アメコミ・ファンと映画ファン 『ジャスティス・リーグ』をめぐる二つの評価軸

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 先週末の映画動員ランキングは、『ジャスティス・リーグ』が、土日2日間で動員13万3500人、興収2億400万円を記録して初登場1位。初日11月23日(祝日)からの4日間累計では動員28万5000人、興収4億3200万円。ちなみに今年8月に公開された『ワンダーウーマン』は公開日(金曜日公開)から3日間で興収3億7024万円。2016年に公開された『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』は公開日(金曜日公開)から3日間で興収5億0112万。集計期間の違いはあるものの、『ワンダーウーマン』とほぼ同水準、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の3日間の成績に4日間でも及ばないという今回の『ジャスティス・リーグ』の成績は、DCエクステンデッド・ユニバース最初のクライマックスとなる(マーベル作品でいうところの『アベンジャーズ』一作目に当たる)ヒーロー全員集合作品としては物足りないと言わざるを得ない。

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 日本の1週間前に公開されたアメリカでも、『ジャスティス・リーグ』の微妙な成績は話題の的となっている。オープニング3日間の興行収入は9384万2239ドル。実は、2013年公開の『マン・オブ・スティール』から始まるDCエクステンデッド・ユニバースでは初めてオープニング興収1億ドルを割る結果となってしまった。それでもダントツで初登場1位ではあったわけだが、同フランチャイズの直近の作品『ワンダーウーマン』がDCエクステンデッド・ユニバース史上最高の累計興収(4億1256万3408ドル)をあげたばかりだっただけに、興行関係者の間では期待外れ感が広まっているという。

 もっとも、特に海外では公開直後からファンから多くの失望の声があがっていた『マン・オブ・スティール』や『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』と比べて、今回の『ジャスティス・リーグ』を擁護するファンは少なくない。ザック・スナイダー監督の身内の不幸によって、完成直前に『アベンジャーズ』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の監督でもあるジョス・ウェドンが仕上げをするというアクロバティックな制作体制がとられた今回の『ジャスティス・リーグ』(ウェドンは今後、『バットガール』の監督にも起用される予定)。そうした舞台裏のゴタゴタを抜きにしても、本作で本格的にシリーズ初登場となったアクアマン、そして完全な初登場のフラッシュ、サイボーグらの魅力を、ジャスト2時間で描ききってみせたその軽妙で整理された語り口は、これまでのDC作品にはないものだ。

 そもそも、特に『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』以降定説のようになってしまった、「高く評価されるマーベル映画/あまり評価されないDC映画」という現象は、海外の主要映画レビュー・サイトが元となった風説であり、あくまでもその評価は「映画ファン」からのものである。アメコミ・ファンの間では、コミック版のビジュアルにより忠実な近年のDC作品を支持する声も少なくないのだが、それが映画レビュー・サイトでの評価には反映されにくいという側面があるのだ。

 かく言う自分も、相対的にはマーベル映画の方が映画としての完成度の高い作品が多いという評価だが、必ずしもすべてのマーベル映画が素晴らしいわけではないし、必ずしも近年のDC映画がマーベル作品に劣っているわけではないとも思っている。ただ、一つ問題を挙げるとするなら、マーベルの作品はどの作品も個々の狙いの照準が定まっていて、その上でマーベル・シネマティック・ユニバース全体の方向性にも迷いが感じられないのに対して、DCエクステンデッド・ユニバースの作品は結果や批評に左右されがちで、今後の方向性が不透明であること。今回、本来なら必勝が運命づけられていた『ジャスティス・リーグ』でのつまづきの原因も、作品単体への評価ではなく、DC映画のブランド全体の信用が落ちていることの表れだったのではないかと思う。次のDCエクステンデッド・ユニバース作品は、ジェームズ・ワン監督による来年末公開(本国)の『アクアマン』。まだ時間はたっぷりある。体制の立て直しに期待したい。(宇野維正)