「鋼の錬金術師」実写化のニュースが流れた時、多くの人が懸念したのは、あの世界観を完璧に映像化できるのか、だったと思う。しかし、実写化に集まった顔ぶれと細部までのこだわりを知れば、杞憂だとわかるはず。さまざまな角度から映画の魅力に迫ります!

荒川弘さんによる原作は、‘01年から約9年間にわたり月刊『少年ガンガン』に連載。あらゆる物質を分解して再構築する錬金術に天才的な才能を見せるエドとアルの兄弟の冒険譚を軸にしながらも、人間の尊厳や命の重みといった根幹に迫った重厚なストーリーで、全世界シリーズ累計発行部数7000万部超のベストセラーを記録している。この作品の映画化に自ら名乗りを上げたのは、日本のCG技術の第一人者と評される曽利文彦監督。撮影後、1年にも及ぶVFX作業を経て待望の公開に。

スタッフが語る、映画ハガレンの魅力

【感動を誘う“兄弟愛”が物語の要】一瞬にして物質が別の形状へと変わる錬金術や躍動感に溢れたアクションなど見どころは多いが、軸はあくまでもエドとアルの兄弟の物語。エドが危険を顧みずに賢者の石を求めるのは、自ら犯した禁忌により、食べることも眠ることも痛みを感じることもない空っぽの鎧になってしまった弟アルの身体を取り戻すため。じつはアルはモーションキャプチャーのフルCG。その弟と対峙する山田涼介さんのリアルな演技にも注目。

「正直、これだけの世界を映像化するのは大変な労力なんですが、それでも高いモチベーションを維持し続けられたのは、素晴らしい物語があったからです。さまざまな要素があるなか一本の映画として描くうえで“兄弟の旅”を軸に置いたのですが、このシンプルで力強いテーマを、山田君が期待していた以上の演技で表現してくれたと思っています」(曽利文彦監督)

【世界観を構築する、圧倒的なCG技術】

中世のヨーロッパを想起させつつも、あくまでも国や時代を特定しない架空の世界を舞台に繰り広げられるのは、物質が一瞬にして形状を変える錬金術。この作品を実写化するのに不可欠だったのがCG技術だ。監督を務めた曽利さんは、アメリカでその技術を学んだ、日本を代表するCG技術のスペシャリスト。邦画史上最大規模のVFXと最新技術を取り入れ、1年もの時間をかけて完成させた映像は、リアルと見紛うほどのクオリティだ。

「企画を立ち上げたのは10年以上前ですが、映像技術が進化を遂げたいまだからこそ実現できたと思いますし、CGを呼吸するように使いこなせる僕らにしかできなかったという自負もあります。でもだからといって、映画のウリはCGではなく、あの世界に違和感なく入り込めるようにしたつもりです」(曽利文彦監督)

【原作を忠実に再現したキャラクターが続々!】

原作は約9年にわたって連載が続いた大作。それだけ長く読者の支持を得続けられたのは、骨太な物語ともうひとつ、数多くのユニークで魅力的なキャラクターの存在がある。個性溢れる人間たちに加え、その命の儚さや尊さを感じさせるホムンクルス(人造人間)やキメラ(合成獣)、そして空っぽの鎧に魂を定着させたアル…。特殊メイクやCG技術を駆使し、動きまで含め、アニメと遜色ないレベルに仕上がっている。

「私自身は、キャラクターをきちんと立たせてくだされば、ビジュアルは変わっても気にならないんですが、できる限り原作に寄せてくださっていて、やはりしっくりくる感じはありました。どの役も魅力的でしたが、とくにホムンクルス組はすごかった。松雪さんは言わずもがな、内山君の気持ち悪さ、本郷君の生意気そうな感じもすごく出ていて感動でした」(原作者・荒川弘先生)

【豪華な衣装のディテールに注目!】衣装を担当したのは、舞台衣装をメインに活動してきた西原梨恵さん。漫画のイメージを踏襲しながらも、原作の世界観に近いと思われる19世紀前後の服飾史や歴史書などを参考にしながらデザインしたそう。映像になった時の見た目を意識すると同時に、キャストが動いた時の裾の動き方、そしてアクションにも対応できる着やすさも考慮。一着にさまざまな加工を施し数種の素材を使用するなど、細かい気配りがなされている。

「じつは衣装って、デザインと同じくらいフィッティングと縫製が重要なんです。体のラインを損なわず、よりよく見せる形は全員違うもの。ウエストのくびれ具合や丈の長さ、役同士が並んだ時のバランスなどを考慮し、何度も手直しして出来上がったものです。また、カメラで寄りで撮ることが多いため、素材感や柄のディテールを意識し、生地から作ったものも。たとえばエドの赤いコートは、同じ赤でも何種類かの素材を使い、「命」を感じさせる血管のような柄を入れているんですよ」(女優・西原梨恵さん)

『鋼の錬金術師』 幼い頃に錬金術における人体錬成の禁忌を犯し、左脚と右腕を失ったエド(山田涼介)と、身体全部を失った弟アル(声・水石亜飛夢)。失った身体を取り戻すため、兄弟は賢者の石を求めて各地を旅するが…。12月1日全国ロードショー。(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017映画「鋼の錬金術師」製作委員会

そり・ふみひこ 米国で映画技術を学び、映画『タイタニック』に参加。映画『ピンポン』などのほか、CG技術を用いた数々の映像作品を手がける。

あらかわ・ひろむ 漫画家。‘01年に月刊『少年ガンガン』で連載開始した『鋼の錬金術師』が大ヒット。その他の作品に『銀の匙 Silver Spoon』など。

にしはら・りえ 舞台衣装を数多く手がけ、‘14年には伊藤熹朔賞新人賞を受賞。近年の作品に舞台『NARUTO』、『すべての四月のために』(上演中)など。

※『anan』2017年12月6日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・カワダ イソン(impannatore) ヘア&メイク・shibuya(vitamins) インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)