■設計品質と製造品質の問題事例

 材料製造にしても、部品製造、組み立て製造にしても、全て設計品質が決められる。

【前回は】【三菱マテリアルお前もか(上)】なれ合いの品質 現代社会モラルの低下か?

 例えば、自動車の重要保安部品である「ハブ」に取り付けられる、ディスクブレーキのディスクについてみてみる。ディスクは、ホイールの合間から日常的に見えている、単なる「円盤」だ。それを両側からパッドを押し付けてブレーキをかけている。そのためブレーキパッドは消耗が激しく、定期整備では必ずチェックする部品だ。

 三菱自動車が不良を起こしたのはディスクブレーキではなくドラムブレーキのドラムの取り付け部分の破損だった。ブレーキディスクが、いかに重要であるのかがおわかりだろう。そのディスクの「面粗度(表面の粗さ)」では「3発仕上げ」で、旋盤加工では最上級のきめ細やかさに指定されている。しかし、実際にはブレーキを1回でもかけてしまうと、面粗度はそれほど問題ではない。パッドでこすってしまうので鏡のように仕上げても、多少粗くても実用上は問題は起きないのだ。

 製造現場では、「3発仕上げ」と「2発仕上げ」を比べると、加工時間が2倍違うことも考えられる。実際に旋盤では対応できないので、研磨機に移し替えて仕上げなければならないものもあった。1工程増えてしまうのだ。現場ではこれを嫌うので、客先と交渉して「2発仕上げ」で検査を通してもらうことにした。設計に変更はないが、製造品質に変更があり、常時不良品だ。しかし、もちろん問題はない。これは設計品質の詰めが甘いのだ。

■「カイゼン」と「改革」は日頃の組織作りと組織運用で決まる

 このような製造現場の問題点を常にとらえて、設計から材料から、部品製造、組み立て、メンテナンスまで、製品の品質を向上させていく。この日常の努力が「カイゼン」なのだ。だから「カイゼン」活動が出来ていない組織が「革命」など出来るはずはないのだ。トヨタの「カイゼン」が「革命」を妨害しているとの論調を発している人は、製造を理解できていないのだ。どれほどAIロボットが進歩しても、その基本は職人技であり、改善できないAIロボットに「改革」などできるはずもあるまい。「机上の空論」は慎むべきだ。

 “製造業では「シミュレーター」で設計が出来る”とした大学教授の意見も発表されている。確かに作業は楽になる。しかし、それだけで製品が完成できるわけもあるまい。製造とは設計変更の歴史と言われているのだ。設計通りに現物が出来ていると思うな!ということだ。トヨタが掲げる「現場、現物主義」を貫かねばならない。なぜなら製品は設計変更が販売中止になるまで続くのだから・・・!