11月に行なわれた日本代表の欧州遠征で、強烈な印象を残したのがブラジル代表の高速カウンターだった。


ブラジルの高速カウンターに対応できず、日本代表は失点を重ねた

 ボールスキルなど圧倒的な個の力を有していながら、ブラジル代表の選手たちは高いアスリート能力と機動力を併せ持つ。戦い方も「試合巧者」の表現がふさわしく、試合状況や日本の状態に応じて「ポゼッション」と「ショート&ロングカウンター」を巧みに使い分けていた。なかでも、前半に2度の決定機をもたらしたカウンターアタックは、日本にとって脅威であった。

 そんなブラジルの速攻は、プレミアリーグで切磋琢磨している吉田麻也(サウサンプトン)の目に、どのように映ったのか。

 ボールを奪って素早く前線に仕掛ける攻撃を「現代フットボールの真骨頂」と日本代表DFは表現し、「マンチェスター・シティやリバプール、トッテナムなど、プレミアリーグのトップクラブはどこもやっている」と説明する。

 もともと、試合展開や攻守の切り替えが極めて速いプレミアリーグにおいて、「ゲーゲンプレス」を標榜するユルゲン・クロップ監督率いるリバプールや、カウンターとポゼッションを巧みに使い分けるマンチェスター・Cなど、「ボール奪取→速攻」をチーム戦術の核として取り入れているチームは多い。しかし、そんなプレミアリーグで在籍6季目を迎える吉田でも、ブラジルのカウンタースピードには「驚いた」という。

 では、日本が気をつけるべきポイントはどこにあるのか。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が目指すのは、「ボールを奪って、縦に速く攻めるサッカー」。日本が前線から積極的にプレスをかけていけば、当然のように前傾姿勢は強まる。3人の中央MFが敵とボールを追いかけていくと、彼らの後方、つまりセンターバックの手前には広大なスペースが生まれる。

 また、遅攻時にサイドバックが攻撃参加して陣形全体を押し上げるときも危険度は増す。前がかりになればなるほど、カウンターを受けるリスクは高まる。そんな日本を、ブラジルがカウンターで効果的に突いたのが、前半の15分と36分の場面だった。

 15分のシーンでは、ブラジル陣内ゴールライン手前の位置でMFカゼミーロ(レアル・マドリード)が酒井宏樹(マルセイユ)からボールを奪ってカウンターを開始。1〜2の少ないタッチで前方へボールを一気に進めていく。

 この間、ゴール前へ全速力で突進するブラジルの選手は5名。ペナルティエリア付近への到達時間は約12秒だった。最終的に、山口蛍(セレッソ大阪)がFWガブリエウ・ジェズス(マンチェスター・C)を倒してPKを献上してしまった(PKは川島永嗣がストップ)。

 また、36分のシーンでは失点に直結している。この時間のブラジルは、自陣の深い位置で守備ブロックを作っていた。

 ペナルティエリア付近で守備を固めるブラジルの選手は9名。右サイドから中央部にカットインし、時間をかけてドリブルする久保裕也(ゲント)からボールを奪うと、ブラジルはふたたびカウンターを開始した。日本はカウンターの一次攻撃こそしのいだものの、二次攻撃で左サイドを破られ、GKとセンターバック間のスペースに速いクロスボールを入れられて失点した。

 いずれもブラジルの選手は、「ここがチャンス」と言わんばかりに複数の選手がゴール前へ一斉に流れ込み、しかも、全速力で駆け上がりながらボールスキルはまったくブレなかった。カウンターのスピード、厚み、スキルと、世界最高峰との差を見せつけられた場面だった。

 プレミアで経験を積んできた吉田によれば、こうしたカウンターに対処するポイントは3つあるという。

「ひとつは、前がかりになっているときに横パスでボールを失わないこと。横パスのほか、横方向へのドリブルもそうです。その横パスをかっさらわれたりすると、最低でもふたりは置き去りにされてしまう。

 もうひとつは、カウンターを受けそうになったら、リスクマネージメントで中盤の選手がファウルで止めること。もちろん、危険なエリアに入る前の場所で、カードをもらわない状況という条件下で、ファウルをする」

 たしかにカウンターを受けても、中盤の選手がボールホルダーをファウルでいったん止めれば、相手はリスタートを余儀なくされる。その時間を使って自陣に素早く戻れば、陣形を整えることができる。

 最後のひとつは、上記ふたつができなかったときの対処法。まずは全員が全速力で自陣に戻り、危険なコースを潰すことにプライオリティを置く必要があるという。

「そのふたつができなかったら、全員が全速力で自陣に戻る。ブラジルのスピードに慣れていないとか関係なしに、全員が全速力で戻る。

 たとえば、ブラジル戦で喫した(36分の)3点目の失点場面。あのときにクロスボールを入れられたGKとセンターバック間のスペースは、ブラジルもベルギーもまず(守備陣が)埋めてくる。だから、まず埋めてから、次の守備を考えようと。そこをケアするために、全力でみんなが戻ることが必要です。

 この3つは最低限やれるようにならないと。そういう話は選手たちに話しました。それでも、やっぱり彼らは能力が高くて、半歩、一歩の差のところでボールを出して得点につなげてくる。でも、守備はそこを大事にしないといけない」

 さらに吉田は、攻撃面でもブラジルのカウンターを参考にすべきだと語る。

「攻撃に関しても、彼らを見習わなければいけない。やっぱり、質の高さ、トップスピードに乗っているときのパスやコントロールが全然違うから。そういうトップスピードのなかでも、パフォーマンスを発揮できるようにならないといけない」

 チーム全体で意思統一をし、何をしたらいけないのか、何をすべきかを徹底する。世界の強豪国が揃うワールドカップでは、「スキル面でも経験面でも勝(まさ)っていないんだったら、ハードワークで勝負していくしかない」と、吉田は力を込めていた。

 ロシア・ワールドカップまで6ヵ月半──。この欧州遠征を糧(かて)にし、日本はさらに進化しなければならない。

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