白鵬vs.貴乃花の「夢の取組」

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 親が飲んだビールの空き瓶を酒屋に持っていき、それを駄賃にして駄菓子を買って帰る。古き良き昭和の光景である。さすがに平成の世でそうした子どもを見ることはなくなったが、今でも空き瓶を酒屋に持っていけば1本5円で換金できる。たかが5円、されど5円の小さなビール瓶を巡り、巨漢力士たちが揉めている。

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 現役の横綱が、事もあろうにビール瓶で後輩力士を殴った――。驚愕の暴行沙汰は、スポニチの報道によって「栓」が抜かれ、泡が一気に溢れ出すような大騒動となった。

 しかし、暴行現場に同席していた横綱白鵬が、

「実際は(日馬富士が)手を出したっていうのは事実としてありまして、今報道されている、あのビール瓶で殴ったということはありません」

白鵬vs.貴乃花の「夢の取組」

「(日馬富士がビール瓶を)持ったのは持ちましたけど滑り落ちました」

 こう証言し、元横綱の朝青龍もツイッターで、

〈ビールびんありえない話し(ママ)!!〉

 と、加勢。日馬富士(33)側は、暴行自体は認めるものの、貴乃花親方(45)サイドが主張するビール瓶暴行については頑(かたく)なに否定しているのだ。その理由のひとつには、甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)が、

「『用法上の凶器』と言って、人を殴るためにビール瓶を使用すれば、それは凶器と認定されます。場合によっては人を死にいたらしめる危険があるわけで、素手の場合に比べて、裁判で情状が悪くなります」

 こう解説するように、素手と凶器であるビール瓶を用いての暴行では、刑事裁判になった際に差が出てくる可能性があることが挙げられる。

「ビール瓶=殺人」の記憶

 だがそれ以前に、

「角界では、ビール瓶は特別で象徴的な意味を持つんです」

 と、スポーツ紙の相撲担当記者が「日馬富士一派」vs.「貴乃花陣営」の内幕を明かす。

「2007年、時津風部屋で『かわいがり』の結果、新弟子の少年が死亡する事件が発生。この時、使われたのがビール瓶でした。事態を重くみた日本相撲協会は、司法判断を待つことなく時津風親方を解雇。つまり、ビール瓶で人を殴れば亡くなることもあるという忌まわしい記憶が角界には残っていて、日馬富士もビール瓶を使ったのであれば、警察の捜査如何(いかん)によらず解雇になる可能性があった。だから、日馬富士側は必死にビール瓶での暴行だけは否定していたんです」

 相撲評論家の中澤潔氏が後を受ける。

「確かに時津風部屋事件ではビール瓶が使われていて、そのせいか、ビール瓶で殴ったと報道されると事件に『迫力』が出る。怪我の程度に関係なく、死亡事件を招いたビール瓶で殴るなんてあまりに酷い――という印象は強くなりますね」

 角界とビール瓶。5円ならぬ「負の御縁」が未だに尾を引き、日馬富士暴行騒動では謎がさらなる謎を呼んでいる。

「週刊新潮」2017年11月30日号 掲載