ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表はオール国内組で東アジアの頂点をかけた戦いに挑む【写真:Getty Images】

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国内組のラストチャンス。最低限の目標は「優勝」

 日本代表は来月9日から「EAFF E-1サッカー選手権2017 決勝大会」に挑む。これまで東アジアカップとして親しまれてきた大会だが、海外組と浦和レッズの選手を招集できず、全員がJ1クラブ在籍選手のチームで戦わねばならない。今大会はロシアW杯に向けた国内組の“ラストチャンス”という位置づけでもあり、東アジアのライバルたちとの戦いの中で選手たちの実力と覚悟が問われる。(取材・文:河治良幸)

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 12月に東京で行われるEAFF E-1サッカー選手権2017 決勝大会(以下、E-1)に向け、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は日本代表メンバー23人を発表した。

 今回は国際Aマッチデーではないため“海外組”は招集できず、同時期にUAEで開催されるFIFAクラブW杯にアジア王者として参戦する浦和レッズの選手も対象外に。また直前にMF山口蛍が負傷したため招集外となったが、初選出5人を含む非常にフレッシュなメンバーとなった。

 ハリルホジッチ監督が“最終ストレートに入る前の最後のテスト”として位置づけることもあり、“国内組”の生き残りをかけたアピールに注目が集まるのは当然だろう。しかし、指揮官が「目標は優勝であるべき」と強調しているように、最下位に終わった2年前のリベンジを果たす意味でもホームでライバルの韓国、前回王者の中国、さらに前回大会で敗れた北朝鮮という3ヶ国に勝利し、チームとして優勝することが何よりのアピールにつながるはずだ。言い換えれば、もし優勝できなければ個人のアピールも大きく限定されてしまう。

 選手たちの置かれた状況としては2年前の大会よりむしろザックジャパン時代の4年前に韓国で行われた大会が重なる。それまでのW杯最終予選で“メンバー固定”とも言われる選手起用をしてきた当時のアルベルト・ザッケローニ監督は海外組を招集できない状況で「以前から気になっていた」と語った青山敏弘や柿谷曜一朗、ロンドン五輪世代の山口蛍などを抜てきした。

 大会前は「彼らがフルメンバーのA代表に割り込むことは難しい」という意見も多かったと記憶しているが、その中で選手たちは個人のアピール以上にチームとして結束を高め、最後は“完全アウェイで韓国を破り優勝したのだ。あの時の一体感と高揚感は東アジアの大会という規模や一般的な価値を超えて、鳥肌が立つレベルだったことを覚えている。

 その大会からMVPの山口をはじめ青山、柿谷、森重真人、大迫勇也、齋藤学がブラジルW杯の最終メンバーに残ることとなった。また最終メンバーに残れなかったが、その後の親善試合なのでチャンスを与えられた選手は枚挙にいとまがない。彼らにとって結果的に大きなアピールの機会になったわけだが、優勝を目指す中で自分が何をするべきかを意識してプレーしたからこその結果だろう。

ロシアW杯へのラストサバイバル。優勝逃せば“全滅”の覚悟で

 勝利に飢えているという意味ではハリルホジッチ監督の心中にも並々ならぬものがあるだろう。日頃から「負けるのは大嫌い」と主張する指揮官は明らかな格上に挑んだ11月の欧州遠征でも「もしかしたら10回に1回は勝てるかもしれない。そういう1回にしたい」と意気込んだが、その思いは打ち砕かれた。だが東アジアの3ヶ国を相手にホームで戦う今大会は現実目標としてタイトルを獲りにいく時だ。

 究極の目標が半年後のロシアW杯であることに変わりはない。そこから逆算すればE-1もプロセスの1つであり、結局のところはW杯本大会で結果を出すために“足りない部分”を埋められる戦力を発掘する必要がある。とはいえチームで優勝という結果を手繰り寄せることができなければ、W杯に出場する最終メンバー発表前の最後のテストマッチとなる来年3月に向け、“海外組”を中心とした常連メンバーとの序列を覆すことは困難だろう。

 極端な話、優勝できなければ今回の新戦力や復帰組は全滅するぐらいの意識で臨むべきだ。もちろん継続的に招集されている井手口陽介や杉本健勇なども、結果次第では評価を下げる可能性もある。

 今回はAFCチャンピオンズリーグを制してアジア王者になった浦和から招集できなかった一方で、J1で優勝タイトルを争う鹿島アントラーズから6人、川崎フロンターレから5人を選ぶなど、一種の“寄せ集め”になるチームとしては連係面の不安が少ないメンバー構成になっている。

 また海外組のキャプテン長谷部誠がいない中盤には日本代表通算90キャップを誇るベテランの今野泰幸を復帰させるなど、単にフレッシュな陣容で固めるのではなく、メンタル面の経験値やバランスも意識した構成だ。そこからも指揮官が求めるのが単に個人のアピールや経験でないことが伝わってくる。

 12月4日から合宿が始動し、翌5日の夜には「Jリーグアウォーズ」を挟むなど難しい部分もあるが、9日の北朝鮮戦からはじまり、12日の中国戦、そして16日の韓国戦までの13日間でチームとしていかにまとまり、E-1のタイトルを勝ち取るための戦いができるか。その中にこそ個人のアピール要素が詰まっているのだ。

(取材・文:河治良幸)

text by 河治良幸