ガラクタ同然の水彩画、ヒトラーが描いたものと判明(画像は『Express.co.uk 2017年11月28日付「Unique Adolf Hitler aquarelle painting of old Vienna uncovered」(CEN)』のスクリーンショット)

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アムステルダムにあるオランダ国立戦時資料研究所(NIOD)に今年の春、のみの市でわずか75セントで購入したという1枚の水彩画が持ち込まれた。その後数か月間に及ぶ鑑定の結果、作品下部のサインや使用画材などからナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーの作品だと判明したことがNIODから発表された。

アドルフ・ヒトラーは、政治家の道に進む前に芸術家を目指していた時期があったことで知られる。1909年から1913年までの間ウィーンに暮らし、名門ウィーン美術アカデミーを2度受験したものの不合格となり、その夢は挫折している。この時期、彼は生活のために2000枚から3000枚もの絵を描いていたと言われており、うち700枚から800枚が現存しているが、ほとんどはイギリス、アメリカ、ドイツそしてオーストリアなどの国々で個人によって所有されている。

今回の作品はウィーン旧市街にあった要塞の“Neutor(新門)”が描かれた水彩画であり、下部にはA.Hitlerというサインが確認できる。

ヒトラーの贋作は世に多数出回っているため、鑑定は専門家の協力を仰ぎ慎重に行われた。その結果、作品下部のサインや背面にある絵画取引所及びオーストリアの司法当局を示す2つの印、そして使用されている画材が20世紀初頭のものであったことなどが決め手となり、この作品がヒトラーの真作であるという判断が下された。

この所有者である匿名希望の女性によると、父親がのみの市で見つけ75セントで購入したという。だが当初はヒトラーの作品と分かってはおらず、それに気がついたのはのみの市から帰宅後、作品下部にヒトラーのサインを見つけたからだそうだ。

所有者は以前、2件のオークションハウスにこの作品を持ち込んだものの、どちらからも受け取りを拒否されたという。彼女はこの水彩画を手元に置いておく気はなくNIODに寄贈する意向を示しているが、このことはNIODにとって非常に喜ばしいことであったようだ。NIODの研究員Gertjan Dikken氏は、今回の発見及びNIODへの寄贈は歴史的大事件だとし「今後NIODは、我々が知る限りオランダで唯一のヒトラーの作品の所有者となります」と話す。またNIODの所長Frank van Vree氏も「この作品がナチスの物としてオークションで競り落とされなくて本当に良かった」と語っている。

今後この作品は教育や研究目的に使用されることになり、売買目的で外に出回ることのないよう厳重に管理されるもようだ。また、先の調査で真作であることは判明したが、今後も作品研究のための調査は続けられるという。

画像は『Express.co.uk 2017年11月28日付「Unique Adolf Hitler aquarelle painting of old Vienna uncovered」(CEN)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)