米セクハラ問題の最終的な対象者はドナルド・トランプ大統領(以下、トランプ)だろうと思っている。

 いま米国ではほとんど途切れることなく、著名人のセクハラ問題が浮上している。ハリウッドの映画関係者から政治家にいたるまでの「糾弾の波」はとどまることがない。最終到達点は政界トップになる可能性がある。

 トランプのセクハラ問題に移る前に、今回のセクハラ問題に少し触れたい。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

過去30年、重ねてきた罪の数々

 ことの発端はニューヨーク・タイムズが10月5日、映画プロデューサー、ハービー・ワインスティーン氏のセクハラ問題を暴露したことである。同氏によるセクハラは過去30年ほども続いており、何人もの女性被害者が出ていた。

 被害者が声を上げたことで、これまでセクハラを受けてきた女性たちが次々に立ち上がった。その矛先が違う著名人にも向けられた。

 俳優ケビン・スペイシー氏、共和党ロイ・ムーア上院議員、民主党アル・フランケン上院議員、さらに著名な放送ジャーナリストのチャーリー・ローズ氏など、米国では誰もが知る人物ばかりである。

 「こんな人もセクハラをしていたのか」といった感想しかない。

 個人的な印象としては、ローズ氏がCBSテレビを21日に解雇されたことが衝撃とさえ言えた。というのも筆者が在米中、同氏の冠番組を観続けていたからだ。

 インタビュアーとして誰に対しても平等でありながら、鋭く切り込んでいく姿を感心しながら観ていた。すべての罪に対して立ち向かう姿勢を持っているようにさえ思えた。

 そんな同氏が1990年から20年以上も、複数の女性に対してセクハラをしていたという事実は驚愕であり落胆ですらあった。今ではテレビカメラの前での発言がすべて綺麗ごとに映ってしまう。

 ローズ氏の解雇はワインスティーン氏のセクハラ問題がなければ起こらなかっただろう。今回の「糾弾の波」は改めて米女性たちを立ち上がらせたと言える。

泣き寝入りする女性が意外に多い

 米国人女性は自己主張をしっかり行い、強靭な精神を持っていると一般的に思われている。米国で暮らした25年で得た筆者の印象もそうである。

 しかしセクハラや性的暴行などで、泣き寝入りしてきた女性が実はたいへん多いことを改めて知った。

 いくら米国でも、セクハラ被害を受けたすべての女性が声を上げるわけではないのだ。セクハラよりも重い強姦という罪であっても、被害届けや告訴に踏み切らないこともある。

 公判になれば詳細を明かさなければいけないし、被害者と再び顔を合わせることになる。

 しかも事件を忘れようと努めている人にとって、細部を蒸し返されることは苦痛以外の何ものでもない。PTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しまれている方も少なくないはずだ。

 しかしワインスティーン氏の告発が「糾弾の波」を生み出した。俳優スペイシー氏のセクハラ問題もそうである。

 今回のセクハラ事件がなければ、スペイシー氏が少年に性的暴行をした事実は封印されたままだっただろう。同性愛者であることを明かすこともなかったはずだ。

 スペイシー氏は2016年、ヘザー・アンルー氏という当時18歳の少年に性的暴行を働く。けれども事件は先月まで封印され続けてきた。被害少年の母は元ニュースキャスターだ。ツイッターで記している。

勇気をもって告発に動き出した米国人女性

 「ワインスティーン氏のスキャンダルで勇気が出ました。いまが真実を追求する時です。最愛の息子がケビン・スペイシー氏に性的暴力を振るわれるまで彼のファンだったのに。ドミノが倒れたのです」

 ドミノがトランプを倒すことになっても不思議ではない。

 トランプが複数の女性にセクハラ行為をした疑惑は以前から報道されており、何も新しいニュースではない。しかしドミノが倒れだした。

 こままでトンラプはセクハラ行為を認めていない。認めないばかりか、虚偽と思える発言もしている。11月21日、セクハラ問題を受けてトランプは述べている。

 「女性というのは本当に特別の存在です。いま多くのことが明るみに出てきたことは大変尊いです。社会にとってもいいことですし、女性にとって何よりも何よりも重要です。(セクハラ問題が浮上して)大変嬉しく思っています」

 トランプ本人はセクハラという言葉を一切使わない。むしろセクハラによって苦しめられた女性の側に立とうとしている。

 だが昨年の大統領選の最中、トランプのセクハラ問題は浮上する。

 特に2005年、トランプがテレビ番組の収録外でマイクに拾われた下品な言葉が公表されてから、告発件数が増えた。下品な言葉はインパクトがあった。

セクハラ疑惑を完全否定し続けているが・・・

 大物が相手であれば女性は「やらせてくれる」と言ったのだ。さらにキスをしたり、体をまさぐれるとも言い放った。

 これで「トランプ候補」は終わるかと思われたが、生き残る。セクハラ疑惑を完全否定したからだ。

 2016年10月9日。民主党ヒラリー・クリントン候補との2回目の討論会で、司会者を務めたCNNのアンダーソン・クーパー氏が詰め寄った。

 「同意なしに女性にキスをしたり、体を触ったりしたことはありますか」

 トランプは「私ほど女性に敬意を払っている人はいない」ととぼけた。

 クーパー氏が再度「これまでそうした行為をしたことはありますか」と聞くと、「ないです」と返答。ニューヨーク・タイムズがインタビューでセクハラ問題について問いただした時も、「していないです」とセクハラ疑惑を否定した。

 しかし今、女性13人がトランプにセクハラを受けたと実名で糾弾している。

 その1人、ピープル誌の元記者ナターシャ・ストイノフ氏は2005年、フロリダ州でトランプにインタビューをした時、誰もいない部屋に連れていかれて強引にキスされたと述べている。メラニア夫人が別室にいながらの行為だったという。

13人が糾弾、その数はもっと増えそう

 また別の女性サマー・ザーボス氏はトランプが司会を務めていたテレビ番組に出演した2007年、食事に誘われてから、強引にキスをされ、胸を触られた。

 実名を公表してトランプのセクハラ行為を糾弾しているのは13人だが、被害者の実数はさらに多いと思われる。

 13人の中には法的に告発した女性もいるが、トランプは弁護士を使ってかわし、否認し続けている。ただ爆弾は抱えたままで、信管は抜かれていない。

 ビル・クリントン元大統領がモニカ・ルインスキーさんとの性的関係が発端で弾劾裁判にいたったように、トランプが今後女性問題で政治的な責任を取らざるを得なくなることは十分に考えられる。

 セクハラ問題だけでなく、ロシア疑惑も含めて、クリントン大統領の時と同じように、メディアと検察の力で真実を明らかにしていく必要がある。それが公正というもののはずである。

筆者:堀田 佳男