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●Mateシリーズの廉価モデルから見える意気込み

次々とヒットモデルを輩出し、SIMフリー市場で好調を維持するファーウェイ。だがSIMフリースマートフォンのセット販売に力を入れるMVNOの勢いが落ちていることから、日本におけるファーウェイの今後の成長にも懸念が出てきている。ファーウェイは今後日本でどのような成長戦略を描いているのだろうか。

○新機種「Mate10 Pro」で攻めの姿勢を継続

デュアルカメラを搭載した「P9」シリーズのヒットで人気を急拡大し、現在もSIMフリー市場で好調を続けているファーウェイ。今年もP9の後継機種「P10」シリーズを投入して大きな注目を集め、中でも低価格モデルの「P10 lite」が大きく販売を伸ばしているようだ。

その後もファーウェイは、日本市場攻略に向けて攻めの手を緩めることなく、新端末の投入を続けている。10月10日には、コストパフォーマンスが高いネット販売限定モデル「honor」シリーズの新機種「honor 9」を投入。従来honorシリーズを独占販売してきた楽天の「楽天モバイル」だけでなく、新たにインターネットイニシアティブ(IIJ)やイオンリテールの「イオンモバイル」、NTTレゾナントの「NTTコムストア by gooSimseller」が取り扱いを開始するなど、販路を大きく広げている。

さらに11月28日には、Pシリーズと並ぶ同社のフラッグシップモデル「Mate」シリーズの最新機種、「Mate10 Pro」と「Mate10 lite」の2機種を発表。Mate 10 Proは画面比率が18:9の6インチ有機ELディスプレイや、ライカと共同開発したレンズを搭載したダブルレンズカメラ、そしてAIの処理を高速化する機構を備えた新しいチップセット「Kirin 970」を搭載し、利用状況に合わせたパフォーマンスの向上などを実現しているのが大きな特徴だ。

だが同社の戦略を見る上で大きなトピックになるのは、Mate10 Proの低価格モデルとなる、Mate10 liteが用意されたことだ。ディスプレイには有機ELより安価な液晶を採用し、ボディも樹脂素材を採用するなど性能はMate10 Proと比べれば落ちるものの、ディスプレイサイズは画面比率18:9の5.9インチ、そして背面だけでなく前面にもダブルレンズカメラを備えるなど、Mate10 Proの要素を随所に反映させつつ、独自性も打ち出している。

従来Mateシリーズは、Pシリーズと異なり日本では高額なハイエンドモデルのみを提供しており、Pシリーズと比べると販売もそれほど積極的ではなかった。それだけに今回、Mateシリーズの廉価版モデルを用意したことからは、日本でもMateシリーズの販売を大幅に拡大したいという、同社の意気込みが伝わってくる。

●好調ファーウェイに敵なし?

○MVNOの伸び悩みがファーウェイの成長の妨げに?

ファーウェイが攻めの姿勢を続けている理由は、日本でそれだけの実績を上げているからに他ならない。Mate10 Proの発表イベントに際して、ファーウェイのデバイス 日本・韓国リージョン プレジデントである呉波氏は、さまざまな数字から、同社が日本市場でいかに成長しているかを力説している。

その一例として、BCNの家電量販店・オンラインショップの実売データを挙げると、国内のスマートフォンメーカー販売台数シェアが、昨年は5.48%であったのが、今年は8.31%と、倍近くに伸びているという。またBCNやMM総研など複数の調査によると、同社はSIMフリースマートフォンの市場シェアで1位の座を獲得するに至ったというのだ。

その背景にあるのは、やはりグローバルでの製品力の強さであろう。ファーウェイはここ数年来ハイエンドモデルの製品開発に力を入れており、ダブルレンズカメラを搭載したPシリーズなど、ヒットモデルを生み出し同社の人気を広げる原動力となっている。実際、ファーウェイのグローバルでの出荷台数が前年同期比19%増であるのに対し、売上は30%伸びているそうで、ハイエンドモデル重視の戦略が功を奏している様子がうかがえる。

そして日本では、他の国と比べとりわけハイエンドモデルの人気が高い傾向にある。グローバルでの高いシェアを生かして研究・開発に積極投資し、スマートフォンの性能を高めてきたことが、ハイエンドモデルを好む日本のユーザーにうまくマッチするようになった。そうしたことからファーウェイが、ライバルを押しのけてSIMフリー市場でトップの座を獲得するに至ったといえるだろう。

だが、SIMフリースマートフォンの販売を重視するファーウェイの弱点となるのが、ここ最近のMVNOの伸び悩みである。MVNOへの顧客流出に危機感を抱いた大手キャリアが、通信料金の引き下げや、サブブランドの強化などによって顧客流出を防止するための施策を相次いで打ち出したことにより、MVNOへ流出するユーザーが急速に減少しているのだ。

実際今年後半に入ってからは、「FREETEL」ブランドのプラスワン・マーケティングが、MVNOによる通信事業を楽天に売却したり、MVNOの大半にネットワークを貸しているNTTドコモが、MVNOの伸び悩みによって純増数予測を大幅に下方修正したりするなど、MVNOに関するネガティブな動きが相次いで起きている。MVNOの利用者が増えなければ、MVNOのSIMとセットで販売されることが多いSIMフリースマートフォンの販売も伸び悩んでしまうだけに、現在の傾向はファーウェイにとっては痛手といえるだろう。

●Mate10 Proから見える秘策

○来年はキャリアへの端末供給を目指すか

では、ファーウェイは今後どのようにして、端末販売を伸ばそうとしているのか。そのヒントは、今回発表されたMate10 Proから見て取ることができる。

実はMate10 Proには、最近のiPhoneシリーズと同様、IP67の耐水・防塵性能が備わっている。防水・防塵への対応はここ最近世界的なトレンドとなってきているが、ファーウェイはこれまで、防水・防塵への対応にあまり積極的ではなかった。それだけに今回、iPhoneに匹敵する耐水・防塵性能を備えたことは、この先を見据えた取り組みとして大きな意味のあるものなのではないかと筆者は推測する。

それはキャリア向けの端末納入だ。これまで日本向け機能の搭載に消極的だったファーウェイが、このタイミングであえて耐水・防塵性能を備えたモデルを投入してきたことは、日本のユーザーの要望に応えるだけでなく、日本のキャリアに向けたアピールという側面もあったのではないだろうか。

しかもここ最近、ファーウェイの関係者からは、来年の日本市場に向けた取り組みを強化する旨の発言を聞く機会が増えている。実際、7月27日に実施されたファーウェイのコンシューマー事業部の2017年上期業績発表会で、コンシューマー事業部CEOであるリチャード・ユー氏は、日本の記者向けグループインタビューにて「来年のPシリーズのスマートフォンを待って欲しい」と、Pシリーズの新機種でより日本市場に適したモデルを投入する考えを示していた。また呉波氏も今回の発表会における囲み取材で、「2018年はスマホ製品をSIMフリーに限らず、全ての市場でどんどん数を増やしていければと思う」と話している。

ファーウェイはタブレットやWi-Fiルーターなどで、キャリアとの接点を多く持っている。スマートフォンに関しては実績を残すことができず現在は撤退状態にあるものの、かつてと比べると同社のスマートフォンの品質は大幅に向上しており、SIMフリー市場で大きな実績を残しているという強みも持っている。ゆえに後は防水・防塵、そして現在も採用に消極的なFeliCaなど、日本市場のニーズに応える対応さえ進められさえすれば、ファーウェイのスマートフォンがキャリアから投入されても何らおかしくない状況にあるのだ。

もちろんこれは、あくまで筆者の推測に過ぎない。だがSIMフリー市場が伸び悩む中で、ファーウェイがさらなる成長を求めるには、キャリアからの販売が不可欠なのもまた確かである。それだけに、来年はファーウェイのスマートフォンが、キャリアから再び登場するか否かが、大きな注目ポイントの1つになってくるのではないだろうか。