150万枚突破の安室奈美恵と躍進続けるMy Hair is Bad それぞれがチャートアクションで示したもの

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 安室奈美恵、強し! オールタイムベストにして稀代の歌姫の「今」を伝える作品『Finally』が3週連続で1位を獲得。すでに累計売上枚数は159.4万枚を突破しています。150万という大台の数字が出てくるのは、「今年」の範疇ではなく、「2010年代以降」のタームでも初めてのこと。この7年間で一番多くの人が買い求めたCDパッケージ作品が『Finally』となりました。

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 ちなみに、2010年以降の売上トップ3は、2位・いきものがかりのベスト『超いきものばかり〜てんねん記念メンバーズBESTセレクション〜』(143.2万枚)、3位・Mr.Childrenのベスト『Mr.Children 2005-2010<macro>』(120.6万枚)と続きます。では、これら国民的なアーティストよりも安室奈美恵の歌は多くの人に親しまれていたのでしょうか。……うーん、なんか違う気がしますね。

 90年代のTK(小室哲哉)プロデュース時代であれば「猫も杓子もカラオケでアムロを歌う」現象もあったかと思いますが、R&B/ヒップホップ路線に舵を切った00年代の楽曲は、とびきりクール、しかし素人に歌いこなすのは無理! というタイプが多かった(私自身、2005年のシングル「WANT ME,WANT ME」に挑戦して周囲をドン引きさせた経験があります)。口ずさみやすい・覚えやすい・わかりやすい。そんな「共感」や「親和性」におもねることなく、キャラクターや私生活を売りにすることもなく、ただ真摯に歌唱とパフォーマンスに向き合ってきた彼女。そんな活動の集大成が150万枚のセールスに繋がるというのは、大袈裟ではなく、ポップミュージックの理想形といえる話でしょう。

 また、今週2位にはマイヘアことMy Hair is Badの『mothers』がランクイン。新潟県上越市出身の若き3人組で、現在人気沸騰中、ツアーのチケットがほとんど取れない状態になっているとか。実際、一年前に出た2ndアルバム『woman’s』は発売初週で1.7万枚、初登場5位でしたから、初週で約3.2万枚という今回の記録は、バンドの躍進をわかりやすく伝えてくれます。

 数カ月前に彼らのライブを見ましたが、ボーカルの椎木知仁がやけに苛ついた様子で、歌うというより怒鳴るように叫んでいるのが印象的でした。楽曲は比較的ストレートなメロディのギターロックが中心ですが、歌の端々から、何かが足りない、まだ何も満足できない、という焦燥感や爆発力が伝わってきます。まさに25歳の生々しい感情でした。

 考えてみれば近年、ロック系で3万枚以上のセールスを誇るバンドは大人のバンドが多い印象でした。BUMP OF CHICKENにRADWIMPSは30代に突入し、スピッツやエレファントカシマシ、THE YELLOW MONKEYなど40〜50代のベテランもしっかり健在。彼らが安定したスタンスで名曲を量産するのはもちろん良いことですが、とにかく「今しかない!」という勢いや闇雲なエネルギーを求めるのはお門違いでしょう。激しさや爆発力が売りのラウド系にしても、マキシマム ザ ホルモンや10-FEETなどは実際いい大人になっていて、この時代にどんなメッセージを残せるか、そういう責任感や包容力を身に付けているわけです。

 そんなところに、25歳のマイヘアの勢いはとても新鮮。自分のことで手一杯という感じの焦燥は、良くも悪くも若いバンドにしか出せない魅力でしょう。「注目される若手のひとつ」だったMy Hair is Bad。このアルバムを機にどう躍進していくのか、注目していきたいです。(石井恵梨子)