パートやアルバイトというような非正規雇用が増え続けている現代。いわゆるフリーターと呼ばれているアルバイトやパート以外に、女性に多いのが派遣社員という働き方。「派遣社員」とは、派遣会社が雇用主となり、派遣先に就業に行く契約となり派遣先となる職種や業種もバラバラです。そのため、思ってもいないトラブルも起きがち。

自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員として働いている新井順子さん(仮名・36歳)にお話を伺いました。ややパサつき気味のロングの黒髪は、伸ばしっぱなしのように見えます。顔立ち自体は整っているように見えるのですが、ほとんどメイクをしていないために、通勤時には黒縁の眼鏡とマスクを着用していると言います。

「飲んで帰ることが多くて、そのまま寝ちゃうんですよ。だからあまりメイクしないようにしていて。コンタクトのまま寝ちゃったこともあるので、最近は眼鏡が多いです」

ゆったりめのグレーのニットワンピースに、黒のロングカーディガンを羽織り、薄い黒いストッキングをあわせた色味を抑えた着こなしは、不健康そうな雰囲気が漂っていました。

「面倒なので、服はだいたい黒かグレーにしているんですよ。髪も年に2回くらいしか美容院に行かないので、黒髪にしています」

現在は派遣社員として、ソフトウェア会社でweb制作の運用業務や、既存クライアントへ企画提案など、ディレクター業務を担当しています。

「今の会社では、名刺も作ってもらってクライアントと打ち合わせをすることもあるので、外からは私が派遣だとは思われていないかもしれないです」

彼女は福島県会津若松市出身。父は運輸会社でガスのタンクローリーの検査員として輸送や検査業を行ない、母は、新聞にチラシの折り込みをするバイトを手伝っていました。子供のころは両親ともに仕事で忙しく、家族で出かけた記憶があまりないそうです。

「たまに父が、保育園のお迎えに作業着のままで来たりしたのが記憶にありますね。当時は、あまり父が迎えに来る家が少なかったから、油臭いし目立って嫌だったんですよ」

中学では、父親も学生時代にやっていたという卓球部に入部します。強い部活ではなかったですが、毎日、放課後は部活動に励みます。一人っ子だったので、門限や友達付き合いに母親が口を出してくるのが嫌だったと言います。

「田舎で、親とか周りのいうことは絶対みたいな土地柄だったんですよ。卓球も、親がやっていたから“お前もやって当然”みたいな雰囲気でしたね」

そんな息苦しい地元から、早く上京したいと考えるようになります。

「親に隠れて深夜ラジオを聴いたり、音楽雑誌とかを読んでいて、高校くらいから漠然と東京に行きたいって考えていました」

 年上の彼氏との結婚を意識して退職したものの、破局に

中学、高校と、友人も多く交流関係も広かったと言います。

「別の高校に通っていた男子と付き合っていたんです。学校帰りにカラオケに行ったり、家に帰らないでコンビニの前で、喋っていたり。女友達と一緒にいるよりも、彼氏とずっといるのが良かった……そういうのを親から注意されて、もう家を出たいって強く思いました」

彼女が通っていた高校からは、東京の大学に進学をするのは2割程度と少なかったため、東京の大学に行きたいというのを親に言うのが怖かったと言います。

「それが、親は意外と反対しなかったんですよ。両親ともに、高卒だったから大学に受かったのを喜んでくれて。奨学金のほかに、銀行に借金して進学しました」

大学では文学部に進学し、日本文学を専攻していました。

「特に国語が得意だったというわけではなくて、文学部を中心に受験をして、英文科よりも国文科の方が入りやすそうだったので、そっちを選びました。教職も取らなかったし、時間的余裕は結構ありましたね」

大学進学時に彼氏とは遠距離恋愛を始めますが、徐々にフェイドアウト。順子さんは、単位を落とさない程度に大学に通い、それ以外の時間はすべてバイトを入れていました。

「正月くらいしか実家には帰らないで、夏にはトリプルでバイトを入れて働いていました。実家に帰りたくなかったんですよ」

就職活動は、大量採用をしている企業を中心にエントリーをしました。

「絶対に東京で就職がしたかったんです。とりあえず、中途採用で求人をいつも出しているような企業だと人手不足だろうと思って、そこから新卒採用も応募しましたね」 

就活の末、複数の専門学校を運営している学校法人に正社員として入社します。

「そこでの仕事はなんでも屋さんでしたね。よく生徒に配る書類を、ワードで作成していました。なぜか販促物のデザインもしたり、窓口での対応もしていました。土曜出勤があるのが嫌でしたが、生徒とも親しくなったり充実していました」

学校職員の仕事は、給与は高くはなかったですが、安定した仕事でした。ちょうど、職場では新規の学校の開校準備のため、残業などが増えていた時期でした。

「どんどん新しい学校を作るのは良かったのですが、上の人たちがケチで。備品も生徒が忘れていった筆記用具とかを使うような状況でした。6年くらい勤めた時に、急に仕事を辞めたくなっちゃったんです。その頃、付き合っていた彼氏と結婚するっていうのが理由でした」

“惚れっぽくて、男性がそばにいないと不安になる性格”だと言う順子さん。田舎に住みたいという、その頃つきあっていた彼氏のために、仕事を辞めます。

「その時付き合っていた彼氏は8歳年上で、本気で結婚するつもりでいたんです。でも彼は年齢もあって、すぐに子供を欲しがったんです。私が子供は好きじゃなくて、すぐには欲しくなかったから結局別れたんですよ。……ううん、別れた一番の原因は、私が彼氏ではない別の人を好きになっちゃったから。結局、同棲をしていた彼氏の家から荷物を持って家を出ました。あの頃はいろいろ最悪でしたね」

仕事のストレスを発散するためにお酒を飲むと、惚れっぽくなってしまうそう。

彼氏からのメッセージが気になって、仕事が手につかない!?恋愛体質に拍車がかかる……〜その2〜に続きます