日馬富士関

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報道の店に記者が“潜入”

 現在、検索エンジンに「大相撲 モンゴル」と入力してみると、ある程度は予測がつくとはいえ、やはり結果には驚かされる。

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 例えば「週刊新潮」編集部のパソコンを使うと「暴行問題でモンゴル大統領動く 安倍首相と面会希望」(電子版)という日刊スポーツの11月24日付の記事がトップに表示される。暴行問題の枠を超え、外交問題に発展してしまっているわけだ。

 次に「都内 モンゴル料理」と入力する。こちらも興味深い。もちろん極めて平和的な雰囲気だ。

 まずGoogleマップに数軒のモンゴル料理店が表示された。潜入するならどこだと探してみたが、「ウランバートル」という店しかない。なにしろ住所が両国だ。国技館が非常に近い。ひょっとすると日馬富士も貴ノ岩も来店しているかもしれない。

日馬富士関

 とある月曜の夜に記者が訪れてみると、驚くほどの盛況だった。少なくとも記者の目視では12人。日本人カップルとファミリー客もいたが、生粋のモンゴル人だと思われる男性も、少なくとも1人がちびちびとジュースを飲んでいた。もちろん店員とはモンゴル語と思われる言葉で話している。

 店内にはモンゴルの楽器である馬頭琴や民族衣装、絵画など、現地にゆかりのある様々なものが飾られている。だが、最も目を惹くのは化粧まわしを身に着けた元力士の白馬関の大きな写真だ。2000年に初土俵を踏み、08年に新入幕。10年の夏場所には10勝5敗の好成績を残すが、11年に八百長問題で日本相撲協会から引退勧告を受けた。

羊料理のオンパレード

 元白馬関は83年5月生まれの34歳。日馬富士は84年4月で33歳、白鵬は85年3月で32歳だから、両横綱の先輩にあたる。後で調べてみると、引退後、母親が経営するこの店を手伝っていると報じられていた。モンゴル人力士が訪れることも珍しくないと書かれている。だが記者が訪れた月曜の夜は、今の状況が影響しているのか、ご本人は不在だった。

 メニューを見ると、基本的には羊料理のオンパレード。羊の「骨付き塩茹で肉」がお勧めのようだが、3人前3800円なので断念。代わりに「ラムスペアリブ」(1セット1800円)と、羊の肉まん「ポーズ」(4個480円)、「ウランバートルサラダ」(650円)、それに生ビールを注文した。

 生ビールがテーブルに置かれ、しばらくするとサラダが来た。食べてみるとピクルスのようだが、不思議とケチャップの香りを感じる。首を傾げながら食べていると、ポーズが登場した。皮の美味さは誰もが感じると思うが、問題は中身だ。

 やはり挽肉が羊なのだ。野菜なども入っているかもしれないが、皮のもちもちとした食感の後に、がつんと羊の味と香り、肉汁が口いっぱいに広がる。潜入記者は羊が苦手ではなく、喜んで平らげた。だが嫌いな人には辛いだろう。

 スペアリブは日本の焼肉に通じるような甘辛のたれで味付けされていた。だが、不思議とジンギスカンとは似ていなかったそうだ。記者は「やっぱり香料の使い方が違っているような気もしましたが、味音痴なので信用しないでください」と弱気だ。

 美味しい羊料理とアルコールを堪能し、記者が会計を依頼すると、レジの近くに某キー局のワイドショースタッフの名刺が置かれているのを見つけた。記者も名刺を出して取材を依頼したが、「日本語、分かりません」と正確な日本語で返されてしまった。

 笑顔を浮かべ、極めて丁寧な物腰。だが、取材拒否の姿勢は明らかだった。念のために「白馬さんは?」と質問してみると、「モンゴルに帰っています」という答えだった。

錦糸町のバーではテレサ・テン大会

 次は、もう少し騒動に関わる店に潜入してみる。日刊スポーツは11月19日「日馬富士の貴ノ岩暴行問題、始まりは錦糸町での口論」(電子版)の記事を掲載した。

 その中に「捜査関係者らの話を総合すると、発端は秋場所後に東京・錦糸町のバーで貴ノ岩が元幕内の先輩力士らと口論になったことがきっかけ」と書かれている。

 関係者に取材すると「錦糸町のバー」の所在地が分かった。さっそく現地に向かうと、ウクライナ人(?)的な白人美人が客引きをしているような一角にたどり着いた。

 少し道に迷ったが、店の前にたどり着くと、窓も入口もカーテンで覆われている。記者は困惑したが、勇気を出してドアを開けると、カウンターの中にいた若い男性が「どうぞ」と応対してくれた。

 着席しておしぼりで手を拭くと、カウンターだけはバーという雰囲気。しかし壁際にはボックス席が並び、ややクラブ・スナックっぽい雰囲気もある。

 カラオケの画面には、どう見てもモンゴル語の文字が映し出されている。メニューもモンゴル料理で、「モンゴルウオツカ」もある。「モンゴルバーだったのか」と記者は驚いた。

 記者が入った時から着席していたのは日本人男性と国籍不明の女性のカップル。しばらくすると、モンゴル人と思われる女性2人がボックス席に座った。後者については記者が、ちらりと首を後ろに回して盗み見たが、相当な美女に見えたそうだ。

 この女性3人が揃ってカラオケのリモコンで曲を入力し始めた。モンゴルの歌が聴けるのかと期待すると、流れてきたのはテレサ・テン。日本滞在中に覚えたのか、モンゴルでも有名なのか、国籍不明の女性も加わって、3人は「つぐない」「愛人」「空港」などを見事に歌い上げていく。少しだけ日本語が拙いのだが、それがまた本家テレサ・テンを思い出させる。記者は思わず聴き入ってしまったという。

 記者は最初、モンゴルビールを注文したが、その味は驚くほど日本のビールに似ていた。顔だけでなく、味覚も共通点があるのかもしれない。飲み干すとモンゴルウオツカに惹かれたが、泥酔が怖くてウィスキーの水割りを頼んだ。

 しばらくすると突然、入口が空き、素面の日本人男性が「白馬さんはいますか?」と声をかける。記者は驚いて聞き耳を立てる。

 多分、同業者なのだろう。カウンター内の男性(彼もモンゴル人だと後で気づいた)が「いません」と追い出そうとするが、男性は更に食い下がる。「白馬さんはモンゴルですか?」と問いを重ねるが、男性従業員が「分かりません」と答えると、諦めて出て行ってしまった。

 ここに長居しても収穫ゼロと判断し、記者は会計を依頼した。

 後で調べてみると、両国のモンゴル料理店と錦糸町のバーは、同じ元白馬関が経営していると、複数のサイトに紹介されていた。思わぬ形で「点と線」がつながったわけだが、料理は美味しく、店の雰囲気も底抜けに明るい。今回の騒動の舞台とは信じられない、と潜入記者は首を傾げていた。

週刊新潮WEB取材班

2017年11月28日 掲載