セックスをしても女性ホルモンは増えない

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「女性ホルモン」に関する情報には、根拠のない「俗説」や「都市伝説」が紛れ込んでいることが少なくありません。自分の体を守るためには、間違った情報を退けることが必要です。雑誌「プレジデントウーマン」では、産婦人科医の宋美玄さんに解説をお願いしました――。

■バリバリ働いていると、男性ホルモンが増える?

「毎日バリバリ働いていると、男性ホルモンが増えてヒゲが生えてくる」「セックスをすると、女性ホルモンが出てキレイになる」……。

こうしたホルモンにまつわる情報は定説のように広まっていますが、実は科学的根拠は一切ありません。

毎日バリバリ働いたからといって男性ホルモンは増えませんし、いくらセックスをしても女性ホルモンも増えません。両者に医学的な因果関係はないのです。

確かに、女性の体内では男性ホルモンが影響し、ヒゲが生える、体毛が濃くなるといった身体的な変調が起こることもあります。しかし、そのほとんどは病気が原因。例えば摂食障害のひとつである「神経性食思不振症」では、体重の減少により女性ホルモンが減ることで男性ホルモンが増え、ヒゲのようなものが生えてくるのです。

■「プレ更年期」という誤解

また、最近は生理の期間が短くなったり、出血量が減ったりすると「プレ更年期かも……」と悩む女性が増えています。

そもそも更年期とは、女性ホルモンが急激に減ることによってさまざまな症状が起こりやすい、閉経前後の数年間のこと。日本人女性の閉経の平均年齢は50.5歳で、40歳未満で閉経すると「早発閉経」と診断されます。つまり、更年期に「プレ」も「プチ」もないのです。月経の変調はちょっとしたストレスで生じることも。それは本物の「更年期障害」とは別物です。

■恋をすると女性ホルモンがたくさん出る?

「自分の体は自分でコントロールできる」。そう信じている女性も多いでしょう。特に学歴もキャリアも努力して手に入れてきた女性ほど、心身の健康をコントロールしようと頑張りがち。

でも、人体には解明されていないことがたくさんあり、思いどおりになんてなりません。この事実を自覚しつつ、玉石混交の情報を取捨選択できるよう、正しい知識を身につけることが大切です。

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▼こんな言葉、信じていませんか?
女性ホルモンを増やせばキレイになれる
女性ホルモンの1つエストロゲンは、「美容ホルモン」「若返りホルモン」とも呼ばれ、たくさん出るほどキレイになると思われがち。でも、「多ければいい」というのは勘違い。むしろ影響期間が長すぎると、乳がんや子宮体がんのリスクが高まるというデメリットもある。
遊び人がピルを飲む
ピルは「副作用のある不自然な薬」というイメージが強く、「遊び人が飲むもの」という言いがかりまでつけられるほど。個人差はあるが、ピルには生理痛が軽くなる、生理不順が治る、月経前症候群の症状が改善されるなどメリットが多いのも事実。まずはピルを正しく理解して。
恋をすると女性ホルモンがたくさん出る!
恋をしようがしまいが、卵巣は日々働き、女性ホルモンを分泌するもの。恋によって分泌されるのは、脳内物質や別のホルモンであり、「閉経した女性が韓流スターに夢中になったら、女性ホルモンが出て生理が復活した」などという話は、単なる都市伝説にすぎない。
閉経するとオヤジ化する!
「閉経する→女でなくなる→オヤジ化する」と考える人もいるが、閉経しても、女性ホルモンが出なくても、女性は死ぬまで女性。常に女性である自覚と自信を持ち、ホルモンにまつわる怪しい情報や歪んだ思い込み、周囲の心ない言葉に振り回されないで。

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産婦人科医 宋 美玄先生(そん・みひょん)
子育てをしつつ“カリスマ産婦人科医”として活躍。メディアを通じ女性の性や妊娠、出産などについて積極的に啓発。著書に『女のカラダ、悩みの9割は眉唾』(講談社+α新書)など多数。
 

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(産婦人科医、医学博士、性科学者 宋 美玄 構成=藪 智子)