筆者が住む東京西郊の八王子市は人口56万人余の学園都市として知られ、大学も多い。外国人も1万人以上在住し、大部が留学生である。電車に乗り合わせたり道路で行き合ったりすると、なるべく声をかけるようにしている。

 ほとんどが高等教育で来日している留学生なので、勉強と日本理解に尽力し、帰国後は生計とともに両国の架け橋となることを意識した若者のように見受けられる。ところが、語学留学などで来ている外国人には問題山積のようである。

 2008年に始まった「留学生30万人計画」の下、平成28年(2016)度の留学生数は約25万8000人となっている。

 トップ3の中国約9万8000人、ベトナム約5万4000人、ネパール約1万9000人で留学生全体の約72%を占めている。この中には語学や専門学校で学ぶために来日している者も多く含まれている。

 また、1993年に始まり、農漁業や建設、食品製造、そして本年初めて人を対象とする「介護」が加わった技能実習制度がある。日本で学んだ技能を母国に移転することを目的に途上国から受け入れており、平成28年度は約21万1000人である。

 建前は技能の習得と移転であるが、現実は労働力の補充となっており、また、送り許や受入国の関係機関への管理費などが実習生の給与から天引きされ、日本人との格差などから失踪したりする問題が発生している。

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外国人による事件の頻発

 筆者は1975年に初めて米国に行き、驚いたことがあった。デパートの背広などの商品が盗難予防のために鎖で結わえつけられていたことであった。

 当時、日本は石油ショックに見舞われ、夜間にガソリンが抜かれる事件なども時折起きていたが、デパートの背広などが盗まれる話は聞かれず、先進国の米国とは何だろうと考えさせられたことがあった。

 ところが最近では、スマートフォン端末やパソコンなど、あるいは少し高価な商品などは細い鎖や磁石などで結わえつけられ、またゲームソフトやプリンターインクなどはケースや引き換えカードが置かれ、本物は会計時に渡されることも多い。

 店舗の有効活用と盗難予防策などが関係しているようだ。

 盗難を含む各種事件が日本人と外国人の間にどんな割合で起きているか詳らかでないが、時折、外国人による組織的な犯罪が報道される。

 2000年代初頭、留学生や技能実習を隠れ蓑に、日本を荒らしまわった中国人グループに爆窃団というのもあった。

 窃盗グループを率いた中国人は財をなし、帰国してプール付の豪華な家で生活しているというルポもあった。本国に帰っても日本で育てた一味は“仕事”を続けており、分け前はしっかり貰らえるシステムを作り上げているのだ。

 2010年くらいまでは中国人による事件が断然多く、摘発件数は年間1万件前後で推移していた。しかし、東日本大震災を機に多くの中国人が帰国し、摘発件数も半数以下となり2015年にはベトナム人の摘発が最多となり、2556件となっている。

 ベトナム人留学生は学生同士のネットワークから母国の犯罪組織につながり、共謀するに至った事例もある。

 窃盗グループの盗品はいったんベトナム人女性のところに集積され、ベトナム航空の客室乗務員に渡って本国に持ち込まれて販売される。客室乗務員のセキュリティ・チェックが甘いことを利用してベトナムに密輸していたのだ。

 ガーナ人は、留学生として来日したネパール人の在留資格を自分の会社に雇用する形で就労可能な資格に不正に変更する手助けをしていた。

 このガーナ人は語学を目的に来日した就学生(現在は留学に統一された)であったが、留学よりカネを稼ぐ方を選んだというわけだ。

 首都圏郊外のマンションには中国、タイ、ベトナムなどの外国人が多く住み、それぞれのコミュニティをつくっている所もある。ある棟はベトナム人専用のようになり、そこでは大麻の栽培から工場まで運営していた事例もある。

 送り出す発展途上国と受け入れの日本の実情から、金儲けのために来日したエセ留学生や技能移転を目指していない者も多く入国している。

 また、初心は勉強や技能習得を目的に日本にやってくる者たちであっても、借金返済のため、アルバイトに明け暮れ学業どころでなくなり、また実習先の業務が単なる過酷な労働などから失跡する者も多くなっている。

 一時はATMが根こそぎ持ち去られ様な事案もあった。詐欺、窃盗、違法薬物製造など、数え上げればきりがない。これらの多くが留学生や技能実習生として来日しながら、失踪して不法滞在者となった外国人によって引き起こされている。

外国人留学生の実体

 法務省は中国、べトナム、ネパール、ミャンマー、スリランカ5か国からの語学学習志望者の受け入れ審査の厳格化に今年7月から乗り出した。この5か国からは留学名目で来日しながら、実際は出稼ぎ目的の偽装留学生が多いとみられるからである。

 以前は語学学習での来日は就学生として、高等教育の留学とは別扱いであった。

 しかし、福田康夫政権が2008年に打ち出した2020年までに「留学生30万人計画」を実現させるためには、本来の留学生(08年時点で約12万人)では達成の見込みが立たない。このため、語学習得で来日する就学ビザを留学ビザに統一する知恵が編み出された。

 この結果、語学学校が乱立し、日本語教育振興協会(日振協)が認定しているものは2015年時点で336校であったが、日振協が認定していない学校を含めればおそらく500近くに増えているはず(出井康博著『ルポ ニッポン絶望工場』)という。

 沖縄にある日本語学校は、入学金や最初に支払う学費(約150万円)を目的にネパール人を呼び寄せ、アルバイトでもっと稼ぎたければ本土(内地)の語学学校に移ればいいと生徒に助言いているというから驚きである(安藤海南男「只今激増中 エセ留学生と外国人犯罪」『WiLL』2017 年6月号所収)。

 このように留学生への就労斡旋を公然と行う、看板だけのニセ学校が増えていることは、警視庁・組織犯罪対策部も承知しているようで、入管難民法違反(資格外活動の幇助)の容疑で逮捕者もでている。

 語学留学生として来日しても日本語がまともに話せず、同郷人がグループなど結成して事件の頻発につながる事象も出てきている。

 筆者はJBpress「加計学園問題は朝日新聞の社運を懸けた闘いだった フェイク・ニュースに惑わされずに、国家・国民の存続・安寧に尽力しよう」で、「Fランク大学の乱立」について書いた。

 安藤氏はこうしたFランク大学が、延命のために大量のエセ留学生を集めていると書いている。なお、Fランク大学の授業内容や巨額の補助金などについては、「週刊新潮」2017年1月26日号が特集している。

 もともと留学生は送り出す国がしかるべき審査を行い、日本に送り出すことになっている。

 しかし、送り出す国、受け入れる日本の語学学校、それらを斡旋する両国の関係機関などの暗黙の了解で、本当に日本語を学びたい学生ばかりでなく、日本で働きたい似非留学生も含めて数合わせをする格好になっていた。

 似非留学生を別にしても、日本語を学びたい留学生には週28時間以内のアルバイトが認められている。

 しかし、新聞配達では朝刊に早朝の3〜4時間、夕刊に午後の2〜3時間を要し、週35〜49時間となる。睡眠不足などからほとんどの学生が語学の習得どころではないようだ。

 しかも、新聞配達だけでは自分の生活も苦しいうえに、国元の借金を返せる目処も立たない。そこで掛け持ちのバイトをやることになる。いよいよ語学の研修から離れていき、失踪したりする者も出てくる。

 30万人の目標だけが先行し、留学の実態を伴わないどころか、犯罪者に仕立てるルートの一つにさえなっている現実が見えてきた。法務省が今年から適用し始めた審査の厳格化が「絵に描いた餅」にならないことを願いたい。

介護では会話が必要となるが

 少子高齢化は日本に多くの難問を突き付けている。2025年には介護職員38万人が不足するとも言われている。しかし、日本では少子化の影響やIT産業などへの関心から介護福祉士養成校の生徒は減る一方(平成25年度約1万3000人、同29年度約7200人)である。

 今では留学生を受け入れないと養成校自体の経営が成り立たず、消滅の恐れがあるといわれる。平成25年の留学生は21人であったが、同29年は591人となり30倍の増加である。

 介護に関して、今年秋には2つの制度改革が行われた。

 1つは9月から施行された改正出入国管理法で「介護福祉士」の資格を取得し、就職先が決まれば「在留資格」が認められるというものである。介護のリーダー的な存在として一人前になって、帰国後はこの分野の開拓に貢献することが求められている。

 もう1つは11月から技能実習制度に「介護」が加わったことである。在留資格も5年まで延長された。これで、技能実習は77職種に拡大した。

 従来の技能実習が、実際は労働者として受け入れられてきたように、介護の「技能実習生」も介護士として活用する意志が見え隠れしているとされる。

 従来の技能実習は「もの」を相手にする業種であったが、介護は初めて「人」に対するものである。

 日本人の介護でも、近年事件が目立つようになってきた。これは介護要員に比して、要介護者の急増で負担が大きくなっているのが原因しているとされるが、意思の疎通にも問題があるようだ。

 技能実習生を単なる労働力として受け入れてきたこともあるが、他方、日本語や実習のスキルに乏しいことが制度発足の当初から指摘されてきた。

 そもそも実習生の国には、日本で実習する業種がないか、あっても進んでいないなどからスキルを云々する以前に問題があったということもある。

 日本の要求に応えるべく、書類上で「スキルあり」の格好に体裁を整え、双方が暗黙に認めあってきたのが現実とされる。そうしなければ制度維持上から双方に支障が出かねなかったのである。

 また、真剣に日本で技能を習得しても、本国では生かせる場がなく、実習とは関係ない仕事をやるものが90%に上がるというデーターもある。

 こうしたことから、在留資格がなくなっても帰国せず、不法滞在する道を選ぶものも出る状況であったのだ。

 介護は人に関することであり、日本人でも事件や事故につながることがしばしばである。外国人介護では意思疎通が懸念される。現に会話などでは日本人の支えが欠かせないという状況も報告されている。

朝日は新聞留学生の生みの親

 朝日新聞は今年1月10日付社説で、「外国人との共生」をテーマに、「日本で暮らし、働く意欲と覚悟がある外国人は、単なる労働力ではなく生活者として迎えるべきだ」と主張し、代表例に技能実習制度を取り上げている。

 また、同11月20付は1面6段(うち写真2段)と2面のほぼ全部を使って「『技能実習』 建前に限界」の見出しを掲げ、「技能」が海外に渡らない現実を炙り出している。

 中見出しは「帰国者大半 関係ない職」「経歴偽り 来日要件パス」となっており、ベトナムとミャンマーでの実情ルポである。

 まとめ的な「視点」として、英国の例や識者の意見を織り交ぜながら、「実習制度が当面の人手不足を和らげ、『人口減』に真正面から取り組む機運をそいでいる。実習制度という『茶番』に幕を引き、秩序だった外国人受け入れ策に踏み出すときが来ている」と勧告する。

 このように、技能実習制度を厳しく批判する朝日であるが、留学生についてはなぜか書かない。

 出井氏は「大手紙のなかでも、とりわけ朝日新聞には外国人労働者に寄り添うスタンスの記事が頻繁に掲載される。外国人実習生をめぐる問題などでも、彼らへの『やさしさ』が目立つ」と言う。1月と11月の記事も正しく「やさしさ」の表明である。

 「しかし、外国人労働者で今、最もひどい状況に置かれているのは実習生ではなく、留学生である。彼らは日本人が嫌がって寄りつかず、しかも実習生すらやらない仕事を低賃金で担っている。そんな職種の典型が、新聞配達の現場なのである」と告発するのだ。

 新聞配達で留学生が身を立てる嚆矢は朝日新聞がベトナムの語学学校と連携して始めた朝日奨学会による招聘奨学生であるとされる。

 奨学生になると、2年間語学学校の学費を負担してもらえ、アパートも提供される。語学学校卒業後も、専門学校や大学に進学して新聞配達を続けることもできる。

 朝日奨学会とは無関係に、個々の販売所がベトナム人留学生をアルバイトとして雇うケースも急増しているという。こうしたアルバイトを含めると、「首都圏の朝日新聞販売所だけで少なくとも500人以上のベトナム人が働いているとみられる」と出井氏は言う。

 また、「出稼ぎ目的の留学生たちが置かれた状況のほうが、実習生よりもずっとひどい」と述べ、「現在、日本の底辺の仕事に就き、最も悲惨な暮らしを強いられている外国人は、出稼ぎ目的の犁響留学生″たちだ」と断言する。

 朝日奨学会は販売所に文書を配布し、週28時間の労働時間を守るよう求めているそうであるが、実態は違法就労を強いられている状況である。

 しかも、日本人には残業代を支払っても、外国人には「法律を逆手にとって残業代を支払わないですむ」(出井氏)ので、「週28時間以内」という労働時間の制限は、「ベトナム人を雇う販売所にとっては都合がよいシステム」だという。

 こうした留学生の問題を取り上げれば、「自らの配達現場で横行する『違法就労』にも火の粉が及ぶ。そのことを恐れ、新聞は『留学生』がいくら日本でひどい目に遭っていようが、記事にしようとはしない。そして、新聞社と資本関係のあるテレビ局も、新聞に気を遣い、留学生問題については触れない」とも述べる。

 インターネットでも朝日や毎日新聞を配布する留学生の惨状が書き連ねられている。欧米の人権団体などでは日本の技能実習生を「現在の奴隷」と呼ぶところもあるようであるが、これに習うと、新聞配達の留学生たちは「奴隷以下」となってしまう。

留学生問題への警鐘こそ必要

 1月の朝日社説のタイトルは「外国人との共生」「生活者として受け入れを」である。

 「いわゆる移民政策は考えない。これが政府の方針だ」と述べながら、「未来への投資として、定住外国人を積極的に受け入れていくことが求められている」との提言をまとめた「未来を創る財団」の提言などを引用している所からは「移民の推奨」のように聞こえなくもない。

 英国がEU脱退を決めたのは移民問題も大きい。シリアにIS(イスラム国)が進出して以降、シリア難民が欧州に押し寄せた。これがEUにきしみをもたらし、ついに英国の脱退まで発展した。

 こうした現実を考えると、難民や移民の受け入れが、「共生」や「多様性」などの言葉で語られても、現実は生易しいものではないことが分かる。

 細部は省略するが、日本では難民の認定は少ないが、難民申請をしている期間(審査等で約3年であるが、繰り返し可能で申請4回では12年となる)は仕事も可能な日本であり、世界一難民を受け入れていると解釈する識者もいる。

 実習生以上に多くの外国人を受け入れ、技能実習制度以上に建前と本音が乖離しているのが、留学生30万人計画である。

 朝日新聞は朝日奨学会と資本関係はないというが、奨学会が招聘奨学生として外国人を来日させ、学生生活と新聞配達を両立させるシステムを構築している。

 技能実習制度や留学制度にかかわる関係機関は、官僚や政治家、そして企業幹部の天下り先に利用され、実習生や留学生から準備金や給料を搾取している実態も浮き彫りになっている。

 留学生の状況が技能実習生以下である部分があるというならば、留学生問題にこそ警鐘を鳴らす必然性があるのではなかろうか。

筆者:森 清勇