【画像】眼光するどすぎな小出部長

活動第39回[前編] 『全員死刑』

参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)



Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は『冷たい熱帯魚』などの実際にあった凄惨な殺人事件をベースに描いた作品に心奪われがちな小出部長の希望で、『全員死刑』を観ることになりました……。


 


原作である犯人の手記に忠実だというのがすごい


──「みんなの映画部」連載39回目。26歳の期待の新鋭・小林勇貴監督の凶悪犯罪映画『全員死刑』でございます。まずは小出部長からひと言お願いします。


小出 今日来なかったメンバー、全員死刑!(笑)


福岡 あはははは。


──はい、ありがとうございました。


福岡 ありがとうございます。良い締め。


──締まってない、締めちゃダメ。


福岡 でもこれは観ておいて良かったね。めっちゃ面白かった。


小出 観てるときに他のお客さんからも笑いが漏れたりとか、実際自分でも笑っちゃう場面がたくさんありましたけど、これが原作である犯人の手記にだいぶ忠実だっていうのがすごい。


福岡 へえ、これ実話なんだ。


小出 実話です。この本が原作で。


取材日に持ってきてくれた小出部長の私物書籍。ふせんの数がハンパないです。


福岡 あっ、写真載ってる。これが映画のモデルになった本物の犯罪一家?


小出 そう。2004年に福岡県大牟田市で起きた連続殺人事件の犯人で、加害者である家族4人全員に死刑判決が下ったわけ。その一家の次男が書いた獄中手記を中心に構成したのが、ノンフィクションライターの鈴木智彦さんによるルポルタージュ本『我が一家全員死刑』(コアマガジン刊)です。元々は『実話時代BULL』という雑誌で連載してたやつ。


──最初、単行本が2010年に刊行されて、2014年に新書版が出ました。今は『全員死刑:大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記』のタイトルで小学館文庫からも出ています。


小出 この本を見てもらえればわかるように、映画の主人公に当たる一家の次男って、さすがに(映画の主演の)間宮祥太朗みたいなイケメンではないんですよね(笑)。父親がヤクザの組長で、家族そろって強面でガタイがいい。その一家の威を借りて違法な金貸しをやって、めっちゃ儲けてたのが被害者の一家ですよね。


いっぽうの加害者一家は借金まみれだったから、アイツらの金をいただこうと殺害を企てる。……といっても、彼らの行動は行き当たりばったりなわけですよ。例えば映画の後半、車を沈めに行く時とかも、劇中よりも実際のほうがもっと右往左往していたようで。


福岡 へえ。


小出 わざわざ家帰って出直したりとかね。あと、映画でも途中でコンビニに寄るじゃないですか。実際はもっと寄ってるっぽいんですよ。人殺してんのに。


──足つきまくってる。


小出 そうそう。本当にバレないようにする気あるのかなっていう犯罪。ちなみに映画で、六平直政さん演じる加害者一家の父親が自殺を試みたものの、銃弾が頭の中を回って助かったって冗談みたいなシーンあったでしょ。あれも実話だし。


福岡 マジで?


──あれって本当に時々あるらしいね。


小出 らしいですよね。出頭したときに捜査員の隙を見て頭撃ち抜いて死のうとしたんだけど、失敗しちゃった。全部の罪を被ろうとしたんだろうけどね。


福岡 頭撃ち抜くって、どうやって?


小出 拳銃を隠し持ってたの、出頭した時。だけど、劇中でも使ってたような小型拳銃だったから、弾丸が頭蓋骨の外側を1周して、一命取りとめちゃった。


福岡 すごい話やな〜。


小出 その後の裁判でも、父親以外が罪のなすりつけあいをするわ、長男は刑務所を脱走するわ、次男は裁判の退廷の時に「メリークリスマス!」って叫ぶわで、むっちゃくちゃな事件。


で、さっき紹介した原作は次男が拘置所で書いた手記を中心に構成されてるんだけど、行き当たりばったりな犯行内容とマンガチックな文章が合わさった結果、“ケータイ小説”って感じの仕上がりになってて、読み物として興味深いし面白い。次男のフィルターを通すとこんな風になっちゃうのかよ、と。


福岡 実際の手記が載ってるの?


小出 載ってる載ってる。映画の締めのフレーズは原作と同じフレーズなんだけど、度肝を抜かれるよ。



これまでの小林勇貴監督作品はほとんど観てる


──小出部長は小林勇貴監督の以前の映画もちゃんと観ているんですよね。


小出 はい。これまで4本観てるんだけど、今までは自主製作、完全なインディーズ映画だったでしょう。自分で撮って、自分で編集して、出演者もみんな友達とか、本物の不良とか暴走族の人たち。だから役者さんの演技とは違う、画の迫力とかエネルギーがすごい。


『NIGHT SAFARI』(2014年)が映画祭でグランプリを獲ったり、ゲリラ的な宣伝方法が話題になったり、じわじわ評判が広がっていって、僕が初めて観たのが『孤高の遠吠』(2016年)っていう映画。不良少年の先輩後輩・上下関係に起因する、いやーな感じの緊張感がずっと続くのよ。


ロケ地は小林監督の地元である静岡の富士宮なんだけど、街中でゲリラ撮影をやったりとかしていて。実際の公道で逆走してるシーンとかあるんだよね。


福岡 マジで?


小出 これどうやって撮ったんだろうって思ったし、映画として仕上げちゃって大丈夫なのかな? と心配にもなったし(笑)、非常にスリリングな映画体験だった。


アイデアも行動力もすごいなぁと思うんですけど、小林監督の出自的なところは最近出た『実録・不良映画術』(洋泉社)っていう自伝的な著書に詳しくてですね。


ヤンチャに育つ家庭環境や土地柄的な部分もうかがえる一方で、子供のころからお母さんにホラーとかスリラー映画を観せられていたり、おばあちゃんの持っていた『漂流教室』や『殺し屋1』とか刺激的なマンガを熱心に読んでいたという文化的素養もあって。


福岡 え〜。すごいね。英才教育やな。


小出 ヤバいマンガや映画が好きで追い求めつつも、中高では派手に喧嘩をしたりしていた。でも、高校卒業後はデザイナーになろうと上京して専門学校に通い、美術史や映画作りを勉強したりする。


こういう遍歴を知ると、根っこの部分は文化系というか、オタクな人なんだろうなと思うんですよね。


──たしかに映画にも、どこか研究家体質が見えるというか。特に今回の『全員死刑』はデヴィッド・リンチとかカルト映画の文脈を踏まえている印象もあります。


小出 すごい熱心に自分の興味があることを追っかけてる感じ。学びたいし、自分の作品を通して好きな作品とも繋がりたいし、自分でいろんな発見をしてみたいんじゃないかなぁと。そういう、作品に自分の溢れる気持ちを全部ぶつけたい、みたいな意識を感じられるのがすごく清々しいんですよね。


で、今回の作品がいよいよプロデビューというか、商業映画デビューなわけなんですけど、これまで通り清々しくて。そこに素直に感動したなぁ。


TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)


感想会開始前に劇場パンフレットを読みふける小出部長。幼少期に犯罪心理学に興味があったというせいなのか、眼光するどすぎ。


[後編](12月1日配信予定)につづく