――ドル/円の当面の予想レンジは?

 1ドル=110円は重要なポイントになっている。日銀短観における輸出企業の想定レートが平均1ドル=109.29円なので、110円を割れて円高が進むと、企業業績の悪化、すなわち、株安という連想が働き、円高の動きが加速する可能性もある。

 一方、年末は株価や原油価格が上がりやすいという傾向がある。株高などによってリスクオンの機運が高まれば、勢いをつけてドル/円は115円へのトライを再開する可能性もある。

 米国議会、また、日銀の政策決定会合の結果などが年末近くまで明確にならないため、どちらかといえばドル安に傾きやすいと考えられる。年末までは、1ドル=109円から114円台まで、ボラティリティの大きな相場になりそうだ。

 ――豪ドル/円は1豪ドル=84円台まで下落したが、今後の見通しは?

 米国と欧州が金融正常化に向けた歩みを進める中、豪ドルも欧米に追随して利上げに向かうだろうとみられていたところ、RBA(豪中銀)が利上げに消極的な姿勢を見せていることから、豪ドルが売られた。

 実際に豪州の経済は、インフレの上昇率が鈍く、また、賃金の上昇圧力も弱いなど、利上げの環境が遠のくような状況になっている。

 1豪ドル=89円台に乗せた9月頃までは、豪州の利上げ時期を来年4月〜6月という見方だったが、現在では来年末までは難しいだろうという見方に変っている。そこに加えて、政治的なリスクも強まって、豪ドルの下落圧力が強まった。副首相が二重国籍問題で議員資格をはく奪された結果、与党が過半数割れとなり、政権の安定が揺らいでいる。

 ただ、このような豪ドルに対する悪い環境は、徐々に改善に向かうと考えられる。利上げの先送りを織り込む形で、価格調整が進んだ。十分に織り込んだとは言い切れないが、かなりの部分は織り込んだように思う。RBA総裁が「次の一手は利上げになる」と公言しているだけに、これ以上の利上げ後ずれ観測は高まりにくいだろう。

また、政治面では12月2日に実施される補欠選挙で、議員辞職から再選をめざすジョイス氏が優勢と伝えられている。ジョイス氏が復帰すれば与党の過半数状態も戻ることになる。加えて、年末は、株高や原油高が起こりやすい傾向にあり、豪ドルにとっては上値を狙いやすい環境といえる。

 チャート的には今年4月〜6月につけた1豪ドル=82円台が下値のメドと言えが、どちらかといえば、11月月初の87円を目指して上方向に動きやすい相場になりそうだ。