ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を、米国はテロ支援国家に再指定した(写真:ロイター)

11月29日に3度目となる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮。一部では、11月20日にドナルド・トランプ大統領が北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定すると同時に、北朝鮮に対する追加制裁を行うと宣言したことに対する反発とも取りざたされている。が、脅迫まがいな発言をしているものの、トランプ大統領の外交政策は、いくつかの特別な例を除けば、米国のそれまでの大統領とは大きく変わらない。

「リバランス」という言葉は、すでに意味を持たなくなっておりまったく使われなくなったが、トランプ大統領は引き続きその大枠、つまりは、米国においてアジアの重要性が増していることを認識し、結果としてより密接にかかわるべきだという考えを持っている。

米国の北朝鮮戦略の一貫性は

米国の外交政策に一貫性が保たれていることは、最近の少なくとも現時点までの北朝鮮政策を見れば明らかだ。今月初め、米国家安全保障文書館は、ジョージ・H・W・ブッシュ政権(1989〜1993年)時の北朝鮮政策に関する機密文書を公開したが、現在、世界各国の政府が対北朝鮮の最善策を模索する中で、この文書にある3つの点が際立っていた。

1つは、25年前、北朝鮮に対する圧力を強めることによって交渉に向かわせようとする中で、一方的かつ国際的な「ワナ」――それぞれの国家が単独で、また、国際的な協力を通じて「包囲網」を仕掛けることに重点を置いていた点だ。

2つ目は、冷戦直後にはすでに、中国はその影響力を利用して北朝鮮を対話に仕向けるよう促されていたが、中国政府が自らの存続にかかわるようなことをするかどうかに疑問を抱いていた点だ。中国政府が北朝鮮の政権崩壊を招いてしまうほどの圧力をかけるかどうかに対して国際社会は疑いを持っていた。

そして3つ目は、今と同じように、米国の政策立案者は、米政府や同盟国がこのプロセスを通して足並みを確実に合わせられるように、米国の取る行動一つひとつを「コントロール」することに気を煩わせて、細心の注意を払っていたという点だ。

トランプ大統領が、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と発言するときは、勢いがあるように見えるかもしれない。が、その姿勢は従来の米国のそれと変わっていない。

2012年、当時太平洋軍司令官であったサミュエル・ロックリア氏は、太平洋空軍の北朝鮮半島での軍事計画について尋ねられたときに、「米韓同盟はつねにあらゆる選択肢を考えている」と答えたが、トランプ大統領の発言はこれと変わらない。

つまり、責任ある外交政策とは、あらゆる偶発事象を調べ、事前にそれを見越しているということだ。トランプ大統領がその選択肢を強調するのは、米国政策のニュアンスや繁雑さよりも、彼の心理状態によるところが大きい。

北朝鮮の行為は極めてテロリスト的

米国の公式の政策は「圧力を最大化」することであり、これにはいくつか目的がある。1つは、オバマ前大統領の政策と差別化を図ることで、これはオバマ前大統領が北朝鮮に最大限の圧力をかけなかったことを暗に指摘している。トランプ大統領はこのような間違いは犯さない、というメッセージだ。 これは、どんな関係においても、勝者と敗者が存在して、圧力はつねに両者を分ける手段であるというトランプ大統領の考え方と合致している。

この政策は、昨年11月に当選して以来、トランプ大統領と最も近しい国際社会における友人であり、最大の支持者の1人である安倍晋三氏が首相を務める、日本の利害とも一致している。また、中国の北朝鮮に対する圧力を強めてほしいという要望にも応えている(軍事的選択肢の重視は、中国政府を刺激し、より大きな行動を促すことによって、戦争の可能性を未然に防ぐことを意図している)。

そして直近の例は、米国が北朝鮮をテロ支援国家に再指定すると決めたことであり、トランプ大統領はこれについて「長期にわたって延期されてきた。もっと前からこうすべきであった」と語っている。

北朝鮮の行動は極めてテロリスト的だ。何の罪もない一般人の近くで、化学薬品を使って殺人を犯した工作員がいる以上、このレッテルをはがすのは難しい。ただし、この行為自体は実質的に何か意味があるというよりも、象徴的な行動とみるべきだろう。ただ、これに対して科された制裁は一方的なものであり、そもそも、米国と北朝鮮の企業や個人間での貿易はとっくに行われなくなっている。

多くの法律学者は、テロ支援国に指定することは、政治的であり、恣意的でさえあるとも指摘している。今回の決定について、北朝鮮による拉致が純然たるテロリズムと見なされ、ブッシュ前大統領が6カ国協議を進めるために北朝鮮をテロ指定国家から外したことに対して失望感を示した日本では、おおむね歓迎されている。

さらにこれは、米国が敵対的な政策を持っているという北朝鮮の非難を裏付け、それゆえ、2国間関係における問題の根源が、北朝鮮政府だけでなく、米政府にも多く見られるという北朝鮮側の主張を正当化することになるだろう。

政府が気まぐれで戦争を始めることはない

経済的、外交的、軍事的であろうと、圧力はその政治的目的を果たすはずである。政府が気まぐれで戦争を始めることはない。トランプ大統領は韓国での演説で、「国政侵害の終結、弾道ミサイルの開発の停止、完全で検証可能な、そして完璧な非核化」をすると強調。北朝鮮への圧力と引き換えに、米国とその同盟国は、「よりよい未来への道」を提供すると述べた。

ただ、「米国の敵意」という観点から見ると、このトランプ大統領による具体的な要求と、その結果のあいまいな提案が、外交的な解決を促すとは考えがたく、これは北朝鮮と対峙する際のより大きな問題を反映している。

米国と、この取り組みにおいて最も密接な同盟国である日本と、それほどでもない韓国は、この状況を解決しようと試みる際に、北朝鮮の主体性を認めてこなかった。

そもそも、北朝鮮が外交交渉に臨んだところで何を得られるのか(――それを示すものは、あったとしてもほとんどない)。それどころか、北朝鮮をこのプロセスにおける、情報が限られている当事者として見る向きすらある。外からの圧力によって決断する内容を決められてしまう、機動性のない「物体」のようなものだ。

このやり方は、すべての交渉が力を試す場であるトランプ大統領のような「肉食系」には向いているかもしれないが、北朝鮮の対処法としては現実的ではない。北朝鮮は長年にわたって圧力をかけられており、トランプ大統領が就任してから追加で科されたわずかな制裁程度では、北朝鮮の考え方は変わらなかった。

北朝鮮ウォッチャーの多くは、この対立解消のカギを握るのは時間だと考えている。この背後にあるのは、まずありえないが、中国が北朝鮮に制裁をかけることに真剣になれば、時間が経つにつれ北朝鮮は相当の打撃を受けることになるだろうという前提だ。しかし、一方で北朝鮮はミサイルと核開発を進めており、窮地に追い込まれ場合、危険な存在になりうる。つまり、これは懸念すべき組み合わせだ。

「話し合いに関する話し合い」は避けられない

北朝鮮と外交を通じて効果的にかかわるためには、北朝鮮政府が交渉から何を得たいと思っているのかを認め、考慮する必要がある。北朝鮮が望むものが与えられるべきだと言っているわけではない。その要求の中には、現実、そして合理的な考え方に反するものもあるからだ。こうした要求はむしろ、後に発生する駆け引きのきっかけとなる。

この状況では、「話し合いに関する話し合い」は避けられない。話し合いをするための話し合いを正当化するわけではないが、「前準備」は欠かせないだろう。これと同様に、問答するために座っているだけのこと、北朝鮮と対話の席につくこと自体が北朝鮮にとって、ある種の報酬であるという考え方は危険だ。とはいえ、北朝鮮の意図や行動に、疑念や疑惑を持つのをやめるべきではない。

北朝鮮の行動は、多くの点で、トランプ大統領が実業家であったときの行動を反映している。北朝鮮政府の行動は、将来の合意を順守するという信頼感を傷つけてでも、すべての抜け穴を悪用し、影響力を最大限に活用しようとするものだからだ。

トランプ大統領は、北朝鮮の論理に対して特別な洞察力を持っているのかもしれないが、圧力を外交的な成果に変える戦略は有していない。しかし、もしそうだとすれば、過去23年間と同様、米国の北朝鮮戦略は失敗し続けることになる。