経団連の榊原会長(左)と安倍首相

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 5年連続の“官製春闘”が異例ずくめで始まる。経済の好循環とデフレ脱却には高水準の賃上げが不可欠と考える安倍晋三首相は2018年春闘に向け、10月末、早々に3%の賃上げ率(定期昇給とベースアップの合計)実現への期待感を表明。これに呼応する形で、経団連は経営側の交渉指針で「3%」に言及せざるを得ない状況となった。ただ賃上げの勢いは鈍化しており、相当なインセンティブがない限り実現は困難とみられる。

 経営側の交渉指針となる経団連の経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)の骨子案では月例賃金について「『3%の引き上げ』との社会的期待を意識しながら検討を行う」ことが明記された。

 過去の交渉指針では具体的な賃上げ水準は言及せず「年収ベースの賃上げを前向きに検討することを求めたい」(17年度)といった表現にとどまっていた。

 安倍晋三政権と歩調を合わせ、4年連続の賃上げを実施してきた経団連。政府が経済界に賃上げを促す“官製春闘”が始まった14年以降、賃上げ率は2%前後で推移してきたものの勢いは鈍化。3%台の賃上げ率は94年の3・11%を最後に実現していない。

 しかも18年は様相が異なる。働き方改革に伴い、長時間労働を是正する動きが広がる結果、残業代が減少。従業員の手取り収入が目減りすることが懸念される。経営側は時間外手当の減少分を別の手法で従業員に還元する方策を模索する中、過去の実績を上回る「3%」はハードルが高い。

 政府・与党は18年度税制改正で、賃上げ率3%以上の企業の法人税を減税する方針を打ち出している。だが、租税特別措置(租特)などの優遇措置を利用した企業の実質的な負担率は25%以下に軽減されているケースもあり“賃上げ減税”がどこまで企業に響くか疑問符が付く。

 経団連の骨子案では政府に「将来への安心感を高めるため社会保障制度の抜本改革」を求めている。賃上げに依存した消費喚起に限界がみられる中、これこそ経済好循環実現の王道であるはずだ。