外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、「ドル安の要因となっている米国の減税法案を巡る動きが12月中旬まで予断を許さず、また、日銀の政策決定会合が12月21日と年末ギリギリになるため、ドル/円は方向感の定まらない展開が続きそう」と語っている。

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 12月にFRB(米連邦準備委員会)の利上げが予想され、ドル高の期待が高まりそうなものの、現実にはドルが111円を割り込む弱い相場が続いている。外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、「ドル安の要因となっている米国の減税法案を巡る動きが12月中旬まで予断を許さず、また、日銀の政策決定会合が12月21日と年末ギリギリになるため、ドル/円は方向感の定まらない展開が続きそう」と語っている。当面の見通しは以下の通り。

 ――ドル/円の見通しは?

 11月上旬に1ドル=115円台乗せに失敗したため、その調整安の局面になっている。ドルが下落した要因は、(1)米国の税制改革法案の成立が混沌としていること、(2)FRBの金融政策運営への不透明感、(3)日銀の金融緩和姿勢が後退したとの観測がでてきたこと――などによる。今後は、これらの下落要因の進展によって、年末に向けたドル/円の動きは左右されるだろう。

 まず、米国の税制改革法案は、米下院で可決し、上院で審議中だが、定数100に対し、共和党の議席が52名となっており、3人以上の造反によって可決できない綱渡りのような状況にある。そして、たとえ上院で可決したとしても、下院と上院で法案の内容が異なっているため、両院協議会で法案の折衷案をまとめる必要がある。その後、再度、上院と下院において修正法案の審議と採決のやり直しが必要だ。12月中旬の会期末を控え、法案の可決成立には時間的な余裕がない。

 減税法案が年内に成立ということになればドル買いのきっかけになるだろうが、年内の成立が無理ということになれば、ドル売りを誘う材料になりそうだ。投機筋の円売りポジションが11月14日現在で4年ぶりの高水準になり、円の買戻し圧力が高まっている。21日分の残高で10%程度が解消された程度にとどまっていたため、何かの材料が出れば、円買い・ドル売りの圧力になるだろう。

 また、FRBについては、理事の定員7名のうち、来年2月にイエレン氏が退任した後は4名の席が空く状況になる。次期議長の候補でもあった元財務次官のテイラー氏が理事に就任することになれば、金融引き締めに前向きと言われているので、ドル高の要因になるだろうが、誰が理事に就くのか不明で、来年以降のFRBの政策の方向性が読みにくくなっている。7名のうち3名しか理事がいないという状況は異例であり、そうした中では市場としてもFRBの見通しに沿って来年3回の利上げを織り込むことは難しい。

 一方、日銀の黒田総裁が11月にスイスで行った講演において、金利を下げ過ぎると逆に引き締め効果が出てしまうという「リバーサルレート」について言及した。目新しい考え方ではないが、「出口の議論は時期尚早」との見解を示し続けてきた黒田総裁がわざわざこのタイミングで持ち出してきたことに何らかの意図があるのではないかと、市場の注目を集めている。

 日銀は、大規模な市場緩和を継続するというスタンスを明確にしているが、金融緩和の副作用について総裁が言及したことで、日銀の姿勢に変化が生じたという見方が出てきた。一部には、今年7月に審議委員に加わった片岡剛士氏が、追加緩和を主張しているため、市場の緩和期待が膨らみ過ぎないようにそのバランスを取ったという見方もある。ただ、日銀の国債買い入れオペの買い入れ額が、やや減額されるなどという実態面での変化もあり、黒田総裁の発言の真意とともに、当面は日銀の金融スタンスを見極めたいという慎重な見方が出始めている。

 次回の日銀政策決定会合は12月21日に予定されているので、それまでは安心して円売りにポジションを傾けにくいという状況が続くかもしれない。