年に2回のみ開放される源泉100%の幻の洞窟「岩風呂」

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雄大な山々に囲まれた静岡県静岡市の北部に位置する秘境の温泉地、梅ヶ島温泉郷。その歴史は古く、今から約1700年前、木を伐採していた人が発見したことにより始まったと伝えられている。大規模な開発が行われず、当時の面影を今に残す自然豊かな温泉は、2017年5月には国民保養温泉地にも指定された。

地元美女が静岡・梅ヶ島温泉郷でしっぽり【全20点】

梅ヶ島温泉・梅ヶ島新田温泉・梅ヶ島金山温泉・梅ヶ島コンヤ温泉の4つの総称である梅ヶ島温泉郷。戦国時代、この地を治めた武田信玄公は金山巡視の折にこの地の温泉がたいそう気に入り、以降、湯治場として栄えてきた信玄の隠し湯の1つだ。

当時より神経痛や創傷に効く湯として名を馳せていた梅ヶ島温泉郷。時代を越えて多くの湯治客が訪れ、現在にも残されている湯治客記録には、徳川家康や勝海舟など歴史的人物の名前がいくつも確認できる由緒ある温泉地だ。

梅ヶ島温泉に属する「おもいでの宿 湯の島館」は、信玄の隠し湯にちなんだ風・林・火・山と名付けられた4つの風呂が自慢の宿。五右衛門風呂と浴室に畳を敷いた空間が特徴的な「風の湯」、ヒノキの香りに包まれた「林の湯」、湯上り処に囲炉裏を配した「火の湯」、岩でつくられた洞窟風呂の「山の湯」と、それぞれ趣向の異なるお風呂が楽しめる。

泉質は単純硫黄温泉。神経痛、関節痛、疲労回復などの効能が期待できるという。肌にしっとり感が残る湯は湯冷めしにくい特徴を持ち、“美女づくりの湯”として親しまれている。

「おもいでの宿 湯の島館」から徒歩で5分ほど山を登ったところにあるのが「湯元屋」。日帰り入浴で梅ヶ島温泉を楽しめる「虹乃湯」や地元の物販品を取り扱うが、訪れた際に味わいたいのが同店の静岡おでん。50年以上続く伝統の味は、地元民をして“静岡で3本の指に入る”という隠れた名店なのだ。一番人気のこんにゃくのほか、定番の黒はんぺんなどがおすすめ。1本100円というリーズナブルな価格も魅力だ。

「湯元屋」前を流れる安倍川に掛かる橋、湯橋を渡ると市営浴場跡地に作られた「おゆのふるさと公園」へとたどり着く。展望デッキからは梅ヶ島温泉街を一望できるなど豊かな自然を楽しめる絶好のスポットだ。そして、公園内の山からは梅ヶ島温泉の源泉“硫黄泉”が湧出し、階段を登った山の中腹には源泉100%の洞窟「岩風呂」がある。

洞窟の岩肌からは約39度の硫黄泉が滴り落ちており、岩風呂を含め梅ヶ島温泉の各施設はここから湯を引いて使用しているのだ。普段は衛生管理のため、ガラスの扉で閉ざされるが、6月と12月には清掃を目的に解錠。さらにその際には、実際に入浴することもできる、まさに幻の湯場でもある。

また、梅ヶ島新田温泉に属する「黄金の湯」はナトリウム炭酸水素塩温泉、梅ヶ島コンヤ温泉に属する「露天風呂の宿 大野木荘」はアルカリ性単純硫黄温泉など、同じ梅ヶ島温泉郷内であっても異なる泉質が楽しめるのもポイントだ。加えて秘境でありながら、新東名高速道路新静岡I.C.からそれぞれの温泉まで1時間以内というアクセスの良さも魅力だ。

秋も深まり、冬本番の寒さを迎えるこの季節。梅ヶ島温泉郷で湯めぐりを楽しんで、贅沢な時間(とき)を過ごしてみては。【ウォーカープラス編集部】(東海ウォーカー・安藤康之)