戦略やメンバーを変えたが、もともと高い能力を持つ選手たちが規律を持って対応した。一方コスタリカは、守護神テイラー・ナバスを中心に5バックで堅守を築き、カウンターの威力も兼備していた。準備期間が限られた代表戦だけに、いかにコンディションを整え、迷いなく一枚岩になれるかが重要なテーマになる。
 
 そして番狂わせを演じるなら、やはり堅守速攻が生命線だ。その点でハリルホジッチ監督は常道を歩んでいる。前回アルジェリアでも、全4試合でポゼッションは対戦相手を下回った。しかししっかりと結果を手にして賞賛を得た。全員が勤勉に闘うのも、過去のアイルランドや昨年EUROのアイスランド旋風などに通じるものがある。実際日本も、攻撃面で創造性を備えたジーコ(2006年ドイツ大会)やザッケローニ(2014年ブラジル大会)体制では失点を重ねて敗退したが、守備に軸足を置き換えた2010年南アフリカ大会ではベスト16に残った。
 
 もちろん番狂わせも繰り返せば、自信として蓄積され歴史も変わっていく可能性はある。ただし大きな流れの中で、中堅国以上に脱皮し成功へ近づくには、独自の道を見出し継続していく力も必要になる。メキシコは依然として2度の自国開催で残したベスト8を超えられていないが、独特のスタイルを貫き強豪の一角に定着しつつある。今回は失敗したが、アメリカやチリの試みも自国の特質を活かした戦い方の継続という意味では、貴重なヒントになったはずだ。
 
 もしロシア大会で日本がグループリーグを突破すれば、国際的にはサプライズになり、指揮官の仕事ぶりは高い評価を受ける。だがそれで異彩を放ち、インパクトを残したかは、また別の問題になる。先日川崎の鬼木達監督が語っていた。
 
「このやり方を信じているので、これで負けたら仕方がない」
 大局に立てば、そういう選択肢もある。
 
文●加部究(スポーツライター)