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 トヨタ自動車は11月28日、電動(EV)化技術に関して記者向けに説明会を開催した。ようやく本性を見せ始めたと言っていいだろうか?世間では、トヨタはEV技術に後れを取っていると揶揄されていたが、筆者はそれに真っ向から反論していた。それが目に見える形で実証された。電気自動車(EV)は発売していないが、トヨタが市販しているHV、PHEV、FCVを理解していれば、最先端のEV化技術は持っているのは当たり前である。

■モーターとバッテリーだけではEVは作れない、PCUが必要

 巷では、“モーターとバッテリーだけで電気自動車は作れるから他業種の参入が容易である、だから既存自動車メーカーの危機である”と言われていた。たしかに、簡易な電気自動車であれば、機械、電気に精通した一般人でも作ることはできる。だから自動車産業がまだ成熟しきっていない中国では、リチウムイオン電池ではなく普及品の鉛電池で最高時速30〜50kmで走る低速EVは簡単に製造でき、市場は活況である。しかし、ゴルフをたしなむ人なら電動カートをみればわかるだろうが、そのような簡易な電気自動車で先進国のライフラインは機能するであろうか?

 今回トヨタの説明会でクローズアップされたのが、電気自動車に必要なPCU(パワーコントロールユニット)である。これはモーターを駆動させるためにバッテリーの出力を制御するシステムで、いわば電動化自動車の頭脳に当たる部品である。バッテリーが発生する電気を直流から交流に変換するインバータや、バッテリーの電圧を600Vまで上げる昇圧コンバータなどから構成されている。

 これらにより、いかに電気を効率的に、またドライバーが違和感なく運転できるように細かい調節がなされているのである。ここには、“にわか”自動車メーカーではできない、長年培ってきた最先端の技術が含まれている。もちろん、すぐにEVに転用できる技術である。

■究極のPCU小型化

 また、「PCUの小型化」に対する技術も、トヨタが優れているのがわかった。それは、エンジン(内燃機関)システムと電動化システムを混在させるハイブリッド車で成功を遂げた、トヨタでしか生まれない技術かもしれない。2つを混在させることで必然的に省スペース化を余儀なくされているわけだから、究極の小型化を成し遂げていることになるだろう。

 初代プリウスと4代目プリウスでPCUを比較すると、出力密度は2.5倍になり、容積は17.4リットルから8.4リットル、つまり半分以上小さくなっているという。この最先端の技術により、車両設計の自由度は上がり、軽量化にも成功していることから航続距離にも寄与するだろう。

■EV市販化の鍵はバッテリー

 このように、トヨタはEV化に後れているのではなく、最先端をいっている。ただ、市販化していないだけなのである。現在バッテリーのコストが問題で、EVを市販している自動車メーカーは、1台売るごとに100〜200万円も赤字を出している状況だ。その中でトヨタは、小型化できて安全性の高い全固体電池の開発を急いでいるが、これが実用化できれば赤字を出さなくて済むかもしれないのだ。その機会を虎視眈々と狙っているように見える。

 それは、日本だけではなく世界をも背負うグローバル企業の社会的責任を担っているからだろう。決して無理をして、VWのようにはなってはほしくない。